武神パーティーに出る2
「アレクはよくあんなに堂々と出来たな。初めての王族相手だと大公爵家でも緊張すると思うが?」
「俺は以前ギルドマスターに会ってますからね。権威や権力には慣れたんですよ」
「国王とギルドマスターを一緒にするか。流石アレク。大物すぎる」
(マジで信じたのかよ。大丈夫か?)
「それにいくら権力を持ってようと1人の人間です
からね。怖いのは権力だけ。それを抜いて、敬語を使って話せば大丈夫ですよ」
「流石アレク様!」
「そんなことができたら苦労しないわよ兄様」
「そうじゃ!そうじゃ!」
「これは俺の気持ちの問題だからな。人にもよるけど周りの人を物や、動物にイメージして話す人もいるからね。やり方は多種多様だよ」
「うむ。アレクのいうとうりだな。確かに人を別の何かに例える人もいる。しかしそれも1つの方法に過ぎない。だから方法は人次第だ」
と話しながら待っていたが
「アーク様。久しぶりでございます」
「ん?おお。義父さん。どうされたのですか?」
「アーク様。2人などの時はそれでいいですが公衆の面前でその呼び方は······」
「そうだったな。っほん。ゼルス殿どうされたのですか?」
ゼルスと呼ばれ、アークから義父さんと呼ばれた男はとても祖父に見えないくらい若かった。髪の色はレイと同じで黒。見た目は30代後半と呼ばれても通じる若々しさ。それに体型もデブでも、ガリでも無い普通の痩せ型。普通の貴族より家格が高いにも関わらず太らない。それにゼルスの治めるレイト領は食料の生産が盛んで、この国の食料を支えていると言っても過言では無い。
「いえ。私の息子も今年で10歳になるのでアレク様と合わせておこうと思いまして。ほらデルタ。挨拶をしなさい」
ゼルスの横から出てきたのはゼルスに似てイケメンの子だった。髪の毛は真っ黒で漆黒と言ってもいいかもしれない。それに体型も顔も全てがゼルスの子供の頃ようだ
「私の名前はデルタです」
「俺の名前はアレクだ。早速だけどまず敬語をやめよう」
「何故でしょうか?」
「だって今から友達になるんだよ?敬語なんかいらないだろ?」
「·········確かにそうですね。いやそうだな」
「そっちの方がいいよ。それで後ろにいるのが右から順にサーシャ、エリザ、コーデリアだよ」
「よろしくね」
「よろしくお願いします」
「よろしくなのじゃ」
「こちらこそよろしく」
と挨拶を潤滑に進めていく
「父様。僕達はここから離れていいですか?」
「何故だ?」
「多分今からやってくる人は僕達と縁がない人で、これから縁を結ぼうとしてる人ですよね?だったら俺はそんな面倒ごとに巻き込まれたくありません。だから俺とエリザとサーシャとコーデリア。それにデルタも一緒にパーティーを回りたいです」
「むむむ。アレクがいつからかここまで賢くなったぞ。レイ。このままだとアレクに『いいお父さん』が見せられなくなってしまう」
「いいではないですか。アレクはいずれ私たちを超えるのですよ?それが早いか遅いかの違いですよ」
「確かにそうだな。よしアレク。行ってきていいぞそのかわりちゃんとデルタとも仲良くなれよ」
「勿論です。それじゃ行こうかみんな」
「「「はい!」」」
「楽しみだな」
こうして俺らは親から離れてパーティーに向かった
「何してるんだ?あいつらは?デルタ分かるか?」
「多分だけど、自分より爵位が低いのにアレクの婚約者になってるのが許せないんじゃないの?」
「はぁ〜。そういうところがモテない原因だと思うけど」
「なるほど。アレクの好みは嫉妬や妬まない人か。アレクもしかして他にも奥さん娶ろうとしてる?」
「してないよ。それに俺の心を乱すな。俺は今心が過労で死にそうだ」
「あはは。あれは面白かったね」
「笑い事じゃねーよ。それにそっちもだろ?」
「残念なことに全員持ってかれちゃったよ」
「残念じゃないだろ。て今なんて言った?!」
「残念なこと?」
「それは聞いた。その次」
「全員持ってかれた?」
「マジか。てことはさっき俺は何人を相手にしてたんだよ」
「んーと。ざっと50人はいたんじゃない?」
「多すぎるよ」
「貴方なんかにアレク様は相応しくないわ!!」
「そんなことなんで貴方が決めるの?」
俺らがのんびり話しているとまた声が聞こえてきた
「まだやってんのか」
俺は頭を悩ませながらここまでの経緯を辿った
·········武神に頭を悩ませると、知識神でもできないようなことをやるエリザは最強?かも知れない
ことの発端は10分前に遡る
