12.自称普通の高校生 【和泉優奈】
【和泉優奈】
「「バカバカバカバカバカーーバカああああぁぁ!!!!」」
「うるっさ……息ぴったりだな。すげえわ」
カレンと奈々の絶叫…罵倒?が風に流されて消えていく隣で秀が独り言を呟く。
奈々が無言じゃないのは焦っている時が多いけれど、今のこの状態であれば仕方がない。
「「バカああああぁぁぁ!!!!」」
「はいはい、悪かった悪かった」
強力な風を背に受けた高速移動。
文句を言いながらも二人は正確に森の中を踏破している。
「本当に早いね。どれぐらい気圧の差を作ったの?」
「あ、気圧弄ったのは分かったか。…あんま意識してなかったけど、まあ体が吹っ飛ぶ直前ぐらいで調節したはずだな」
秀が使った力によって、私たち五人は先ほどまでの倍以上の速度で森の中を突っ切っていた。
「…いや、事前に言えよ。こんなもんすぐに慣れるわけがない」
「は?あっさり対応した奴がそんなこと言わないでもらえます?」
「しっかたねえだろ。出来るから」
そう。
蓮は強風が発生してすぐに動きに対応した。
私も一瞬出遅れたのに。
バランスを崩しかけ、何とか動きを合わせようとした。
(…まあ、でもそのおかげかな)
その時、バランスを崩さないように秀がフォローしてくれたのだ。
その紳士的な対応に思わず心臓が跳ねた。
(えへへ…)
「〜♪」
楽しくなってくると、つい鼻歌を歌いたくなる。
一般人では不可能な速度で走りながら、視界に映る邪魔なものを選択していく。
そして、
「~♪」
軽く右腕を振るう。
自然に、普通に。
昔から当たり前に出来ていたことを意識して行う必要など、無い。
「~♩」
進路上にある倒木や岩石といった障害物を斬る。
無論、素手で。
やりづらいから武器が欲しくなるけれど、しばらくは我慢しよう。
「「あああぁぁぁ!!!!」」
「~♪」
自由に力を使うのは――やっぱり楽しい。
「…何だこの地獄絵図」
「地獄は本当にあるのかねえ」
「訳わかんねえこと言うな。黙ってろ元凶」