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死を乗り越えた力  6

ガチャで爆死したんで、代わりに文才を下さい。神様


は?



ニチュニチュと薄気味悪い音が耳の周りを撫でるように木霊する。


「ぁ……がっ……めぇ」


首がひしゃげた忌々しくも睨みつける異形の存在。

月夜に照らされた灰色の翼を広げ、それに反した白く色褪せた肌。

両目は漆黒に染まり闇を見ているかのようでいて中には色素の抜けた青白さが光る。

――――魔族と呼ばれる種族。


「ハスイッ!!」


上空から魔法を放とうとしていた女の魔族が翼を閉じ急降下してくる。

それに対して痛々しくも取れかかる男の魔族の首を上空に蹴り上げた。


「くっ……!」


急降下する最中の突然の襲来に回避が間に合わず、男の首を弾き飛ばす。


「人間如きが……」


地上から見上げる爽の瞳が背筋をなぞるような冷たさを発していた。

更に深淵を除くような視線が女の魔族に集中する。


「な、なんだ!?本当にお前……人間か!!」


見上げる爽に向かって魔族特有の魔力を用いた濃密度の魔力弾を何発も打ち込む。

だがその魔法も――――今の東雲爽に対しては無意味と化した。


「あ……んがい……、魔族ッでのは……脆いな」


魔法を吸収してしまう【魔法の源収】による無効加、されど強力な魔法故に魔力を吸収すること自体に体が耐えきれず身体の血管が破裂していく。

だが再生速度が痛みを味わうことと同時に追いついていく。


「魔法が……私の魔法が消えた、だと?」


そのあっけにとられた一瞬――――頬に温かい液体が掠める。


「――――ッ!?」


いつの間にか背後に両足が潰れた(・・・・・・)爽の拳が背中を貫き、目にも止まらぬ速さで地面に直撃した女の魔族は、地面に体が埋まる。


「……ッつ!」


空中で拳を強く振りぬき重く拳に圧し掛かる“圧〟を叩くと、爽は衝撃でめり込む女の魔族に向かって高速落下し、いつのまにか再生により治った両足で更に奥へと踏みつける。


「……ハウザ」


四肢の三つを失うも、今だ意識が戻らないハウザの元へ這いずって近寄っていく。

薙ぎ倒れた雑草らの淡く色づく綺麗な緑は爽から流れる血液で真っ赤に染まり、まるで点と線を繋いだかのように真っすぐとハウザの元へ伸びている。


「頼む……目を覚ましてくれ。お前は俺の初めての友達なんだ」


気が付けば手足は再生を終え、横たわる小さい体を抱き上げた。

綺麗に伸びた白髪は魔法攻撃により毛先が焦げ、頬は赤黒く腫れあがる。

身体は幼女そのものだからこそ、初めて出来た友達だからこそ、その傷だらけの体を見ているだけで胸が締め付けられるように苦しくなる。


「ぁ……ハウザ、頼む。頼むから目を覚ましてくれ」


優しく、強く、その小さな体を抱きしめる。


「(脈は動いてる……無事でいてくれ)」


「少年!」


「…………おっさん?」


声を高らかに少年と呼ぶ声に顔をゆっくりと上げると、そこにはカイエルたち三人が甲冑姿で建ち並んでいた。


「なんでまだいんだ?」


「いやぁ……魔族に突然出くわすとは思ってなくな。腰を抜かしていたわ。っと……これやる」


「なんだ?この透明な液体」


「これはエリクサーって言ってな、回復魔法が使えない者が常備している最強の回復薬だ」


ごく少量の液体しか入っていないにも関わらず、しっかりと重みがありそうな大きさの瓶が目の前に差し出されると、


「これは俺からのお礼だ。マァザとカイエル、そして俺を……見逃してくれたな」


甲冑姿のファルがそう言った。

いつの間にか防具を身に着けていることにほんの少しだけ意識を持ってかれたが、カイエルが差し出すエリクサーを受け取る。


「マジか!助かるわ」


「あぁ!それじゃ俺たちは〈アグニ〉に戻る。事情はファルから聞くことにするけど、とにかく敵対したらヤバいってのは伝わったからな」


豪快に笑うその声に思わず笑みをこぼした爽の表情を見て三人ともどこか安心している様子で肩を落とした。


「んじゃぁな!少年ッ」


カイエルだけではなく、他の二人も手を振ってくれる。

その行動にどこか前世の日常(・・)を重ねてしまい、手を振るのを少し躊躇ってしまう。


