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弱き者強きもの

再投稿です。これは、【唯一魔王を倒せるのが無属性の俺しかいないと知った途端、手のひら返しが半端ないのですが~】をリメイクし新しく書き直している為、旧作とはシナリオ構成が多少異なります。

話としては展開は早くないのですが、飽きさせないよう頑張ります

「全くお前は使えねーゴミだな!! なんで冒険者になろうとしたんだよ。ジハードのせいで、雷竜の赤子を逃がしたじゃねーかよ。高報酬だったのに。こんな義兄むかちは死ねばいいのに」


 深紅の鎧を纏った少年は、語気を荒げ高圧的な態度をとり、容赦なく目の前で俯く少年を睨みつける。片腕を負傷しているのに対し憂いる事もなく──それどころか、下卑た者に送る非常に冷めきった視線だ。


「ごめん。でもあれは──逃げなきゃ俺が死ぬ所だったんだよ」と、少年・ジハード=バレットは目を伏せたまま、小さい声で弁明を試みる。


 巫覡ふげきの分家・ルクス=フォリアが放った小規模の崩落魔法は、間違いなく囮となっていたジハード諸共に飲み込む勢いがあった。故に逃げるしかなかった。


 鎧が軋み鳴る甲高い音に身を竦めると同時に──


「だから、死ねばいいだろうが!」


 超合金で出来た剣の柄が容赦なく、みぞおちを穿つ。金属と金属がぶつかり、鳴るのは鈍く高い音。


 大した報酬を貰ってない、ジハードの武具がクルスの一撃を緩和できるはずもない。必然にして強い衝撃がジハードの全身を襲った。


 気が飛ぶのを堪えた刹那──


「ふぐっ……ッ!! おぇぇ!」


 訪れた嗚咽と共に今朝方、妹が作ってくれた朝食が液体になり口から溢れ出した。惨めに這いつくばり、耳を掠める嘲笑を聞き流しながらも拳を強く握る。


 自分の運命を呪うしか、この場での逃げ道がなかったのだ。


 目から涙が滲む中、小馬鹿にするような声が鼓膜を揺さぶる。


「汚ねぇ。コイツ、ゲロを吐きやがった」

「みぞおちを殴られたくらいでへばってんなよ!」と、野太い声でチャチャを入れる大男──カタフ。


 史上最耐しじょうさいたい赤き(ブラッドタ)ンクと呼ばれ。クルスが戦闘中、自分と聖女リカーナだけ身を守る魔法を使い、のんびり昼寝をしていた。


 元はと言えば、カタフがジハードにも加護を付与してくれていればこうはならなかったはずだ。内心で苛立ちを覚えながらも、それ以上に自分が無属性だから仕方がないんだと、思い至る。


「すみません。だから、殴るのだけは」


 不満を言う事は許されない。神は“人権”というものを与えては下さらなかった。代わりに与えたのは“無属性”と言う名のレッテル。理不尽と言う名の人生。だから生きるのにだって苦労しかしなかった。必死になるしか生きて行く道がなかったのだ。


「はははっ。殴るのだけはって、殴られる役割があるだけでも、金になるんだから喜べよ」

「……グッ」


 蹴っ飛ばされ、転がり止まった場所に居たのは琥珀色をした瞳で睨むリカーナだった。虫を見るような、生ゴミをみるような、興味も何も無い、恐ろしいまでに非情な視線。


「汚いんですけど、クルス君。こちらに生ゴミを押し付けないでください」

「はははっ! わりぃわりぃ。生ゴミだから軽くて軽くて。なんなら、リカーナが治癒魔法で癒してやっても良いんだぜ?その、千年に一度の奇跡と言われる聖霊(せいれい)の力を使ってよ?」

「嫌よ、気持ち悪い」

「やめとけやめとけ。聖女様の力は、こんなゴミに使うもんじゃねーよ。フレイル様の天罰が怖ーよ」

「そうよ。価値もない物をやっても意味ないじゃない」


 汚れ一つない白い修道着を躍らせ、距離を取るリカーナは無機質な声音でそう言った。悔しかったし怒り止まらない。けれど、コイツらに文句を言う事がない。


 ──言えるはずがないんだ。


 それこそ、神が彼等には与えた。祝福と人権を。選ばれし英雄足る素質を。


 人は産まれた時にジハードとは異なり、必ず一属性を持って産まれる。地水火風ちすいかふうの他に光と闇があるのだが、クルスは巫覡の分家初であり、人類史初の全属性を扱える唯一無二の勇者・聖帝魔法(せいてい)を操る男。そして皇帝の血を引く者・クルス=フォリア。



 カタフは、矛盾を具現化したような男だ。クルスが絶対に防ぐこと叶わない一撃を穿てるならば、カタフはその一撃を防ぐだけの力を持っていると言われている。

 今でも、どちらが強いかと酒の話題に出されるぐらいには噂になっているのだ。


 聖女リカーナ。


 大陸・エペシアが奉る女神・フレイルの寵愛を持って産まれたとされる教会のシスターだった女性。


 本来、人は精神力と集中力からなる魔力を使い魔法を放つのだが、リカーナは精霊の力、一部を扱い無限に魔法を扱える。

 聖霊使いの異名を持つ聖女。


 そして、彼等を皆は口を揃えて彼らだけを讃えるのだ。


 ──救世主メシアと。


 そんな皆に愛され。子供達の憧れでもある方々がなぜ俺なんかを──と、一年前迄は。つまり、彼等に少なからず敬意と尊敬があった頃は考えたりしていた。貶され、殴られても自分が至らないからだと反省をしながら。


 だが、実際は違った。ジハードはただの道具だ。自分達が優しき救世主だと民に知らしめるための。


 嘗てクルスは冒険者ギルドが主催する祭りの演説で言っていた。


『誰しもが英雄になる可能性をひめているのだ』と。その文言に、喝采が湧いたのを今でも嫌な思い出として残っている。


 そんな彼等は、明日とうとう魔王討伐へと出立するのだ。街の皆も当然それを知っている。怖気つき、一人此処に残ると言うクルス達の発言も全て。


ただいま、1章を書き終えました。数多くのブクマや評価、そして感想をして頂き本当にありがとうございます。完結まで頑張りますので、少しでも気になってくださったらブクマなどお願いします

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