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26.神話に出てくる空を飛ぶ奴 【白川蓮】

【白川蓮】



 合わせた拳を解き、相手を見る。

 と言っても、あからさまに姿を現しているのは一人だけ。

 残り全員は、森の中で隠れている。


「うーん?どうすればいいんだ…?」


 火球を素手で消し飛ばしたせいか警戒されまくっているのかもしれない。

 とはいえ、このまま膠着状態になっているのは若干面倒くさい。


「ま、いっか」


 無抵抗の相手を攻撃するつもりはない。

 と、いうことで。


「まず、お前からで」


 唯一姿を現している相手へ接近し、試しに一発殴りかかる。

 右腕をしっかりと引き、打ち出す。

 一見、ただの殴打に見えるそれは、しかし。


「…何ッ!?」


 ()()を纏い、広範囲への強力な攻撃として打ち出されていた。


「くそ、外れた」


 打ち出された拳は避けられてしまったのだが、振り抜いた拳の風圧が森の木々を激しく揺らした。

 同時に拳を躱した男も右側へ派手に吹き飛び――


「あ、流石に受け身は取れるか」


 さらに、もう一撃。

 バランスを崩した男に対して、今度は左拳を構えた。


「っと?」


 だが、そこで横槍が入った。

 森の奥から飛び出した体格の良い忍者が、俺を殴り飛ばそうと拳を構えて迫る。

 それに対して、振り抜こうとしていた左拳を引き、縦に構えて防御の姿勢を取る。


「――シッ!!」


「ふっ!!」


 叫ぶ男を見据え、足を止め。

 軽く息を吸い、覚悟を決めて拳を左腕で受け止めた。

 瞬間。


 左腕のみならず、全身に衝撃が走る。


 その予想外の威力に思わず言葉が漏れた。


「嘘だろお前…!!」


 防いだ左腕を通して伝わった衝撃は、人の出せる威力では無かった。

 まるで、重機をぶつけられているような威力。

 衝撃が俺の体を通り抜けて足場へと伝わり、川辺にある無数の小石が盛大に打ち上がった。


「…まあ、問題ねえんだけどな」


 バラバラと小石が降り注ぐ中、独り言を言う。

 派手に衝撃が体の中を通ったものの、俺の体にダメージは入っていない。

 強いて言うなら、少しだけ驚いたぐらいの事。


「…貴様、本当に人間か?」


 見えない顔から、動揺した声が響いた、


「お?喋ってくれるのか。ありがたい。とりあえず」


 受け止めたまま、右腕を引く。


「どの程度か、試させてもらう」


 今度は、風を纏わせず、純粋な腕力で右腕を打ち出す。

 相手も同時に拳を打ち出した。

 再び、衝突。


 だが。


「ぐ…ッ!!」


 押しているのは俺。

 向こうが打ち出したのは左腕。

 おそらく右利きであるために少し威力は落ちていると思われるが、素の身体能力は俺の方が上だろう。


「っと!!」


「ちッ!!」


 取っ組み合いの最中、側方から見覚えのある短刀が俺の首へと投げつけられた。

 目の前の相手を押し飛ばして距離を取りつつ、短刀を回避する。


「ま、これぐらいならいいか」


 二対一。

 他の連中は、秀の()()で動きが鈍っているのではなかろうか。

 なのであれば、この二人以外気にしなくて良い。

 左手で目の前の二人へ、来い、と挑発する。


「さて――どれだけ持つかな?」

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