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死を乗り越えた力  4

プリコネ最高

人国〈アグニ〉での傾向など全く眼中にない東雲爽は魔の森の最奥に足を運んでいた。

草が生い茂り、廃れた小屋へと真っすぐ伸びる小さな獣道を辿って扉へ向かいノックする。


「おーい、俺だぞー。入るからなー」


錆びついたドアノブを回し返事も聞かずに扉を開ける。


「……おい。まだ返事してないだろ」


そこには眉間にシワを寄せるハウザが座っていた。

小さな丸机に敷き詰めるように並べられた猪の生肉を見るに、今から腹を満たそうとしていたのだろう。


「いいだろ別に。もう半年もここに住んでたんだ、俺の家にみたいなところあるでしょ」


爽は図々しくも隣の椅子に座わり猪の生肉を手に持ち、かぶりつく。


「はぁ……で、何の用だ?」


「まぁまぁ、そんな嫌な顔すんなって。今日はお前に教えて欲しいことが沢山あんだからよ」


「それについては私も同じだな。神話級のアイテムを粉砕し、何食わぬ顔で現れ、馴れ馴れしい態度を見せる無礼者に聞きたいことが山ほどある」


確かに魔族であるハウザが人族である爽に聞きたいことあるのは御最もな話しだった。


「んじゃ。とにかく頼むわ」


「……頼む態度がなってないがな」


それからの話はとても潤滑に進んでいった。

この世界の名前。敵対する種族たち。まずは、一番知らないといけない情報から聞いていく。

それから〈アグニ〉で異世界召喚からこの世界に現れたことをハウザに伝え、目を見開き驚愕するも納得された。


「だからお前は無知なのか、シノノメ」


「あぁそうだ。召喚されて森に捨てられたからな、何ならここが魔の森っていうのも昨日知ったぜ」


その言葉に何も感じないわけではなかったが頷いている爽の様子を伺うように見つめるハウザだったが、ここが魔の森だということも昨日の王国騎士団から情報を抜き取ったと聞いたハウザは頭を抱えた。


「人族の王は浅はかで困る。毎度毎度とこの森に人間を捨ておって……いいか?お前は運がいいだけだぞ。普通ならこの森で人間は二年も生きていけない。理由は二つある。一つ目は私の研究材料になって死ぬことだな、私たち魔族は魔力を広げて確認することで人間の魔力を色濃く判別できる。お前は魔力が少なすぎて気が付かなったがな……二つ目は、〝魔〟に当てられる」


「あぁ……んと、それはここが魔族の領域だからか?」


「それも含めてだが人間というのは周りから受ける魔力の影響が凄まじいんだ。だから人間は武具に頼る、お前のように裸でいることはありえないんことなんだ。人間の魔力と違って魔族の魔力というのはとても強大で禍々しい。種族が違うというのもあるが、細胞のの一つ一つが全く違うことで魔族の魔力は人間にとって毒になる。これはお前で研究済みだ」


「へぇ……」


「へぇ……ってお前、本当に理解したのか?」


「してるしてる、大丈夫だ。ようやく理解(・・)した」


「ならいい。次は私の番だ、まず一つ。お前は何故死なない?」


「それは俺のアビリティだ。【不死の吸収】って力でな死ぬと再生するんだよ」


「【不死の吸収】だと……?」


「痛みに伴ってステータスが成長するらしい、んで体が損傷すると再生する」


「痛みに伴って……人間らしくない力だな」


「んだな」


ハウザの話し聞く限り、人間はかなり脆い存在だった。

防具の装着がないと魔力に当てられて死に至る。

武器を持たないと戦えない。

何より戦闘とし侵略するというよりも、妨害し防衛するという行動が多い。


「――――人間は圧倒的戦力で弱き者を殲滅していく、これまでの歴史ではお前のような異世界から呼び寄せた化け物たちが行ってきた。だが痛みに弱すぎる。私は数々の人間を殺してきたが、自分が死にそうになるたびに命乞いを始めたな……」


助けくれ

私以外の命をやる

代わりにこいつらの命をやる


「どいつもこいつも愚図ばかりだ」


たった数人だけが肥える世界、それは誰かに付き従うという傾向がある人間のみに許された特権である。

貴族は家族を豚にする。

王族は自らを豚にする。

民間人は補い合うが、国の上層のために削れていく。

これが今まで長い時を生きてきて見出した人間の醜悪……ハウザが忌み嫌う人間というそのものの根源。


「そう……だな」


「ふっ、全員がお前のように変われる人間なら少しはマシになるのにな」


「無理だろそれは。俺は力があって死ねる、でもその他の人間は違うからな」


ハウザが目の前で物思いに更けているようだったが、日本という国で生きていた十五年で人の汚いところに関しては誰よりも感じることがあっただろう。

家族に捨てられた。

孤児院では虐待にあった。

たらい回しにされた結果にたどり着いた遠い親戚の家では居場所などなかった。

人を信じることが出来なくなったのは何も異世界(ここ)に来てからではない。


「俺が変われたのは結局のところこの〝力〟があったから。ハウザには……まぁ数えきれないくらいには殺されたけど、開き直ることが出来たのは俺には〝何もない〟からだ。気が狂ってようと誰にも迷惑はかけないだろう?精神が壊れないのだって……俺が病持ちでロマンに出会えたってのも大きいしな」


