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71話 僕達は調査を開始する

 僕のカバンに桜井さんの下着……あ、この下着可愛いな。ピンク色の花柄で大人って感じだ。


「待ってください! 春来さんは俺とずっと一緒に居ましたよ?」


「春来は物を盗む子じゃないぞ!」


 咲夜さん……安室ちゃんありがとう。


「でも、お兄様? 実際にカバンから証拠が出てきてますよ?」


「それは……誰かが……」


 心当たりは無いにせよ。本当に出てきている。


「私は桜井さんの下着を見れて満足だよ」


「悠真は少し黙ってて」


 こういう時も平常運転なのでいつもの調子が出る。


「じゃぁ誰が桜の下着を?」


 謎である。桜井さんは下着を持って自室に戻って行った。


「私の名推理を聴いてくれないかな? もしかすると、桜ちゃんが部屋を間違えて自分で春来のカバンに入れた可能性は無いかな?」


「でも、あの様子だと脱いだ下着が無いって感じでしたよね?」


「ふむ。では、やはり春来には勇者の隠れた力が隠されており分身して盗んだ……とか?」


「僕にそんな力はありません」


 紗愛さんも兄の手を引いて自室に戻る。


「まぁ、見つかったんだから良いではないか! ははは」


「悠真……めちゃくちゃポジティブだね。僕達も一旦部屋に戻ろうか安室ちゃん」


「わかったです」


 花菱さんと悠真を残して自室に戻ることにした。とても溝が生まれたと思う。これは本当にどういうことだろう。自室に入って畳の上に寝っ転がった。


「春来は下着が欲しいのか?」


「唐突に安室ちゃんは何を口走るんだろう」


 寝っ転がる僕の隣にごろーんと横になった。安室ちゃんは自由奔放がとても似合う。


「不思議だな。燈も紗愛も一緒にお風呂に入っていたのに……もしかしてあれかな? 知らない人がいるのか?」


「おっと、その可能性は考えていなかったなぁ」


 僕達以外に誰かが紛れ怒んでいる可能性か……でも、女将さんが言うには誰も居ないって言ってたし。


「でも大丈夫だぞ莉子は春来の味方なのだ」


「安室ちゃんって頼りになる時が何故かあるよね」


「お姉さんだからな!」


「どちらかというと妹だよ」


「春来は妹が欲しい?」


 僕に安室ちゃんの様な妹……今と何も変わらない気がする。


「春来? 電話が光ってるぞ」


 荷物を置くときに放置していた携帯電話が光っている。


「ありがと」


 中身を確認するとふーちゃんから連絡が来ていた。今から遊びにくるけど都合は良いか尋ねられている。あの子も自由奔放な所があるが、連絡をちゃんとしてくれるいい子だ。


 残念な事に僕は悠真と旅館に居るから家に居ないと伝えよう。


 畳で横になると独特な匂いがするな……いつもはふんわりベッドなのでこの堅さには慣れないと。


「安室ちゃん。桜井さんの尻尾は気持ち良かったね」

「そうだな。あの気持ちよさは黒猫に抱き着いた時と同じくらい気持ちいい」


「大和先輩? まぁ、安室ちゃんなら簡単に抱きつけそうだね」


「春来もお願いすると抱き着かせてくれると思うぞ! 黒猫は優しい」


 僕が先輩に抱き着かせてくださいと言ったとしよう。そうすると良い度胸だなとか言いながら蹴ってきそう。でもでも最近の先輩には優しさが垣間見えるので手くらいなら握ってくれるかもしれない。今度言ってみようかな。


