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幼馴染は雪女で同級生は吸血鬼 ~先祖返りと青春の世界~  作者: Yuhきりしま
一章:人を噛む吸血鬼は嫌いですか?
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5話 僕は女の子を泣かせる

 僕は朝起きて準備をする、制服を着てベランダから外を眺めると今日は晴れている。そして、とても眠い。朝ごはんはいいや……。


 靴を履いて玄関から外に出る。眩しい日差しが僕の眠気を飛ばしてくれる。


 そして、歩いて学園に向かい自分のクラスに入る。Aクラスのメンバーを見るとまだ揃っていなかった。


 それこそ、せっちゃんも人噛さんも居ない。僕は机で眠ることにした。


 朝のホームルームから日々の授業、眠れそうな所は眠る。


 すやすやと時々起きるので記憶が曖昧だ。せっちゃんと何か話したような気がする。


 午後からは頑張ると自分に言い聞かせて午前中の授業は曖昧に過ごしていた。


 そして、待ちわびたお昼の時間。さてさて、今日は何を食べようか。


 購買部で適当に買って食べるか……僕は、自分の教室から出ると見覚えのあるロリっ子が居た。


「あれ? 中等部はここの棟じゃないぞ? また迷子か?」


「春来……やっぱり、覚えて無かったのね。私は隣のクラス……Bクラスの安室莉子」


「え? 隣……もしかして高等部? マジで?」


「私が萌え萌えボディだからって少し失礼」


「おま、萌え萌えって幼児体系じゃねーか」


「可愛い?」


「ま、まぁ可愛いけどそうじゃない」


 ちんちくりんの安室莉子は僕の隣のクラスでええっと、つまり。


「同級生だったんだ……な」


「そう、同級生。記憶した?」


「はい、記憶しました」


「ところで、春来。私はお腹が空きました」


「おい、ロリの振りしても僕には通じないぞ。同級生なら自分でどうにかしなさい」


「ダメ?」


 昨日のワンピースでは無く、制服に身を包んだおさげの似合う女の子が僕を見上げていた。


「今日だけだからな。今日だけだぞ」


「ありがと」


 僕と安室ちゃんは二人で購買部に向かい僕はオーソドックスに焼きそばパンを買った。


 そんな僕をみて、安室ちゃんも焼きそばパンを手に取る。


 その後に、あんパンを手に取った。僕はお茶と牛乳を手に取りお会計を済ます。そして、食堂に足を運んでパンを広げた。


「今日だけだからな? 本当に今日だけだからな?」


「わかってる。焼きそばパンは初めて食べる」


「おい、ノーマルな焼きそばパンを初めて食べる? 普段はどんなもの食べてるんだ?」


「あんパン。あと、メロンパン」


「もっと体によさそうな物をだな? とまぁ、焼きそばパンを食べる僕も体に気を使っている訳ではないけども」


「昨日はハンバーグを食べた」


「おう、知ってるよ」


 僕と安室ちゃん以外の生徒たちは同じように購買部でパンやおにぎりを食べるグループと、食堂で食券を買って中華や丼物を食べていた。


 焼きそばパンを開けて齧りつくと美味しい。焼きそばのソースが鼻に良い刺激を与えて食欲をそそる。


 僕はお茶を飲みながら安室ちゃんに話しかける。


「で、安室ちゃんは何の先祖返りなんだ?」


「……」


 じーっと僕を見てくる。同じように見つめ返す、数分目を合わせていると諦めたのか安室ちゃんは口を開いた。


「ドワーフです」


「ドワーフか、なるほど。だからこんなちんちくりんな感じなんだな」


「萌え萌えボディです。ちんちくりんじゃないです」


「はいはい、萌え萌えボディね。そのロリ体系が僕の財布からお金を色んな意味で奪って私欲を満たしているんだが? 主に食欲だが」


「だめ?」


「うーん。だめじゃない」


「よかった」


 にっこりとそれこそ無邪気な笑顔が僕に突き刺さる。


 ましてや自分の発言を振り返るとちんちくりんとは、虐めと問われても逃げられない。


 もしかしたら本人が気にしているかもしれない。少しだけ自重するか……。


「で、ロリロリボディの安室ちゃん。ドワーフっていう先祖返りで変な事を聞くかもしれないけど悩みとかあるか?」


「んー。少し考える」


 そう言ってあんパンに手を出した。


 僕はさりげなく買っていた牛乳を手渡す、あんパンと牛乳を口に運び満足している様子で僕も大満足だ。


 その様子を見ながら僕はお茶を飲む。


 少し考えると言っていたが、どれくらい考えてくれるのだろうか。僕はそんな事を考えながらじーっと食べている様子を眺める。


「ん」


 最後の一口を僕に突き出した。


「どうした? お腹いっぱいか?」


「とても食べたそうな目で見ていた」


「おいおい、僕は食べてる安室ちゃんを見ていたんだぜ? 決してあんパンじゃない」


「食べたいのは……莉子の方?」


「いいえ、やっぱりパン見てました頂きます」


 僕はあんパンを口に入れるとその甘さを噛み締める。


