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死を乗り越えた力  3

ゲームの進化形態が分かれてる理由を考えた。

「なんで分かれてるんだろう?」

結論はスマホを眺めているうちに、徐々に解決していった。


全部の進化形態の集合体を作ってしまったら最強になっちまうや!


変に納得したあと俺はアル○トリオンを武器化した。

じわじわと脈が跳ねる。

体中に血が通う感覚が緩やかに意識を覚醒させる。


「ん……ぁ、そうか」


熱帯でもない森林のそよ風が湿気の詰まった熱気を運ぶ。

上半身に服を着ていないからか、背中がささくれでむず痒い。


「懐かしいなー、この感覚」


森の最奥へと足を進める前の自分が味わっていた感触が懐かしく感じるのは不思議な心地だった。

それほどハウザとの死生活が長く感じられたのだろう。


「そういやー、ハウザのところに行かないとな。また戻るって言ったし」


身体をゆっくりと起き上がらせ体を優しく動かしながら外に出る。

太陽が辺りを照らし、地面のぬかるみを素足で感じる。


「その前に色々と確認しよ……」


唐突な異世界への召喚から異常なスピードで年が過ぎ去り早二年が経った。

これまで起きた出来事は多くはないが内容がどれも濃密で、何より異世界生活でのこれからのことを考えないといけない一心で昨晩は目を瞑りながら考えていた。


「まずはこれまでと同じく食料の調達、あと今の俺の体がどれくらい力があるのかだな」


何度も確認した自らのステータスにはどこもかしこも異常なアビリティばかり、加えて能力値に変わりがない。

だが【不死の吸収】の一文にはステータスの成長は出来ないと記されていた。

この矛盾を解決する策が魔の森にあるとは思えないがとにかく確認しないことには始まらない。


「いつも通り、いつも通りだ……ゆっくり確認しよう」


不思議と懐かしく感じる獣道を歩きつつ、知っている木の実や植物を頂戴する。

アイテムボックスなど高機能なご都合はないので制服のズボンにパンパンになるまで詰め込むという荒業の末、入りきらなくなったら一旦帰宅する。

次は自然動物の捕獲。

角の生えたウサギや群れで行動する狼などは確認できず、存在しているのは普通の動物だった。

それこそ普通に山奥に住んでいそうなイノシシやクマといった大型の猛獣から、野ウサギ、リス、ウリボー、そして川に生息する魚類たちが主な主食。


「今回はどうするかなー」


前までならば体力を使ってまで自分よりも弱い存在を狙っていたが、今の自分は違う。

高速で動くことはもちろんのこと、空中ですら移動可能だ。


「今なら勝てるんじゃ――いやいや、いつも通りって決めたろ……」


ふと考えてしまった勝てるビジョンを振り払い、決して調子には乗らず普段通りにまずは野ウサギを探索しに森の中を歩く。

目を凝らしながら足音を極力抑えての行動。

だが、何故だろうか。

動物の気配がしない――――


「……まさかあの騎士たちが?」


甲冑を身にまとい装備も潤沢、中には弓を構えていた者もいたので狩りには適格。


「本当にそうか?アイツら国から来たんだろ……捜索が一段落したら帰るだろ普通」


カイエルと名乗った一人の騎士が言っていた言葉に嘘はないだろう。

それなら国が転送までしてここに行かせない。


「国王が会社の社長だとすればあんなに簡単に名前を使えないだろ、それにスリーマンセルのパーティー。野宿するならテントと食料くらいは容易するはず……」


目的が分からない。だけど探しているのは俺だ。

レアリティは(ノーマル)だって言ってたしな……


「ってことは〈アグニ〉で問題があったのか……それとも戦力として必要になったか。まぁ、どっちにしても戻る気はないけどな」


一度は捨てられた。

異世界に来て、何もされずに捨てられたんだ。

誰も助けには来ない。

人間は一人もいない。

この世界について何も知らない。

想像以上の恐怖と不安が心を蝕んでいく感覚は胸が痛くなった。


「…………俺は普通に生きていこう、別に一人は嫌いじゃないし」


これまでの二年間。別の世界で生きていると感じさせていたのは〝死〟という確かな事実のみ。

場所だって、見える光景だって、何一つ変わらない。ただただ死んで、いつの間にか再生されるというリボーンの繰り返し。

それが東雲爽という少年に異世界という存在を実感させていた。


「あっ、でも冒険者とかあったら金を稼いで静かに暮らすのもいいな」


独りだと言葉が多くなる。

それは独りでいることを誤魔化したいからではない。

独りでいることで、勝手に周りのものが増えていくのだ。


「しかし見つからないなー、ハウザのとこに行ってイノシシ貰えるかな」


たった一人の少年は一切の憂いを見せることなく奥へ進んでいく。

木々のせせらぐ獣道を堂々と静寂に。

太陽が照らすことの出来ない昏い場所に向かって――――





人国〈アグニ〉――――

都会のような高層ビルなどないものの町並みは絢爛とする人の国。

出店が並び広場は市民で賑わい、老舗が建ち並ぶ場所では職人らが丹精を込めて造り上げた装備を騎士や魔導士らが吟味している。


「今回のダンジョンはどうだった?」


「私はレベルが上がって新しい魔法が使えるようになったわよ」


「私はアビリティのレベルも上がりました。レベルもここ数ヶ月上がらなかったんですけど、今日は二つも上がっちゃいましたよ」


「……俺は特になにも」


「シュウは今回も収穫なしか……まぁ次に期待だな」


「それもそうでしょ。シュウはこの国で唯一のレアリティ上限突破の男よ?そう簡単にレベルは上がらないって」


噴水が飛沫を上げ水を滴らせる音を聞きながら四人組の男女がフードコートで会話をしていた。

全員が黒い髪で黒い瞳。

装備も周りにいる騎士とは比べる間でもないオーラを漂わせている。


「シュウさん、どれを頼みますか?」


「パエリア」


「分かりました。いつものトッピングでいいですね」


「俺たちもいつもので頼んでくれ、レイ」


「わかってますよ」


馴れた手つきでメニュー表に魔力を流し厨房に送るとゆったりとした言葉使いの女が、隣に座るシュウの伸びた髪を耳にかける。


「シュウさん。焦らず行きましょうね?私たちも一緒に頑張りますから」


「そうだぞシュウ。あと半年で三年になる異世界生活で俺はお前に助けられまくってんだ、ゆっくり成長していこうぜ」


「あ、あぁ。ありがとう」


「…………あまり考えすぎない方がいいわよ。もう私たちしかいないんだから、ちゃんと生きなきゃダメ。他の七人のことを思うならダンジョンを攻略して、その種族を滅ぼしてやりましょう」


