1.異世界1日目 【黒秋秀】
【黒秋秀】
「…」
突然ではあるが、自己紹介をしようと思う。
俺の名前は黒秋秀。高校二年生の男子である。
親が資産家だとか、有名な家の出だとかそう言った特別な事情は無い。
黒髪、黒眼で生まれも育ちも日本である。
今いるのも、日本のはずなのだ。
「…ごめん、今どう言う状況?」
視界に映るのは――目測で大体15メートル近くもありそうな巨木と、その天辺に生えている葉の隙間から見える木漏れ日。
特徴的なのは、大小大きさの異なる二つの太陽があること。
しかし、不思議なことに影が二重になってはいない。
さらに言えば、空に全く見覚えのない生物が飛び回っている。
一見すれば鳥の様にも見えるが、間違いなくおかしい。
俺の記憶がおかしいのか、今の状況がおかしいのか分からない。
「今ねえ、異世界にいるんだって。大変だよね」
「…何で人事みたいに言うんだよ」
予測はしていたが、独り言に返ってきた返事に更に混乱する。
いきなり知らない場所にいるのにも関わらず、まるで動揺していない。
「だって、問題ないでしょ?大丈夫だよ」
ゆっくり頭を起こす。
なるほど、膝枕をしていてくれたのかと理解する。
頭が痛くないのはそのお陰だろう。
「あー…ごめん。もう少し細かく説明してくれ、優奈」
体を起こしてすぐに、俺の幼馴染の優奈に詳しい説明を求めた。
これが、異世界1日目の出来事であった。