24.神話に出てくる空を飛ぶ奴 【黒秋秀】
【黒秋秀】
言った直後。
一人の人間が姿を現す。
「…」
「…意外と大人しく出てきたな」
見た目は前回と同じく、全身真っ黒。顔も目元以外全て隠れている。
まるで、忍者のような装い。
その上森から少し出た位置にいるため、影のせいで若干見えにくい。
「話し合いはお前に頼むぞ」
いつも通りの態度で蓮が言う。
さっき任せるって言ったのに、という言葉は飲み込む。
何事も適材適所だ。
我慢しよう。
なんせ、俺では咄嗟の対処が出来ない。
「はいはい、任せとけ」
一歩、前に踏み出す。
念のため警戒するが攻撃は来なかった。
「で、さ。そろそろ喋ってくれないか?話しにくいからさ」
「…交渉の真似事でもしたいのか。ガキが」
「…いきなり態度最悪だな。閉じ込められたことがそんなに気にくわないのか」
そう言うと、相手は僅かに顔をしかめた。
(…ま、そうなるとは思ったけど)
ここに到着したときに二つ結界を張った。
こいつらと俺たちを遮る結界。
そして、こいつらを逃がさないための閉じ込める結界。
しかもただ閉じ込めるだけではなく、認識阻害効果も重ね掛けしていた。
だから鼻血出たわけで。
負荷の原因はそれだった。
「先に言っておくけど…こっちは一回見逃してるってこと分かってる?それでも追いかけてきたわけだ」
それから、と続ける。
右手を前に出し、人差し指を向ける。
方向は、
「俺に対して、二回、短刀を投げつけた。先に攻撃してるのはそっちだ。そんで――」
俺から見て右斜め前。
巨木の裏側に。
見えている。
「今も、構えてる。あと、大前提としての話なんだけど」
右手の人差し指を戻し。
言葉を続ける。
「交渉は、対等な立場でこそ成立する。よって、俺がしようと思っていたのは、ただの要求。けど」
だから、つまり。
「そっちがこっちの要求聞いてくれるなら、すぐにでも解放してやる。分かるか?」
「…ほう。その要求とは?」
「とっとと失せろ。俺らにこれ以上干渉するな」
おそらく、無理だろう。
そう考えつつも、可能であれば戦闘は避けたいところだったが。
「断る。――全員、構えろ」
「だろうな。蓮、頼むぞ」
「了解」
蓮と前後を入れ替えるように動き、そして。
「いよっ、と」
目をつけていた座れる程度のサイズの石の下に右足のつま先を突っ込んで跳ね上げ、飛び乗るようにして足を投げ出して座る。
続けて、石に【言霊】の力を使う。
「【浮かべ】」
同時に、頭の中で唱える。
(【動は静に。静は動に。定められし固有。固有は定まらず】)
俺が座った石は一気に場を見下ろせる位置まで上がって行き、そして唐突に止まる。
直接は手出しをしない。
そう決めた直後。
見下ろす先で戦闘が始まった。




