25.神話に出てくる空を飛ぶ奴
【視点なし】
黒秋秀が石に座って浮き上がり、同時に白川蓮が前方へ動いたその瞬間。
蓮に向かって三発の炎の弾が迫っていた。
「おい、早いって――」
同時に、浮かび上がった秀へと、蓮に向かう炎弾の倍の数の炎弾が、八発迫る。
それに対し、秀は二つの手段で対応した。
「【止まれ】。
――【動を静に。静を動に。揺らぐ定型。定型は揺らがず】」
【言霊】による、強制的な停滞。
そして、事象制御による停滞。
秀の眼前で半分の炎弾が時間が止まったように、動作を失ったかのように停止し。
残り半分は秀の眼前で停止したものの、炎が揺れ動いており、完全な停止はしなかった。
「…あー、ミスったか」
そう呟く秀の下で、蓮は炎の弾を殴って消し飛ばす。
熱さを散らすようにふらふらと殴った拳を揺らし、蓮は呟いた。
「んん?思ったより温度低くない?…まあ消えたしいいか」
「…お前、相変わらずだな」
「お前に言われたくねえよ」
距離が離れてはいるが、二人は自然に会話し、
「悪いけど、しばらく俺引っ込むわ。何か上手く制御出来てねえし」
「おう、了解。全員気絶させとけばいいな?」
「ま、それでいいよ。んじゃ後よろしく。【歪め】」
瞬間。
秀を球状に空間が歪み、姿が見えなくなった。
「さてさて。全員気絶、というわけなんで」
蓮は好戦的に、笑みを浮かべる。
自信と、喜びも含まれているだろうか。
左の掌に、右拳をぶつける。
その動作だけで、察することができるだろう。
「遠慮なくやらせてもらうから、そのつもりで頼む。
ーー死なないでくれよ?手加減はしてやっから」
◆◆◆
結界の外で戦闘が始まり出したその時。
結界の中では、
「んん〜!!見た時から思ってたけど、やっぱりこの子の尻尾気持ちいいわね。二つあるから何だってんのよ。最高じゃない」
「…耳があるから、ちょっと髪整えにくい。でも、いいね」
「肌ぷにぷにだね。可愛いなぁ。傷が治って本当によかったね」
三人がただひたすらに狐耳の少女を愛でていた。
「…!?…??」
もみくちゃにされる少女は、困惑し続けていた。
一体どうすれば良いのか。
「大人しくしてるし、いい子ね。髪も伸ばしすぎたし、手入れしてあげましょう」
ただ、一つだけ。
この場にいる三人には逆らうことなど出来ない、という事だけが分かっていた。




