〜ペット〜
元の形に戻ったと思ったら、スライムはまた溶けるように床に広がっていく。僕はぽかんとした後、その溶けた状態のスライムのもとへ寄った。
触ってみよう。僕はスライムに手を置く。
え、冷たっ
最初は驚いたが、触っているとひんやりとしていて気持ちいい。凍った保冷剤よりも冷たくないし、ぬるいという感じでもない。ぷにぷにしていてかつひんやりしているのだからずっと触ってしまう。
スライムはずっと触らられるのを嫌ったのか、元の形に戻ってしまった。元の形に戻ると、冷たさが失われていくようだ。僕はスライムから離れた。
その後もスライムは何度も溶けては戻るを繰り返していた。本人でも自分が溶けられることを確認している様子であった。
日は沈み、夕ご飯の時間である。僕は洗面器に水を入れ、スライムにあげる。慣れた様子でスライムは水を飲んでいた。
夕ご飯を終え、僕は安くで買ったテレビをつけ、のんびり過ごしていた。テレビにはかわいいトイプードルが映っている。番組はペット特集のような趣旨で、トイプードルの他に、猫やモルモットのかわいい映像が映されていた。僕はテレビの中の動物たちに癒やされ、横で溶けて戻ってを繰り返すスライムにも癒やされる。今度はテレビに2匹の猫が一つお皿に入ったエサを奪い合うシーンがでた。一匹が手で皿を手繰り寄せ、顔を近づけてると、その間にもう一匹が手でその皿を手繰り寄せる。なかなかおもしろいシーンだなぁと思う。
ふと、明日のスライムの朝ごはんのソーダを切らしていたことを思い出す。やってしまった。暗い山道はなかなか怖く、少し危ないため、外出は控えていた。朝ごはんも水でいいか、という考えに至る。
その間に、テレビの場面は変わっていて、今度は若手俳優が秋田犬と散歩をしているところだった。
そういえば、スライムと出会ってから散歩などしていない。
ずっとスライムは家の中にいる。山中ではあるが他人に見つかる可能性が無いわけではない。一応道路もある。そのため、今までは外に出すということをしようとしなかった。
僕はある方法を考えつく
水ずっと飲ませたら透明になって他人から見えないのではないか。
僕は出会って間もないときを思い出した。水をずっとあげていると、スライムの体の色が薄くなっていったのだ。そのとき僕はあわててソーダを飲まし、色を元に戻したのだ。
あのまま水を飲ませるとどうなっていたのだろうか。
僕は少しの好奇心とスライムと一緒に外で散歩をするため、スライムのごはんをしばらくすべて水にしようと思い立つ。
実は水にする理由はもう一つあって、大雑把に言うと金欠なのである。一ヶ月大体5000円ほどかかることが、ソーダあげていて気づいたのだ。水にすればかなり抑えることができる。
一般に、ペットを飼うともっとお金はかかるだろう。食費以外何にもお金がかからないというのは幸運なことである。金欠とはいえ、その食費でさえ、限界までカットしてしまう僕のことを自分でケチなやつだと心の中で罵る。
そんな僕の心とは別に、僕の頭はスライムの食費をどうやって抑えるかということを考えていて、すでに2つほど頭に浮かんでしまった。心の中でスライムにごめんなさいと謝った。
しかし、今頭に浮かんだ方法は自分でも良策と思えるもので、僕は一度スライムの散歩ができたら試してみようと思う。
僕はテレビを見ながら、スライムと散歩する情景を思い浮かべた。