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10.倫理観って知ってる? 【鈴森奈々】

【鈴森奈々】



「…ねえ」


「おい、静かに」


「…ちょい待ち。それ、どうする気?」


 秀の右手に掴まれた物。

 少し太めの木の枝について聞く。


「え?殴る。

 ――【実を虚に。虚を実に。映りし幻に。幻こそ映らず】」


 止める暇も無かった。

 静かに振り上げられた木の枝が、真っ直ぐに天童剣の後頭部に振り下ろされる。



ゴッ!!!!



「…!?」


 容赦なく振り下ろした秀に思わず驚愕した。

 それに加えて()()()()()()()()()()という暗黙の了解を容赦なく破ってしまった。


「…しまった、力加減ミスったかも。生きてる?」


「…多分。下手くそ」


 とはいえ、隠すつもりが無いのなら私も隠さない。

 とりあえず呼吸はしてる。


「…どうする?()()()()()()?」


「そこまでやらなくてもいいだろ。…つーか、そんなに積極的に使わないっての」


「…もう使った」


「…それもそうだな。まあ、いい加減拘るのも面倒か。

 ――【現は夢に。夢は現に。醒めし偽りに。偽りこそ醒めず】」


 ゴン、とうつ伏せになった天童剣の後頭部を右手の裏拳で面倒臭そうに秀が殴る。


「多分、これで忘れた。あと…吊るしとくか」


「…ちなみに縛る箇所は?」


 問いかけた蓮に呆れ口調で秀が返す。


「首って言うと思ってんのか?」


「いや?両足縛ってひっくり返しとこうぜ」


「お前…天才か!?」


 二人して盛り上がってしまった。

 冷めた目で見つつ、カレンの所まで歩いていく。


「もうやだこの外道どもが。死んでしまえ」


「…落ち着いて。私も思った」


「あいつもあいつよ…何で隠さないの?隠すって話だったのに」


「…さあ?」


 正直、秀の意図が汲み取れない。

 あれだけあっちの世界で使うな使うな連呼していたくせに、すぐさま使い出した。


「…なら、まあ。直接聞くのが早い」


 指差した先にいる、二人。

 グダグダ悩むより切り込む方が遥かに早い。

 なんせ。


「私たち、幼馴染なんだから。遠慮なく言えば?」


「…それもそうね」


 そうして、カレンが二人に聞きに行こうとしたその時。

 優奈が今まさに吊るそうとしている二人に話しかけた。


「…ねえ、二人とも」


「どした?」


「ん?」


 頭を抱えるように。

 呆れたように。

 優奈が言った。


「倫理観って知ってる?」


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