「そうだよな……いつまでもクヨクヨしてらんないよな。ありがとなメイカ」


「え、俺は?」


「もちろん感謝してるよリョウ。俺だってお前に何回も助けてもらってるんだ」


ジメジメとした嫌な空気が漂うような会話が終わると厨房から数々の料理が飛んでくる。

それを笑顔で受け取り全員で食べる。


「(一体いつまで俺たちは戦えばいいんだよ……)」


この料理の味は変わらない。

数多の異世界召喚を繰り返し人族以外の侵略を食い止めて来た者たちが広めて来た様々な国の料理。

中華、ロシア、アメリカ、日本。どれも一般的に作れるものばかりだが口に合うものばかりで初めて食べたときは感動すら覚えるほどだった。

それでもこの世界――――〈アディベート〉に来てから生活が変わらなかった。

世界に四つ存在するダンジョンの一つである「天魔の番楼」も攻略。

獣人という亜人種たちとの抗争。

エルフなどの精霊族の制圧。

魔族との戦争。


「(何一つ……何一つ変わらない)」


〈アディベート〉に召喚される前まではただの学生だった者たちは、全員が戦士に変わった。

最初は生き物すら殺せなかった者でも躊躇なく他者を殺せるようになってしまった。

全ては〈アグニ〉で生き抜いていくため。国王のためだと戦い……死んでいった。


「そういやー、カイエルたちがやってる人探しはどうなったんだろうな」


大きなハンバーグを丸々一つフォークで突き刺し一口で食べながらリョウはそういった。


「おいソースついてるって」


シュウは口の両端についた料理長特製のバジルソースをいつものようにふき取ると、メイカがため息を溢しながら、


「今日もまた魔の森に行くんでしょ……あの男を探しに」


嘲笑を含んだ口調のあとマルゲリータの一枚を齧る。


「でも気になりますよ。捨てた〝ノーマル〟を探しに態々魔族の領地に向かわせるなんて」


レイは味噌汁を啜りながら確かにと思わせる疑問を投げた。


「此間のウェアウルフ種の獣人たちと戦ったときに大事な戦力がなくなったから足しにしたいんだろ。〝ノーマル〟でも壁にはなる」


「おい……そんな言い方すんな。俺みたいにレアリティが上がって強くなるかもしれないだろ」


「いやーそれはないでしょ。ていうかもう死んでるんじゃない?レベルが【1】の状態で魔の森に捨てられたのよ、しかも(ノーマル)ならアビリティだって無いかもしれないじゃない」


