レアガチャ転生もアリでした 6
あぁ……次で最終回かな。
読んでくれた方たちは、この作品をどう思ったのかな?
あまりにも遠回しすぎて理解されていない可能性が高すぎ謙信って感じですわ
誰とも上手く関係は築けなかった。
会話も回らずに一言での応答が基本。
親も物心つく頃にはおらず、代わりにいたのは子供でも察してしまうほどの悪意を持った三人の家族。
ご飯を一緒に食べたことも、一緒に遊びに行ったことも、家族のような朗らかな会話もしたことがない。決してどこにでもいるような『普通』の家庭では育ってはいない。
――――なら、中卒で働けば良かった。
本当に高校に行けなかった中卒で働いている者たちは口を揃えて言うことだろうが、何度でも言おう。
決して『普通』の家族ではないのだ。
高校に行かせたのは高給な職業に就かせて、給料を毟り取って自分たちが楽をするため。
今まで生かされていたのは〝本当に死んだら面倒なことになる〟から。
本当にどうでもいいからこそ、まともに生活させて、後に垂れ始める甘い蜜を啜ろうとしていたのだ。
他人が怖くなった。
他人が向ける意識に敏感になった。
他人が意味もなく行う行動に視線が向かうようになり、自然と他人を避けてしまう方向へと変わっていき、挙句には他人と会話することが無くなった。
〝孤独〟と共にいると〝寂しさ〟に馴れる。
どんなことにも興味を持たなくなり、視界に映る景色には色があるのにモノクロに見えてしまうのだ。
そんな中で縋るための存在を探してスマホのアプリゲームに出会った。
会話こそ出来ないが〝どんなことをしても自分に答えてくれる〟。
優しさこそは味わえないが〝どんな時でも一緒にいてくれる〟。
常人には決して理解が出来ないであろう心の安らぎが、画面の中だろうと常に傍にいてくれる喜びが、いつものい日常に色を付けてくれたからこその〝今〟がある。
異世界という幻とも言える世界に迷い込んだ。
弱い者は捨てられる……あまり元いた世界と変わらない人間たちに最初は絶望した。
死ねば強くなれるという馬鹿馬鹿しい力を手にしては後悔と嘲笑を自らに向けた。
他人のために――――――――なんて、無理だと思っていた。
だが、転機は急にやってきた。
魔族の少女〝ハウザ〟と出会ってしまったのだ。
最初から非日常的な生活ではあったが、誰かといるという喜びをくれた。
あぁだ、こうだ、それだ、これだ。とは言ってはいるが死なないことを大前提に持ってきても常に一緒にいた〝家族〟のような存在がハウザなのだ。
「俺にとっての一番大事な存在だ……」
二日前――――魔族が襲撃してきたあの日に言った言葉。
未だに眠りついたハウザを狙いに来た魔族を退けるために……
ハウザと出会ってから色んな出会いがあった。
ひょんなことから魔族に修行をしてもらった、以外にも素直で良い奴が多い。
魔力に関して修行をつけてくれたのはイメイという魔族だった。
魔族が襲撃してくることを伝えてきてくれたのはハスイという魔族だった。
「裏切り者は死んで当然だろう?人族と繋がりがある魔族など……持っての他だ」
悪魔らしくない十字架に張り付けられた男女の姿。衣類を切ることなく生まれたままの姿ではあったが額を歪ませるには十分すぎるほどの損傷を受けていた。
「ハウヴァート・ヴァレインも捕らえ次第こうなってもらう」
初めての魔王との会話は今でも耳に残り、脳裏にこびり付く。
人間である自分と友人のように会話してくれた二人は息をしていない、体内に存在する魔粒子が流れ始めて黒い雲海に吸い込まれていくようにも見えた。
「やれ……デイディ」
荒れた〈インドラ〉に対しての皮肉すら感じる女性の長く整えられた黒にも見える程の深い緑の髪が揺れると、二人が貼り付けられた十字架に向かって魔力を注ぎ込むと――――――大きな大樹となった。
綺麗な緑色の大樹は鮮やかと言えるほど朽ちていき腐敗する。
「〈インドラ〉の養分にしてやるんだ。寧ろ感謝して欲しいくらいだな」
魔王の口角が厭らしく上がる。
デイディは口元を抑えながら肩を震わせている。
ヴァガイは瞼を落とし、手の平を合わせている。
背後に立つ軍勢は魔族特有の|能力〈アビリティ〉である【悪魔化】を発動した状態での臨戦態勢。
「さぁ……人間。蹂躙してやろう」
こんな奴に負けたくない――――――――そう思った時から既に意識が薄れていった気がする。