「アレク様。おしたいしております」
「アレク様大好きです」
「アレク様結婚してください」
「アレク様」
「アレク様好きー」
俺は今沢山の令嬢から追い詰められてた。俺が親元から離れたのを見つけたらすぐさま俺に詰めてきたのだ。
「アレク頑張ってね〜」
「兄様の自業自得です」
「アレク様なら大丈夫です」
「妾達というものがありながら何をしとるんだか」
俺が見つかった瞬間にみんなが離れていった。
(クソッあいつらめ。情も情けもないな)
そのまま俺は令嬢達に向かって言ったのだ
「すまない。俺には既に婚約者がいる」
「「「「「「「「「ええー」」」」」」」」」
「俺にはエリザにこれからをエリザと共に歩むと誓った。だから皆の気持ちには応えられない」
「「「「「「「「「「··········」」」」」」」」」」
「アレク様ぁ」
「兄様。私は?!」
「むぅ。エリザだけずるいのじゃ」
「アレク。よくこんなところで言い切ったね」
1人ちゃちゃを入れてくるやつがいるが、概ね予想通りの状況だ。
これも一つの伏線だ。エリザを俺の婚約者ということにすれば娘を持つ貴族は色仕掛けではなくとも、エリザに取り入ればいいから、俺の面倒も減るし、令嬢も好きな人と婚約できる。それにエリザより爵位が上の男がエリザに近づかないようにするため、エリザのいじめ防止の意味も兼ねている。
なんて天才的なことを考えるんだ。
その時の俺はそう思っていた。武神の誤算としては令嬢達が本気でアレクを好いていたことだろう。アレクはその後令嬢の波をあっさりとかわし、みんなの元へ戻った
「アレク様ぁ。いつもそんなことを思っててくれたんですね。私エリザもアレク様とアレク様とこれからを歩みます」
「兄様!エリザだけずるい!私にも言ってよ!」
「そうじゃ。エリザだけ赤贔屓はダメなのじゃ。平等にすることを要求するのじゃ」
「アレクって、本当にモテモテだね。羨ましいよ」
と軽口(?)を叩きながら俺とデルタはジュースを取りに行った。そして戻って来たらこの騒ぎだ。
「貴方とアレク様は爵位が釣り合ってないわ。それに比べて私は公爵家ですから釣り合ってますのよ」
「何言ってるの?愛に爵位なんて関係ないよ。私が世界で一番アレク様を愛しているの。それを爵位だとか、釣り合ってないとか、で邪魔しないでください」
「貴方こそ何言ってるの?貴族の中で恋愛結婚なんてないの。あるのは政略結婚だけよ。諦めなさい」
「てゆーことはは貴方はアレク様のこと好きじゃないの?」
「っっ!そんなことないわ。私だってアレク様のことす、す、好きよ」
「なら貴方もアレク様のことが好きなんじゃない。なら結婚できないわね」
「貴方に何が分かるのよ!!」
「それはこっちのセリフ!!」
それを遠くから見ていたアレクとデルタ
「·········修羅場だね」
「ああ、そうだな」
「アレク、ドンマイ。喧嘩を止めるのも夫の責任だよ」
「はぁ〜。分かったよ。行ってくるから、ジュース持ってて」
「はーい。楽しみにしてるから」
デルタの小言を無視して俺は進む。進んでいるうちに周りに見つかるが当の本人達は未だ気づかない模様。そして俺は言った
「何をしている」
自分が思っているより声が周りに聞こえた。その声でエリザと公爵家の娘が俺の方を向いた
「俺はさっき言ったよな。『俺はエリザにこれからを誓った』って。もしかして聞こえなかったのか?聞こえなかったとしても、ふざけるのも大概にしろよ。もし俺にエリザが相応しくないならエリザじゃなくて、俺に直接文句を言いに来い。それに俺は側室はまだ持たん。そして、これからも持つかどうかは知らんがそれは言ってしまえばお前達の努力次第だ」
その声に周りが息を飲む
「俺はただ可愛いからエリザをとったわけではないそれならそこら中にいるからな」
アレクに当回しに可愛いと言われた令嬢は喜んだ
「しかし!それだけではダメだ。俺のことを魅せられる力がなければダメだ。魅力?力?大いに結構。俺が気になる、欲しいと思わせる物を見せろ。そうすれば俺はそいつをどんな手段を用いてでも貰うな例えその方法が政略結婚だとしてもだ」
結婚ということに令嬢達も喜ぶ。なんせ夢にまで見た大公爵家との結婚だ。それに相手はアレクというイケメンと来た。これには多くの貴族が関心を持った。大公爵家と縁を結べるチャンスだ。見逃す貴族の方がおかしい
「なら頑張ってくれ。エリザ、行こう」
「あ、うん」
自分の妄想にトリップ状態の令嬢、貴族を置いて俺とエリザはアークの場所に戻る
(2度とあんなことはゴメンだ)