シュウは例外中の例外よ。と付け加えてメイカは〝ノーマル〟に関して興味がなくなったようだ。


「(……そうなのか?アイツがそう簡単に死ぬのか?)」


最初の出会いがフラッシュバックするように脳裏で弾けた。

円を囲むように横たわる学生服を来た十一人の中で真っ先に目を覚ました男の姿が。

後ろ姿しか見ていないが背中からでも伝わる冷静な瞳が。

隣に立っていたリョウを見る冷たい目線が。


「どうかしました?シュウさん」


いつの間にか瞼を閉じて思い更けていたようだ。


「いやなんでもない、それよりご飯食べて王城に戻ろう」


自分の脳裏に過ぎる映像を掠めるために頼んだパエリアを大量に頬張るシュウに、笑いながら早食いを仕掛けるリョウ。

それを見て二人が笑う。

この笑顔のある食卓はそうは長くは続かないと誰もが感じながら味を噛み締めて囲む。


「(いつか俺が平和な国を作ればいい……そのためにも頑張ろう)」


異世界に来てから心が休まらないのは不安があるからだ。

なら自分で切り開くだけ――――平和な未来を……

その決意はとても深いところまで沁みていった。




「して……どうだ。成果は」


王の間。そこには三人の男女が腰を下ろしていた。

王国の紋章である炎を纏う剣――フランベルジュのマークを胸に付けた筋骨隆々の男たち。


「はっ!今のところ上げられる成果は見出してはおりません。ですが……一つ気になることが」


国王へ献上する情報の少なさに少し気落ちしつつも、記憶に新しい出来事を上げる。


「何だ?」


「私たちパーティーは昨日、魔の森にて不思議な少年と遭遇いたしました」


「なんだと……?」


「年齢は十六になるかならないか、腰まで伸びる長髪で白髪が混じる黒髪でした。身長もそれほど高くはなかったのですが……空を飛んで来た様子で」


「魔導士か?」


「いえ。魔力の流れは感じることはなかったです」


それを聞くと国王は口周りに生える黒ひげを擦りながら唸り鳴らした。

魔族の領域の外れにある魔の森に一人の少年というキーワード、国王の頭に浮かぶ少年は一人しかいなかった。

異世界召喚の時に〝外れ〟と言って捨てた少年――――


「(まさかな…………)」


「国王様、もう一度我々に捜索の許可を下さいませんか?」


「よかろう。その少年について、そして魔の森で蠢き続けた魔力について調査を頼む。カイエル、マァザ、ファル、こちらに」


「「「ハッ!」」」


国王の前に三人が並ぶと胸の紋章に触れる。

するとカイエルたちの体からは湧き上がるように炎が揺らいだ。


「転移魔法の用意は昼食後には終わらせておく。頑張るのだぞ」


「全てはこの加護の……国のために」


三人は膝をつき胸に手を当てる。

〈アグニ〉への貢献と国王への忠誠を誓うと、一瞬にして王の間から体を弾き出されるように強制転移させられる。


「あぁ……この感覚には馴れんな」


マァザが首の骨を鳴らしながら呟いた。

それに乗っかるようにファルも頷いた。


「英雄の一人、天童魔導の特殊術式らしいが……私たちには理解できない」


カイエルが王の間に繋がる扉を見上げながら二人に聞こえる声で呟くと、ファルがいつものように冷静に、


「メイカ様か。あの英雄たちは異世界から召喚されてきたからな、きっと天地が激動するような力をお持ちなのだろう」


カイエルに言葉を返す。