嘘も方便。言葉遊びで「殺す」などと言ってみたけれど、視界に映る全ての魔族を見ていると苛立ちが抑えきれなくなっていったのだろう。
生きてきて他人を殺すことはないと思っていた。それこそ殺意はあれど〝本当に実行する〟なんて思ってもみなかった。
「やれるもんなら……」
一歩。数えきれないほどの敵に近づいた瞬間――――「あぁ、俺は|魔王〈こいつ〉を殺さないといけない」
そう確信出来た。
◆
最後の理性が押しとどめていた殺意が体現されようとした。
本能と理性が一致した瞬間。
「死ね……」
周りにいる全ての魔族は茫然とした状態で立ち尽くしている。
生きている存在が考えることを止めてしまう程に有り得ない出来事の連続が、たった十数分で起こってしまったのだから当たり前だろう。
あまりにも一方的な蹂躙。
決して無抵抗ではなかったのにも関わらず、魔王はボロ雑巾のようになっている。
対して人族である爽は|無傷〈・・〉。
本来ならば逆転していたであろうと思われるその光景は【不死の吸収】によって覆り、〈インドラ〉そのものによって確約された。
魔〝王〟であっても【不死の吸収】によって無意識的に吸収され続けた〈インドラ〉自体の魔力には抗うことすら出来はしない。
数多と朽ちていった魂の塊、魔族だからこそ魔粒子となって〈インドラ〉へと帰っていく。
例えるなら……極刑を下された魔族の魔力が爽に力を貸してくれているのだ。
「【魔神撃】」
一体どれほどの魔力を収束したのか……
ゆっくりと振り上げた拳は魔粒子が纏わりつき、その場にいるだけで足が竦むほどの圧力を感じる。
「……誰も止めないんだな」
静かすぎる周りを見渡すと視線が飛んだ魔族の表情がよく見える。
どこを見ているか伝わらない茫然とした瞳はこちらを見ているのかすらも分からない。
「じゃあな」
構えた拳を振り下ろそうとした瞬間――――――――
「待て、シノノメ」
強く握られた拳が誰かに触れられた。
横目に映る白く輝く毛先、つい先ほど聞いた声が耳元で響いた。
「……誰なんだよ、あんた」
知らずうちに協力関係を結んでいた一人の魔族の女性。
名前は――――――――
「ハウヴァート・ヴァレイン。そうだな……お前に名乗った時には〝ハウザ〟と名乗ったか?シノノメ」
「は?」
魔王の首を掴んでいた腕から自然と力が抜けていくのを感じた。
「本当に馬鹿なヤツだな、お前は。碌に私を見ようともしないで一人で戦って……起きた時は流石に焦ったぞ?近くにいたのが魔精霊だったからな」
「い、いや。その前に何でここに……」
「お前が〝殺す〟ことを止めに来たに決まっているだろう?」
力が籠る拳を優しく解きつつも、首に手を回して抱き寄せる。
「私のためか?ハスイのためか?イメイのためか?まぁ、何がどうあれお前を止めに来たんだ。死んでも死なないお前なら死ぬことの恐ろしさを良く知っているだろう?」
「……でも――――」
「でもではない。私がお前の隣にいる限り死んでもいいのは|お前だけ〈・・・・〉だ。そのボロ雑巾がどれだけのクズだろうが、裁くのはシノノメ――――お前ではない。全く……危うくもう三日目に入ってしまう。帰って一緒に休もう?」
「だけど|魔王〈こいつ〉はまたお前を狙ってくるかもしれない。そうならないためには誰かがやらないといけないだろうが……」
「近いうちに魔族だって全てが変わる、今頃は新たな〝魔王〟が決まっていることだろう。お前はお前がやるべきことを済ませるんだ」
「やる……べきこと?」
「お前はたった一人で魔族の軍勢を跳ね返した――――――いや、魔族を壊滅させた男だぞ?狙われなくなる方法くらいいくらでもあるという訳さ」
未だに力が籠る拳を空に向ける。
「ほら……本気でやれよ?〝ソウ〟」
訳も分からず雲に限りなく近い場所まで飛ぶと、ハウザの声が響く。
「派手にやれッ!!新たな|王の誕生〈・・・・〉だということを!!」
空が割れ太陽が顔を出していた晴天は黒と赤が混じる空へと変貌していた。
空が綺麗ならば今頃は異世界の星を見ることが出来ただろう。
「ははッ……そういうことかよ!!」
魔王に放つために溜めた莫大な魔力を存分に放てる最高の環境。
目に入ったのはまだまだ空に浮遊する漆黒の雲海。
「ハウザ!!今日は星が見れるぜ!!」
力一杯に振り抜いた漆黒の魔力を纏う拳が一閃、未だ微かに明るい空に走った。
その瞬間――――――
「ふっ……新しい王の誕生に相応しいな」
〈インドラ〉の上空に執着する黒く禍々しい雲海は消滅した。




