23.神話に出てくる空を飛ぶ奴 【黒秋秀】
【黒秋秀】
蓮と共に結界の外へ足を踏み出す。
一見すれば何の変化もなく歩いているが、確実に外と内を隔てる見えない壁を超えている。
眼前に広がるのは巨木の並ぶ森。
その手前の地面は細かい砂利のある、まさに川辺。
気配がどうのと言えるほど俺は鋭くないが、相手がいることは分かる。
「まあ流石にいきなりは仕掛けてこな…」
目前に再び短刀が迫り、
「【弾け】」
【言霊】で強引に弾いて防ぐ。
弾かれた短刀は回転しながら落下し、砂利を弾きながら地面に突き刺さった。
二回目だったために流石に対処できた。
次の攻撃に警戒するが、現状それらしい動きは見えない。
「いきなりだったな」
「…やっぱ纏めて潰すか?いやそれだとなあ…」
「お前考えすぎだよ。もう少し楽に考えたらどうだ?」
「じゃあお前の考えは?」
前方の巨木の森を警戒しつつ蓮に問いかける。
参考に出来るかもしれない。
そう考えて聞いたのだが。
「とりあえず殴る」
「…?」
予想外の返答に思考が停止してしまった。
何が『とりあえず』?
何で『殴る』?
「…なるほど…うん…」
「な?」
「じゃあ、俺も。とりあえず、お前に任せる。流石に頭が疲れた」
「えー…お前も手伝ってくれないのか?」
ため息が出そうになるが抑えて説明する。
「…リアルタイムで動き続ける大量のプログラムの羅列を眺め続けてたらどうなると思う?それも、三桁位の数の画面で」
「何だその地獄」
「さっきまでの俺の状態。こっちの世界を把握するために四六時中その状態に近かった」
世界を理解するのは結構面倒くさい。
多種多様な形で、多種多様な要素を捉えてそこで初めて理解できる。
そしてさらに総当たりと予測を併用して確実に知る必要がある。
何故ならば、中途半端な理解は危険極まりない行為だからだ。
だからこそ、
「一から世界を全部理解するのはきつかったんだよ。頭痛がさっきから止まらねえ。…ちと無理しすぎた」
理解しようとするその間、脳へと異常なほどの負荷がかかる。
今回は世界を渡り、世界のルール自体を確認しなおしたためにその負荷はしばらく続くと思われる。
「…すまん。もう少し楽かと思ってた」
「分かればいいよ。だからこっからはお前に頼む」
蓮にそう言った後、唱える。
「あんまりやりたくないが――【見せろ】」
一度右目の上に右手を置き、閉じる。
ちょっとした気休めのような行為だ。
そして右手を退かし、目を開く。
「…そこか」
周囲に潜む人間の輪郭が、まるで赤外線カメラを通したようにはっきりと映し出される。
「出てこいよ。時間の無駄だ」
さて、相手はどう来るか。
不定期になってしまいまして申し訳ございません。
それはそれとして、以下、別作品の宣伝です。
興味のある方は是非。
渡世の調停者
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