「そういえば、お風呂はどうだった?」


 僕達はのんびり浸かって気持ちよかった。


「皆でお風呂は楽しかった。桜と紗愛がくっついてくるのがウザかったけど。でも、萌え萌えボディに悩殺されている証拠だな!」


「そうだね」


 安室ちゃんは自信満々で輝いている。


「花菱さんは?」


「燈には莉子が抱き着きに行ったぞ!」


 想像はしないでおこう。


「安室ちゃんは皆と仲良くなることには成功しているみたいだね」


「うん! みんないい人だぞ」


 さて……僕はどう付き合っていこう。


「春来? 安心しろ? 莉子が全部解決してあげるからね」


 とても心強い。安室ちゃんが居て良かった。


「桜の狐耳は可愛いな。莉子もコスプレ? の時に付けてみようかな。紗愛は可愛い服を沢山持ってて羨ましいぞ! 燈は大人しいから話しやすい」


「咲夜さんも話しやすい人だったよ」


「紗愛と咲夜の顔が一緒で変な気分」


「そうだね。どっちも可愛いよね」


「春来は咲夜が可愛い……」


 初めてな表情で安室ちゃんが僕を見ている。じーっと僕を観察している様な表情はとても珍しい。


「悠真は?」


「悠真もカッコいいよね。爽やかなイケメンって感じでさ」


「春来は男好き……莉子は春来の妹として優しくするね」


「こら、妹じゃないし別に男が好きな訳じゃないよ」


 安室ちゃんがそういう目で僕を見始めている……これは払拭しなくては。


「春来は好きな人いないのか?」


「僕の好きな人かぁ……そりゃせっちゃんも大和先輩も好きだよ? 瞳さんも素敵な人だしね」


「莉子は?」


「もちろん安室ちゃんも大好きさ」


「莉子も春来の事は好きだぞ! なんでも買ってくれるし」


 仕方ないんです。何だかんだ買い与えてしまうのです。本当に妹の様な錯覚が起きているなこれは。


 あ、手が当たった。寝っ転がっている安室ちゃんが寝がえりを打つと僕の手に触れてしまったらしい。僕は安室ちゃんを見るとおさげが無いのでとても新鮮だ。赤っぽい色の髪はだらしなく垂れている。目が合うと笑ってくれる。


「春来は布団派なのか? ベット派なのか?」


「僕はベッドだよ。だから今日はちゃんと眠れるか心配だな」


「眠れなかったら莉子に声を掛けるんだぞ? 子守歌を歌ってあげよう」


「その時が来たらお願いしようかな」


 子守歌って安室ちゃんらしい。


「そろそろ行こ」


「ん? どこへ?」


「聞き込み調査なのだ」


 体を起こしていつものおさげをセットすると安室ちゃんが僕の手を引いて部屋を飛び出た。とことこと歩く安室ちゃんは不霊兄妹の部屋をノックする。


「はーい」


 扉が開かれると紗愛さんが姿を見せた。


「あ、莉子ちゃん来てくれた! あれ? 狼さんも来てますね……」


「僕は狼じゃないよ」


「入っていい?」


「むむ……いいですよ」


 快くでは無いが紗愛さんは僕達の来訪を受け入れてくれた。


「あ、春来さんいらっしゃい。さっきは災難でしたね」


「咲夜さんが居て良かったよ」


 咲夜さんが備え付けのお菓子を手渡してくれた。本当に見分ける事が困難なので僕は胸の大きさで判断しようと心に決める。


「お兄様? お兄様は可愛いので狼さんに近づくと悪戯されてしまいますわ」


「春来さんはそんなことしないよ」


 そうだ! もっと僕が安全だという事を紗愛さんに伝えてくれ!


「お兄様がそう仰るなら……少しだけ警戒します」


「まぁ、ゆっくり信用を得て行こうと思う」


 僕達は……そうだ。安室ちゃんが聞き込み調査という事で尋ねてきたんだ。


「安室ちゃん? その……ここに来た理由って」


「あ! そうだ! 咲夜は春来とずっと一緒に居たんだよね? 紗愛は莉子とずっと一緒だし……」


 ゆっくりアリバイを確認して認識を合わせよう。


「そうですの。莉子ちゃんとお風呂は楽しかった! また入りましょうねー」


「ねー」


 この二人仲がいいぞ……安室ちゃんのコミュニケーション能力が高いのか愛されキャラなのか。


「あ! 紗愛の先祖返りはどんな事が出来るんだ?」


「安室ちゃん。そこは触れないようにしよう」


「む? 春来は何か知っているのか?」


 知っているというか体験したというか。大人な力だった。


「お兄様。もしかして狼さんに使われたんですね……」


「何もないから! 春来はそういう人じゃないからね。俺が保証するよ」


 咲夜さんとっても頼りになる。ずっと一緒にいて良かった。


「まぁ、お兄様に何もなかったので安心ですわ。莉子ちゃんには少し早い気がするので私の先祖返りは秘密です」


「むむ。仲間外れな気がするぞ」


「そんな事ないですよ莉子ちゃんはそのままが可愛いという事ですの」


 ぎゅーっと安室ちゃんを抱きしめている。あれ? 女の子同士は気楽に抱き着けるような感じなのかな。とはいえ、男同士抱き着くのは何か違う気がする……違う……よね?


「春来さんどうかしました?」


「んー、ウチの安室ちゃんが紗愛さんと仲良くて微笑ましいと言いますか。何と言いますか」


「紗愛は気に入ったら抱き着く癖がありますからね。迷惑じゃないならいいのですが」


 二人は楽しそうなので良かった。この二人の先祖返りで犯行は無理だと思う。咲夜さんに至っては既に僕が実証済みで隠れて何か出来る力じゃない。しばらく安室ちゃんを堪能した紗愛さんが解放するまで待って次の部屋に向かった。

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