2.異世界1日目 【和泉優奈】
【和泉優奈】
「どこから説明したらいい?あ、起きちゃ駄目だよ。まだ調子戻ってるか分からないでしょう」
起き上がった秀を引っ張ってもう一度寝かせる。
あ、どーもこんにちは。
私の名前は…うへへ、秀が私の膝の上で寝てる。
あっとまずい。
私の名前は和泉優奈。高校二年生。
父親がクソで母親も大概な家庭に生まれた日本人女子。
一応弟もいるけど、どうでもいいか。
容姿は俗に言う大和撫子…は言い過ぎかな。黒眼に長い黒髪。
そして文武両道の優秀な人間であると自負している。
「あのね、クラスまとめて異世界転移?したらしいよ」
「…ラノベかよ」
「でも秀が爆睡してて全く起きなかったんだよね。そしたら、アイツら『秀は置いて行こう』って言い出しやがった。そんなことダメに決まってる。だから、説得したの」
説得した。
方法は…ご想像にお任せする。
ただし、流血はしていないとだけ言っておく。
秀も察したのか申し訳なさそうな顔をする。
「あー…それは悪かった」
「別に良いよ。トップの人間にただ着いていくだけの鳥頭どもより秀の方がよっぽど大事だから」
「鳥頭…」
実際、私が言った通りではある。
確かに私達は高校二年生。まだ子供である。
が、それとこれとは話が別。
リーダーの言いなりになるだけの人形の言う事に従うわけがない。
「…蓮達は今どうしてる?」
「えっと、今は多分――」
「呼んだか?」
良いタイミングに戻ってきてくれた。
我ら幼馴染の中で一番の力持ち。
「ちょうど良いよ、蓮。今秀に説明中」
白川蓮がそこにいた。