「……またいつか、会えたらいいな」


「ふっ、そうだな」


三人とも胸に刻まれたエンブレムをなぞると、その場から一瞬にして姿を消した。


「(転移……したんだよな?)」


随分とイメージの違うあまりにもスマートな転移魔法に茫然としてしまうが、気を取り直して手に持つエリクサーをハウザの口元へ運ぶ。


「(使い方知らねぇけど、漫画とかだと飲んでるし大丈夫だろ)」


瓶のカンキャップを回し外し、ゆっくりとハウザ口の中へと流し込む。

一瞬だけ体が大きく揺らしたハウザだったが次第に効果が出始めたのか、透明な輝きがハウザを包み込み傷を癒していく。


「俺もこんな感じで再生してんのかな……」


目の前で傷が癒えていくハウザの姿を見て、ふとそんなことを考えてしまう。

最初のときから変わらず意識していなくてもいつの間にか(・・・・・・)再生し終わっている身体の損傷。

それは傷がついたことを治しているというよりかは、時を巻き戻しているかのようで――――どこか恐ろしいものを感じる。


「……そういやー、俺ってこんなに肌白かったか?」


ハウザと出会う前は基本的に外で生活をしていたせいか、もう少しだけ肌が日に焼けていたような……


「まぁ、今更気にしても仕方ないよなー」


死ぬことに、血を流すことに、痛みに慣れ始めてしまっている神経。

記憶を辿ろうにも最初に殺された記憶とついさっき死んだこと以外の記憶は曖昧に感じるものが爽にはあった。

異世界に来てからの出会いが運命的だったのか、それとも奇跡だったのかは分からない。

それでも【不死の吸収】による力を味わうことが出来たのはハウザに出会ってしまったからだ。

突然の出来事の重なりが運命を運び。

〝力〟と向き合う結果が訪れる。

普通に生きて生きた人間からしたら考えられない〝死〟という様々な局面は、爽にとっては既に当たり前のような――――それこそ前世で肌身離さず持っていたスマホのように当たり前の出来事になってしまっている。


「どうせ死なないしなぁ……あぁーあ、ここからどうするか」


爽は破壊の限りを尽くされた森だったものを改めて眺めた。

そびえ立っていた木々は根っこからなぎ倒され、長く伸びた雑草は衝撃と暴風によって剥げてしまっている。ハウザが住んでいた小屋は既に跡形もなくなっていた。


「とにかく直せるものはなさそうだし、魔族の二人を弔うか。火葬がいいかな……土葬がいいかな……、てか」


首と胴体が離れ、血の代わりに魔力を流し続ける死体。

地面にめり込んでしまっていて、身体が弓のように沿っている死体。

その二つを見ると、


「本当に死んでんのかな、こいつら」


どうも疑問が湧いてきてしまう。

〈アディベート〉に関する知識を入れ始めてたのは先程から、つまり爽自身には全く知識がない。

社会を知らない小学生が一人暮らしを始めるような感じなのだ。

人族と他種族の関係については学んだばかりであったおかげで簡単なことは理解できたが、種族の詳細はほとんど知らない。


「雑魚キャラなのか……それとも俺の力が強すぎたのか。まぁこれだけパワーレベリング(【不死の吸収】)が発動して弱いわけはないよな」


とにかく確認するためにハウザを抱えたまま、ある方向に歩いていく。

それはハスイと呼ばれていた魔族の首から上の部位が飛ばされた場所だ。

女の魔族が弾き飛ばした方向が見えていたから、たまたま記憶に残っていただけだったが以外にもそれは早く見つかった。


「――――あ、あったあ……った?」


「…………あのアマぁ!」


「うわ……首が喋ってる」


少し様子を伺うために、視線に乗らないように木影から眺める。


「あのクソアマぁ……普通に弾き飛ばしやがって!――――てか、音止んでるよな……大丈夫かなアイツ。うまく逃げてるといいけどよぉ」


「(ツンデレ野郎なんて需要ねぇわ、しかもお前顔こえぇし)」


もう正直なところ木陰から眺めることすら恥ずかしくなってくる。

首から下がないために動けないのか、出来るだけ周りを見ようと首を少しだけ動かしている。


「ったくよ……聞いてねぇぞ。魔力反応からしてハウザだったのによ、まさかあんな化け物がお出迎えなんて。イメイは無事なのか……魔族はそんな簡単に死なねぇから大丈夫だと思うけど、あの人間が聖属性か光属性魔法を使えるならヤバいぜ」