だが、どこか煮え切らない態度のカイエルに首を傾げる。


「どうかしたか?」


「ファル……お前はどう思った?」


「取り合えず、昼食を取りながら話そう。マァザも行くぞ」


王城一階に広がる食堂までは他愛もない訓練の話や家族の話で盛り上がる。

王城には各階に二ヵ所、メイカの貼り付けた転移魔法が存在する。

それぞれ上り下りが出来るものでとても快適に階層の移動が可能だが、魔力のないものは使用できず三人のうちのファルとマァザが魔力がとても少なく使えないため階段で移動する。


「あらあら、カイエルさんたち」


食堂の調理場にはファルの婚約者であるアーリーが働いていた。


「アーリー、カレーを」


ファルがそういうと他の二人も同じのを頼む。


「大盛りでいいの?」


「〝超〟大盛りだ」


「はいはい」


とても気持ちのいい笑顔をアーリーは三人に向けるとマァザがファルの脇を肘でつついた。

その表情はからかっているようにも見えるが、全く違う。

「これで今日の任務は死ねなくなったな」そう言っているのだ。


「分かっているさ、私は何かを残しては死ねないよ」


「男らし過ぎて女だったら惚れてるところだ」


カイエルは先にアーリーからカレーを受け取り、三人が囲めるテーブルを確保しに行く。

続いてマァザも隣の女性からカレーを受け取り、


「俺には奥さんがいるかな……すまんが惚れることができない」


「……惚れなくていい」


ふざけた言葉を残してカイエルの元へ歩いて行った。

すると、アーリーが笑顔で迎える。


「私の婚約者はモテモテね」


「ふっ、女冥利に尽きるだろ?」


「えぇ。最高に嬉しいわ」


超大盛のカレーを受け取ったファルの頬にフレンチキスをし、頬を赤らめながら、


「ちゃんと帰ってきてね?」


その表情を見るとファルは優しい笑みを浮かべながら頷き、カイエルたちの元へ歩いて向かう。

その背中からは尋常ではないほどの闘気が溢れていた。


「さ、話しを再開しよう」


「……あの少年のことだろう?」


「そうだ。マァザは狙いを定めていたが、どう感じた?」


「あれは……同じ人間って感じはしなかったな。それに不思議だと思うくらいに何も感じなかった」


「五年前か――――」


「カイエル、あれは嘘だと思うぞ?あの少年……残念なくらいに誤魔化すのが下手くそだった」


五年前(・・・)という言葉で少しだけ憂いを秘めた表情に変わったカイエルだったがファルが嘘だというとあんぐりと口を開けた。


「だ、騙されたのか」


「騙した……とはニュアンスは違うかもしれないな。それでも五年前というのは嘘だな。あの少年が五年もの歳月を生き抜いていたなら〝魔〟に当てられて魔人になっている可能性がある」


「本当に人間ならな」


カレーを口一杯に含ませながらマァザが呟いた。


「……今日の目的としてはあの少年に会いにいくことなんだが」


「「賛成だ」」


カイエルの言葉に二人が一緒に同意した。


「とにかく向かうは魔の森だ。油断せずにいこう」


「「了解」」


あとはカレーをゆっくり胃へ運び、大満足するだけだな。

そんなことを思いながらカイエルはカレーを口にした。


「上手いな」



なんだかんだ書いてしまってる。

これはガチャで爆死するのが悪い

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