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72話 僕達は勇者と妖精を尋ねる

 僕達は扉をノックすると声が聞こえた。


「開いてるよー」


 つまり、入ってきていいって事だよね。僕達は扉を開けて足を踏み入れる。


「やぁ春来くん」


「悠真は元気そうだね」


「それもこれも燈ちゃんのお陰だよ」


 悠真の部屋には燈さんが座っていた。


「燈も来てたんだ!」


「あ、莉子さん」


 見慣れてしまった風景だが安室ちゃんが花菱さんに抱き着いている。


「莉子さん恥ずかしいです」


「よいではないかー」


「安室ちゃん少し落ち着きなさい」


 僕の言う事は聞いてくれるのか少しだけ堪能すると離れてくれた。こういう所が可愛いなって思う。


「悠真と花菱さんは何かしてたの? 大丈夫? 僕達が訪ねちゃったけど」


「私は何時でも春来を歓迎するよ。それに燈ちゃんとは少し雑談をしていただけだからね」


「はい! 悠真さんと少しお話をしていただけです」


 悠真が誰かと仲が良いのが僕にとってはとても新鮮なので花菱さんの存在は大きい。


「二人は仲がいいんですね。前から知ってる感じでしたし」


「そうだね。去年初めて会ったけどそれからは少し交流があってね」


「花菱さんも悠真の事を今後とも宜しくお願いします」


 頑張りますと返事をくれた。この子は悠真の事がとても気に入っている様子で僕もなんだか嬉しい。薄い緑色の髪の毛は殆ど見かける事が無いので珍しく視線が行ってしまう。その様子が気になったのか花菱さんが此方を伺っている。