「なんだ、お前……病気持ちだったのか」


「そうだ。中二病っていう異世界の陰の存在が持つな。しかも治すにはそれはもう尋常ではない精神力がない限りは振り払うことは無理だ」


「そんな恐ろしい病があるのか。少し興味が沸いたぞ」


「大丈夫だ。もう既にこの〈アディベート〉にいるやつらは手遅れ……残念だけど治療はできない」


「なに!?」


「まぁ安心しろって、別に体に害があるわけじゃない。ただ俺がいた世界では死んでいるけどな」


「…………難しいな」


「ぷっ……ぐぅ、アハハハ!!もうダメだ、無理無理」


「ど、どうした……まさか!中二病とやらが――――」


腹を抱え笑い転がる爽に驚き思わず声をかけるハウザの心配そうな表情に少しの罪悪感を覚えながらも、落ち着きを取り戻したあと〝中二病〟について深く教える。

それでもまだ理解が出来ない様子のハウザに爽自身が困惑すると――――ハウザが小屋の外に視線を向ける。


「おい、誰か来るぞ」


生い茂る雑草を踏みつぶすように歩いている様子で、カチャンと金属が擦れる音が聞こえる。


「ハウザ……隠れてろ」


「相手は人間だぞ?隠れる必要がどこにある」


扉に近づく足音に対して好戦的な態度をとるが、


「いいから」


身体の小さいハウザを押しのけ扉の前に立つ。


「王国騎士団のやつらだ。だいたいの条件は当てはまるし、俺はお前とは違って人間だから穏便に済むと思う。だから隠れてろ」


「ならせめてこれを持て」


ハウザから渡された剣には見覚えがあった。

何度も肉を抉り、切り裂き、突き刺された〈虚無の剣〉だ。


「今度は鞘がついてるんだな」


気安く刀身に触れると体を消滅させられるので触れることはない。


「なに言っている。いいから受け取れ」


「いらん、俺は剣を使ったことはない。かと言って拳を使ったこともないけどな……だから上手いこと話し――――」


最後の言葉は言えずに、背中に激痛が走ると同時に小屋が暴風によって吹き飛ばされた。


「いッ……!!」


ハウザの目の前に立っていたこともあり、盾にはなれたが危うく痛みで意識を持っていかれるところだった。


「な……――――魔法が」


突然の魔法の消失にハウザも混乱している様子だ。

正直、アビリティの力を知っている自分でも驚いてしまった。


「(魔法か……)」


ただでさえガタが来ていた小屋に容赦ない一撃。

形のない無固形な衝撃。


「人間ってのはこうも落ちるんだなぁ」


あまりにも無慈悲な先制攻撃が遠距離の魔法攻撃。

その事実に先程の会話も相まって、冷静になった。


「カイエル……だったか?」


視線の先には甲冑姿の三人が、炎を纏い構えていた。

後方では弓を構え。

その更に後ろでは上を構え。

先頭には両手剣を構える。


「……少年。お前――――」


「待てや、俺の返事を聞いてねぇ。お前がカイエルか?」


構えた両手剣を地面に突き刺した先頭に立つ男が首を縦に揺すった。


「どういう了見かは検討がついてるけどな……流石にこれはゴミだわ」


俺が一般人なら死んでいた。

ハウザの前に立っていなかったら傷がついていた。

何よりもここに住むハウザの家はほぼ決壊した。


「別に正々堂々とは言わねぇ……んでもお前ら騎士なんだろ?」


内側から沸騰する怒りに当てられたのか体が熱くなる。


「な、なんだ……この魔力は」


「カイエル!!下がれ!!」


弓を構える男が叫ぶと同時に、隣に立つ魔法を使う男がまた同じ暴風を巻き散らす魔法を唱える。

が……その魔法は儚くも消えた。


「なッ!?」


「俺の知る騎士道ってのは背後から奇襲する邪道じゃねぇぞ……」


あの時――――この小屋から飛び出した時よりも更に力を、足元に込める。

その瞬間、爽の姿が残像を残して消え、


「俺は異世界に――――」


「……あ」


音もなく(・・・・)カイエルの視界を汚したのは大量の鮮血。

そして、


「酷く失望したところだ」


痛みの感じない――――重すぎる一撃であった



ガチャでの爆死はなかったですが、あまりにも運が良すぎたので書いてしまいました。

読んでくださってありがとうございます。

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