 まるで僕が安室に対しての甘さの様に僕の口に広がる。今日だけなんだから……今日だけ奢ってやるんだから。


「特に先祖返りで悩みは無い。手先も器用だし力持ちだし、困っていることは無い」


「そうか、困っていることは無い……か、その萌え萌えボディとやらがコンプレックスになったりしないのか?」


「うん? 私はこのボディを気に入っている。かわいい服も沢山ある」


「悩み何て個人差があるからなぁ、そうだよなー。僕もまぁ、最近悩みが出来てな」


「ご馳走様でした」


「お、おおう」


 人の話は聞かずに、安室ちゃんはパン達を包んでいた袋をごみ箱に入れて戻ってきた。


 僕の空になったお茶も焼きそばパンの包みも一緒に片付けてくれた。正直嬉しい。


「明日も食べたい」


「ちゃんと自分で買いなさい」


「む……腕相撲で莉子が勝ったら明日も奢って」


「はっはーん、僕がいくら細腕だろうがロリっ子に負ける訳ないだろう。いいぞ乗った! 勝負だ安室ちゃん」


 僕はそこまで言って思い出す。安室ちゃんの先祖はドワーフ。


 ちんちくりんボディがその特徴なのだろうが、その他にも言っていた。


 手先は器用で力持ち。……力持ち? この身長が百四十付近な子が僕を超える?


 少し不安になる。


「はい、腕だして」


「おう」


 向かいに座る安室ちゃんはその細い腕を前に突き出した、中々に幼くぷにっとした細い手に僕も腕を突き出して手を握った。


 肘が食堂のテーブルについて腕を組んでいる状態。このまま戦いが始められる。


「行きますよ。よーい、ドン」


 安室ちゃんの言葉に合わせて力を入れる。が、しかし、動かない。微動だにしない。


「む、春来強い、もう少し力入れる」


 何……だと、僕はずっと本気で力を入れているのだが? 少しづつ僕の敗北へと腕が傾きつつある。


 本気――僕が本気と言ったがそれは正しくない。


 先祖返りの力を使えば――まだ勝機がある。


 急にフルでやると怖いのでこっちも徐々に力の出力を上げていこう。


 ゆっくりと初めの位置に腕が戻る。そして、ゆっくり……ゆっくりと安室ちゃんの敗北へのカウントダウンが始まっていた。


「つ、つよい。嘘、んー。もうだめ」


 ドンと大きな音がなり、僕は安室ちゃんの腕を机に叩きつける事に成功した。僕の勝ちだ!


「よっしゃああああああああ」


 大人げなく、勝利の余韻に浸る。ガッツポーズをした。すると、聞きなれた声が聞こえた。


「春来くん何してるんですか!」


「おう、せっちゃん。僕は勝った」


「安室さん? 泣いてる……春来くん何をしたんですか」


 僕も顔を下ろして安室ちゃんを見ると、大粒の涙を瞳からこぼしていた。


 そりゃそうだ、僕の力で食堂のテーブルにドンっと……やばい。これはやばい。


「やり過ぎましたごめんなさい」


「安室さん、手が腫れてる……私の手で冷やしますね」


 せっちゃんが偶然通り掛かって良かった。


「安室ちゃん本当にごめん、大丈夫?」


 首をふるふるとして俯いていた。


「春来くんどうしたんですか?」


「え、えっとだな。安室ちゃんと腕相撲してだな」


「こんなに小さな子と腕相撲して勝ったからあんなガッツポーズしてたんですか? もしかして春来くん……弱い者虐めですか?」


「ぐ、待ってくれせっちゃん。安室ちゃんもな? 僕の弁明を……」


「……パン……」


「ん? どうした? もう一度大きな声で」


「明日もあんパン買って」


「買いますとも。買いますから泣き止んでください」


 あぁ、結果として彼女は泣き止んだ。そして、事の発端をせっちゃんにも説明した。


 納得した様子で安室ちゃんの手を摩っていた。


「もう……春来くんもっと手加減してあげてください」


「はい……」


 僕は怒られてしまった。いや、まぁ。当然の結果な気がしなくもないが少し納得は行かない。だが、この理不尽さとも付き合わないといけない。


 僕はまた少し成長した。


「ところで、春来くん? 安室さんと二人でお昼を取ってたんですか?」


「お、おおう。そうだな、途中でばったり会って一緒に食べてただけだぞ? てか、昨日の夕飯も一緒にファミレスでだな」


「……春来くん、私と別れた後、安室さんとお夕飯に?」


「おう、そうそう、偶然寮で出会ってだな?」


「もう、知りません」


 何故か、せっちゃんが怒っている。これは、何か弁明をしなければ。僕の唯一の大親友との絆が壊れてしまう。


「せっちゃんも今度一緒に飯を食う……か?」


 突然のお誘いに冬凍雪奈は驚いていた。


「一緒にご飯って言いました?」


「おう、ダメだったかな?」


「二人で一緒にご飯?」


「そうなるな」


「二人でデート!?」


「デート!? あ、そういえば人噛さんとデートに行く約束をしていてだな。なんせ経験が無い。どうしたらいいと思う?」


 僕はその後、せっちゃんにふんとそっぽを向かれて、お昼の時間が終わった。終わりのチャイムが鳴り響く。


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