「あ、ごめん。珍しい色だなぁーって思って見すぎちゃったかな?」


「い、いえ。目立つ色なので慣れています」


「ふっ春来も燈ちゃんの髪の毛が気になるのかな? 癖になる触り心地なんだよ」


「莉子も好き!」


 唯一触れ合える女性なのか悠真はいつも以上にデレデレだな。安室ちゃんも気に入ってるし触り心地が気になる。


「ところで、春来は何か用があったんじゃないのか?」


「桜井さんと席を外していたよね? 僕は何かあったのか気になるんだけど」


 僕の言葉を聞いて花菱さんも興味津々な様子で身を乗り出して聴いていた。


「あぁ、アレはちょっとしたお散歩だよ。桜ちゃんとは付き合いが長いからね。積もる話もあるってもんさ」


「つい下着盗んじゃったとか?」


「まさか春来も私を疑っているのかい? 私ならこそこそ盗まずに堂々とこう言うだろうね『桜ちゃんの下着が欲しいです』ってね」


 本当に言いそうだから困る。


「悠真って変な奴だな。でも莉子は知ってるぞ? 燈の下着が一番可愛かったんだからな!」


「ほほぉ、それは興味深いね」


 花菱さん逃げてー。


「悠真さん……ダメです! 見せません」


 花菱さんは回避しようとしている。


「ふっふっふー。燈の下着は莉子しか知らないのだ」


「何か勝ち誇ってるけど安室ちゃん? こういう話は本人が嫌な気持ちになるかもしれないから落ち着こうね?」


「はっ! 燈は嫌だったか?」


「い、いえ。莉子さんはそんな感じなので大丈夫ですよ」


 そう、そんな感じなのである。


「ふぅ。良かったのだ。あ! そうだ! 燈の先祖返りを教えて欲しいんだけどダメ?」


「いいですよ。私の先祖返りはその……妖精――フェアリーで人の怪我とかを治せるだけです」


「ふむふむ。だから転がっていた悠真を治したんだな」


 安室ちゃんは桜井さんの尻尾に夢中だった気がするけど、ちゃんと見ている事に僕は感心してしまった。この子実は注意散漫に見えて大切な事は見逃さないのかも。


「悠真は?」


「私は……勇者だよ」


「嘘だー」


 信じてあげてください。本当に勇者なんです。瞬間移動や光を放つ攻撃は本当に凄いんです。


「信じられないのも仕方ない。だが、私は勇者なのだよ」


 そう言って僕の背後に瞬間移動した。急に目の前から居なくならないで欲しいです。大和先輩を思い出して身構えてしまう。


「こうやって瞬間移動だって出来るのだよ?」


「やっぱ悠真がそれで桜の下着を盗んだんだな?」


「私はこそこそしないから信じてくれないかな?」


「むむむ……」


 名探偵安室莉子は頭を抱えている。僕にも何にも分からない。この聞き込み調査で分かる事はあるのだろうか。


「燈はあの後はずっと悠真と二人っきりなのか?」


 安室ちゃんからの質問で顔を赤くしながら花菱さんは答える。見ていて初々しいというか悠真の事が気に入ってる様子が分かる。伝わる。応援したくなる。


「悠真さんと一緒でした。そんなに会えないのでお話したいなって思いまして」


「ふむふむ。燈は悠真の事が好きなんだな!」


「は、はい! 大好きです!」


 この子は見守りたい……。


「ふふっ。この世の女性は全員が私の事を愛しているからね。皆が私の虜だよ」


「悠真は安室ちゃんより落ち着こうね。確かにカッコいいけど……」


「どうしたんだい? 私は春来の事も大好きだよ」


「やめなさい」


 安室ちゃんと花菱さんの視線が怖いので二人の顔は見れそうにないや。それにしても悠真の性格なら下着泥棒なんてやらないと思う。いや、可能性は捨てきれないが僕はやらないと信じているぞ。


「謎が深まるね。どうして僕のカバンに桜井さんの下着が入っていたんだろう」


「春来も咲夜と一緒に居たからアリバイはあるはずだよね。では、やはり桜井さんが間違えたんじゃないかな?」


「脱いだ下着を僕のカバンに? その場合は脱衣所で脱いで僕の部屋に行くか、僕の部屋で脱いで脱衣所に向かう事になるね」


「おっと、私は散歩した後に桜ちゃんと二人で大浴場に向かったはずだが……」


 つまり、脱衣所で脱いだ後に移動しているって事か。本当に分からん。


「花菱さんは何か心当たりとかあったりしない?」


「……ないですねぇ」


 そりゃそうだよな。安室ちゃんとずっと一緒に居たんだもん。段々と僕自身が無意識で桜井さんの下着を盗んで自分のカバンに収めたような錯覚さえ感じる。いや、あの時は咲夜さんの服を脱がして少しドキドキしていたので絶対に無いだろう。そうだ。僕は咲夜さんの服を脱がしていたのだ。


「安室ちゃんこの後はどうしようか」


「うーん、桜の所に行こうかな」


 僕の膝にちょこんと座って安室ちゃんは何か悩んでいる。胡坐をかいていたのですっぽりふぃっとする。


「私の目からは二人が兄妹の様に見えるね。春来はロリに慕われる特性を持っているのかな?」


「悠真も変な事を言わないでください。僕と安室ちゃんは……」


 僕と安室ちゃんは何なんだ? 僕の記憶だと偶然寮で出会ってご飯を奢って腕相撲で泣かしてご飯を奢ってご飯を奢ってご飯を奢って……来る途中にも新幹線で食べるお菓子を買い与えてお弁当も買ってお団子も買って……。


「春来は兄みたいな感じだぞ! 莉子のお願いなら何でも叶えてくれるカッコいいお兄ちゃんなのだ」


「僕は大変な妹を持ってしまったらしい」


 花菱さんは口元を手で隠してふふと笑っている。本人が居るので口が裂けても言えないが花菱さんもややロリ体系な気がするが……いや、大和先輩よりは背が低いけど女性的な体つきだな。大丈夫!


「じゃ、安室ちゃん? 桜井さんの部屋に行こうか」


「分かった! 燈と悠真ばいばい」


 僕達は残る一室へと足を運ぶ。

評価者が増えてました!評価してくれてありがとー!

ブックマークもゆっくり増えてるので嬉しいです。

ありがとね。


追記:活動報告にて次の更新目途を乗せてます

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