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21.とある少女の記憶
【???】
走る。
ただ、ひたすらに走る。
巨木の根が隆起を作る地面を。
足裏の皮が擦り切れ、血が出ようとも。
枝葉に皮膚が裂かれようとも。
分かっている。
自分を追いかけている者たちが面白半分でわざと逃がしていること。
自分を助けられるような誰かが、都合よく現れるはずがないこと。
自分が助かるはずがない。
でも。
足を止めたくはない。
死にたくない。
だけど。
足が限界だった。
数日間、眠っていない。
眠れなかった。
それでも走り続ける。
体が限界を迎える――まさにその時。
それに気づいた。
伏せられたお椀のように、半球の結界があった。
それが結界だと気づいたのは、そこに飛び込んだ時。
転びながら飛び込んだその場に、二人の人がいた。
選択肢は無かった。
声は出ない。
意思を伝える手段はない。
だから、すがるしかなかった。
善人か悪人か、それすらも分からなかった。
(…助、けて)
怖い。怖い。
ただ、その言葉だけが頭の中を巡っていた。
――大丈夫だ。
聞こえないはずの耳に、確かにそう聞こえた。




