ギルドマスター
「アレク様お待ちしておりました」
俺は部屋に入ってすぐに声をかけられた。
その男は体の大きさは普通で身長も170そこらだと思う。顔付きは穏やかで一般人どころか貴族の令嬢すら魅了できそうな凛とした顔だ。実際過去に1度あったらしく、その時は断ったがその後あの手この手で奪いに来たらしい。そのせいで数年は女性に近づくのすダメだったそうだ。
「そんな固い口調はいいですよ。今回は依頼に来てるんですから」
「しかし」
俺から頼んでも簡単に口調を直そうとしない朴念仁だ。しかし女性からは『浮気しなそう』と見られているらしい
「ゴレイも、そんな事言うなよ。アレクがいいってんならいいだろ」
と奥の椅子に座って書類仕事をしていた男がたしなめた。身長は2m近くあり、筋肉もムキムキ。座っているだけなのに威圧感が半端ない。顔付きはさっきの男、ゴレイと逆でいかつい。しかしそれでも顔は整っており、タイプで別れそうな顔つきだ
「ガレイ兄さんもそんなんだからアリイさんに小言言われるんだよ」
「アリイは関係ないだろ!そんなんだったらお前だってアレイに色々言われてるだろ!」
「なっ!ガレイ兄さんこそ······」
「ゴレイこそ·········」
しばらくこのやり取りが続いた·······
「すまねえな。いつもの癖で」
「すいません。いつものことなので」
「気にしなくていい。兄弟喧嘩なんてザラだろ?それに謝るなら今更だ」
「ガハハ。確かにそうだな。それで、さっきは依頼に来たと言っていたが?」
「俺の連れの4人に修行をつけて欲しい。指名依頼で、指名相手は【オール・バニッシュ】で内容は4人の修行、それと俺が他に付け足したもので、期限は俺らが学園に入学するまでの2年近く。それまで毎日。でも4人の体調を見て判断。報酬は依頼が終わるまで俺が3食を負担と「がたん!!」····それと武具の制作「バンッ!!」··········そして白金貨10枚「ちょっと待て!」·······················何?」
「報酬がやりすぎなんだよ。普通は白金貨1枚でもやりすぎなんだぞ?」
「それは普通の貴族が相手の場合だろ?
今回は王族、大公爵、公爵、辺境伯の4人だぞ?王族の家庭教師は白金貨5枚払うと聞いたが?」
「それは王太子や才能ある子にだよ。普通は白金貨1枚ぐらいじゃないか?」
「それならこの4人は全員天才だぞ?初期ステータスも総合1000越え。分かるか?それを4人鍛えるんだぞ?しかも貴族。これからの未来を担っていく人材を育てるんだとっーても大事なことだろ?」
「確かにそうだな。しかし!何故料理に装備まで!納得いかん!」
この人は何故こうも突っかかるのか?後ろでもゴレイが「そうだ!そうだ!」とか言ってるし。
「なんでそんなに食い下がるんだ?」
「だって、だって、グレイ達が羨ましいんだよ!」
···········はあ?
「そうだ!アレク様の料理は未知の味と評価した王宮料理人が言っていた。そんな料理を毎日食べられるグレイ兄さんが羨ましくて、妬ましくて」
「それにお前の作る武具なら確実に達人級は超える。それに未知の魔導具を作り出すものは確実に売れる。そんなものをグレイが手にするなんて羨ましくて、妬ましくて」
「「うっかり殺しちゃいそうだ!!」」
怖ぇー!なんだよ。この兄弟。料理と装備のためにここまでやるか普通?頭おかしいのかな??
「そんなことで兄弟殺すなよ」
「なんであいつはいつもいいとこだけ持っていくんだ!」
·······どうやら話しは聞いて貰えないらしい
「本当ですよ!あの時だって私達に面倒な業務を押し付けて、あいつは悠々と冒険者を続けている」
「ああ、神は何故俺らに祝福をくれないのか」
お前信者じゃないだろ
「ああ!もう、鬱陶しい!とりあえず、報酬は減額で白金貨5枚、制作は武器か防具のどっちか、料理は朝と夜。これでどうだ」
「「······異議なし」」
その顔は異議あるな。
それでもとりあえず同意は得られたので依頼を発行してくれるらしい。·······俺が言ったことを書いてるか怪しいものだ。
しかしギルドマスターを疑うことはできず、俺は貰った紙を手に部屋を退出した