「(んぅ……見ているこっちが気持ち悪くなってくるな、そろそろ行くか)」


想像も出来なかった光景に表情が歪んでしまっている爽は、木陰から魔族の首の背後を取れる位置に移動し視認出来ない角度から頭を掴んだ。


「どぅわッ!」


「いや、驚きすぎだろ」


「その声……てめえ、イメイはどうした!!」


「はいはい、ツンデレ乙。お前がペラペラ話してたこと、全部聞いてたから」


「なッ!?」


「うるせぇな。今からそのイメイってやつのところに連れてってやるから安心しとけ……。こっちは男のツンデレなんて奇妙な光景見て具合が悪いんだから」


「うぉ、イデデデ!髪を持ち上げんじゃねぇよ、てめぇ」


「ハウザにお前がしたことだ。やるからにはやられても良いんだろ」


そのまま手持ちランプのように男の魔族の頭を鷲掴みにしたまま小屋があった場所に戻ると、地面から這い出ようとしているのか手が伸びていた。


「ほら見ろ。生きてんだろ?」


「あぁ……良かった」


「小声のつもりだろうが俺には聞こえてるからな?」


「――――おい、アイツには言うなよ」


「とうとう認めたかツンデレ魔族……」


先程まで感じていた残虐性はどこへ消えたのか聞きたくなるほどの感情の裏返し。

容姿的にも、言動的にも、残念ながら思い描くツンデレ像には果てしなく遠い存在のハスイを持ったまま、イメイと呼ばれている女が穴から這い出てくるのを待った。


「早くしてくれー、俺は両手が使えなくて手伝えないけどな」


あまりにも無責任な発言をしつつも爽は手が伸びている穴の方へ歩いていくと、ハスイの体が転がっていたので、


「(……再生されると面倒だしな)」


無慈悲にも蹴り飛ばす。


「んぐッ………!!おい、蹴っ飛ばすんじゃねぇよ!」


「神経通ってんのか」


「人間で言ったらな」


これで聞きたいことが増えた爽はハスイの頭部を地面に置き、穴から伸びている手を掴んだ。


「はっ!ハスイか!?頼む、引き上げてくれ」


「(コイツは馬鹿なのか……)」


力一杯に腕を持ち上げると筋肉の繊維が千切れる音が耳の奥で聞こえる。


「いッ……てぇな!!」


既に精神的な疲労が溜まっているからなのかいつもは表に出ることのない〝気合〟が溢れ出し、どこぞのCMのように大声を上げてしまう。


「――――おぉ、助かったぞ!ハ……スイ?」


すると、喜びを見せるイメイと目と目が合う。


「あんたの目当ては俺の足元に置いてるよ……」


ゆっくりとイメイの視線が爽の足元へ向かうとそこには地面にあまりにも雑に投げ捨てられたのか、ハスイが地面と面接をしていた。


「ハスイ!?ッ……この!離せ、人間!!」


「はぁ……いいの?落として。お前の翼は俺がバキバキにしたし、背骨だってまだ全然回復してないんだぞ。また穴に落ちても俺は助けないぞ?」


「あ……そうだった」


「(……最初の敵対心はどこに行ったんだ?それともなんだ?魔族ってバカなの、アホなの?)」


ゆっくりと地面に下ろすとイメイはすぐさまハスイの頭部を抱え上げ横たわった。

二人は生きていることに感動しているのか、二人とも楽しそうな表情で向き合っている。

まるで恋人のようなイチャつきにワザとらしくせき込み、話しを切り出した。


「ここからが本題だ、このクソリア充ども」


二人は『リア充』という言葉に首を傾げながらも爽と向き合った。


「ハウザと魔族について教えてくれ……俺はあいつの名前しか知らないんだ。お前らが襲ってきたのも何かしらの理由がありそうだしな。ここは穏便にいこうぜ」


話し合いに感情は持ち込まない。

これは他人との会合で必要なことだと誰かが言っていたことだと思い出し、二人と同じ目線になるために胡坐をかいた。


「……それはオレも同じ意見だ。正直、もう戦いたくねぇ」


「私もそれでいい」


「――――んじゃ、まずはハウザのことを教えてくれ」





バトルシーンって書く大変……

それが長くとも短くとも難易度が変わらないって、何てキチゲー?

想像したことが文字で表し難いものの一つだからなのかなぁ



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