終章 王の物語
友達がいない人が全力で誰かを助ける話し。
読み取る感情は人それぞれでも、ただ読んでいるだけでは読み取ることの出来ない思いを詰めたつもりです。
大気が震えた。
〈アディベート〉の上空を伝って響いた衝撃は、全大陸の生物を震撼させた。
「――――〈インドラ〉から瘴気が消えた」
魔力の扱いに最も長けた精霊族の王は一人でにそう呟いた。
「うぉ!?」
どの種族よりも身体能力が長けた獣人族の王の耳を劈いたのは魔力が生んだ衝撃音。
|雲一つ〈・・・〉なく、星々がより一層輝く日が落ち始めた空を見上げる。
「……あの人族って」
獣人族の大陸〈エスターク〉から魔族の大陸〈インドラ〉へ潜り込んでいた獣人の少女は目を見開いた。
もういつの日か思い出せないほど前の記憶が、天を隠すように敷き詰められた黒雲を吹き飛ばした一人の存在によって蘇った。
「確実に首と胴体を切り離したはずなのに――――どうして」
たった一人で魔の森を探索している様子だった人族を背後から斬首したのは意外にも記憶に新しかった。
人族の衛兵たちが魔の森に一人の人族を捨てに来た時から、標的にしていた哀れな人間だった。
表情や容姿をよく覚えているわけではないが、
「あの人族の匂い……間違いないよね」
絶望と望みが混じる混沌の香りが獣人の嗅覚を掠めた時は、人族だとは思いもしなかった。
だからこそ人族だと分かった時には「勝てるな」と思い……結果は瞬殺だったはずなのだ。
「……早く帰って報告しなきゃ。一人で魔族を圧倒出来てしまう人間が現れたってことを――――――――新たな〝王〟の誕生を」
◆
濃密な時間がかかったわけではないが、脳みそに直接刻まれたかのように記憶した思い出だったと言えるだろう。
これまでの苦悩や経験も必要だったのかもしれないと思わされた。
「さぁ……ここからどうするんだ?シノノメ」
「あぁー……まずは服が欲しいよね」
魔の森の最奥付近にある小さな小屋には三人の影があった。
黒と白が入り混じる歪な人間。人間にしか見えない容姿の魔族。爽の容姿を女性に変えたような純日本人の姿をした魔精霊。
まるで家族に見えなくもない三人の姿は、とても微笑ましいものであった。
『その前にご主人様の姿を変えた方がいいかと思うけど?』
「……何も能力は使ってないんだけど――――」
死んでしまうと強制発動する【不死の吸収】は仕方ないとしても、その他の能力は何も発動させていないのだが、体の半分が魔族よりに変わってしまっている状態の爽は白が混じる髪の毛を持りながら苦笑する。
「まぁ人族だと分かられてしまうほうが面倒だ。何なら好都合かもしれないぞ?」
ハウザは微笑したまま隣で座っている。
全てが終わってから三日が立ち、新しい魔王も決まって随分と平和な時間が流れている。
太陽を隠していた黒雲は〈インドラ〉の上空になく、雲一つない晴天が大地を照らしていた。
『ご主人様はこれから異世界を満喫しにいくんでしょう?』
「おう。別に元の世界に帰りたいとか思わないしな」
「〈アグニ〉へは行かなくてもいいのか?きっと〝新たな王の誕生〟とかで話題に上がってしまっているぞ?あの騎士団に口を噤ませたが、もうそれは意味を成してない」
「いやいいよ。俺が強くなれたから平和があるなら、それでいい。取り合えずは自分の周りを守れるくらいには強くなったつもりなんだけど……どう?」
「ふふっ、あはは!!お前の王ならばしっかりとしてくれ、魔族を一人で壊滅寸前まで追い込んだ人間の発言とは思えないほど弱々しいな」
「そ、そこまで笑うことないでしょ」
『というかご主人様はさ、いつになったら服を着るわけ?』
「だから今から探しに行くんだろって!!」
「ならちゃんとした服装をしている場所にい駆ければならないな……」
「おいッもう服の話しはいいだろ!」
「なんだ、もういいのか?せっかく精霊族の場所について説明してやろうと思っていたところなのに」
「え!?それを先に言えって」
「ふふっ、ならば今すぐに準備したほうがいい。精霊族はこことは正反対の大陸に存在しているからな」
「……分かった。もう何でもいいから連れて行ってくれ」
隠されたフラグ。
まだ全く回収しきれていないんだよなぁ……
調子に乗ったらまた書き始めるかもしれない




