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レアガチャ転生もアリでした  4

待っていた方々。

ようやく、ようやくネット回線が復活したので書き納めました。

全く……災害を呼んでくる令和ちゃんには困ったもんですわ



慈悲のないただの暴力。形のない恐怖。理解不能な物理的強制力。

視界に映る世界を木っ端みじんにしてしまう強力無比な億撃。

それがハウザが持つ一つの能力「無拍の空断」の特徴であり、最大の力。

瞬く間に世界を破壊する一撃に誰が耐えられるだろうか?

一瞬の隙もない、ただ能力を解放すればそれこそ無限に破壊することが可能な理不尽さ。


「……だ……うぶ、か?」


「問題な……い」


魔素が存在する環境であれば無限に生存を可能にする魔族の体は、ハウザの一撃によって無残な有様になっていた。

身体を支える骨格は剥き出しになり、肉が存在していた場所は最早原型を留めていない。

向き出し枯渇した魔力を補うために土煙の中息を潜める二人の魔族は揃って空を見上げた。

灰色と群青を混ぜたような深い色をした天を隠す入道雲に亀裂が入り、太陽の光が大地に一本の道を作り出す。

光の道を目で追えば、堂々たる立ち姿で天に立つ一人の同胞の姿があった。


「ハウヴァート……」


――――昔は、力なく逃げ惑うような軟弱者だった。

いつもヴァガイの肉弾戦の訓練から逃げ出し、私の母からの魔法授業には付いてこれず、いつも一人の世界に逃げ込んでは周りから孤立する。

暗闇へと一人で帰えるハウヴァートの背中を静観し、特に何も思うことはなかった。

弱者への共感は罪であり自らの弱さを生む。

強者こそが絶対であり魔族の中での正義……。挙句の果てには人間という弱者の研究を始めては魔族の中では誰もが知る〝大罪人〟となった。


「(そうだ……やつは、ハウヴァート・ヴァレインは生粋の弱者だ。それなのに何故――――ここまで強い?)」


今も、昔も、ハウヴァート・ヴァレインは一人(独り)で立っている。

だが過去の姿を今の姿に重ねることが出来ない。


「ヴァガイ……、まだかかりそうか?」


「儂も、もう年だ……。ここまでの損傷は時間がかかる」


「……そう、なら私が時間を稼ぐ。その間に〈インドラ〉に住む魔族を出来る限り避難させてくれないか?声がデカいヴァガイだからこそ頼む」


隣に伏せるヴァガイに目をくれることもなく、ただ真っすぐ向いたままデイディは囁くように口を動かした。


「なッ!?馬鹿言ってんじゃねえぞデイディ!!」


ようやくと四肢が治り始めても未完全で不確かな形で治り始める体を動かすことが出来ないヴァガイは、デイディの背中に向けて声を荒げる。

それでもピクリとも動じないデイディは落ち着いた声で囁く。


「馬鹿なことは何も言っていない。寧ろ正論だろう?」


笑いを含んだその声音はヴァガイの琴線を更に揺さぶった。

何とも言えない虚無感が心を覆った……そう感じた時に訪れる後悔の濁流が治りかけている膝を震わす。


「勝てない相手に立ち向かうことを正論なんて言わねぇ!!今の六王幻魔は儂らしかいない、ここでお前がもしも倒れたら……これからの魔族はどうすればいいんだ!!」


「――――ここまでの脅威を目の前に〝これから〟のことを語る……。〝これから〟のことを考えているヴァガイを残すのは正論ではないが正解(・・)だろう?」


きっと後ろに目をやれば心配そうな表情をしたヴァガイがいる。

家に行けば茶菓子と茶を、帰り際になったらお小遣いを親に内緒で渡してくれる。

出来なかったことが出来るようになれば親よりも喜んでくれて……

叱りつけるときは怒鳴ることもなく優しく諭してくれた……


「(思い出せば思い出すほど……ヴァガイとはいい思い出しかないな)」


「お、おい!!デイディ!?」


「――――行ってくる」


強く地面を踏んで


「(最後くらいは魔族らしい純粋な戦いを……)」


空に立つ一人の敵の元へ


「(望んでもいいだろうか?)」


「ハウヴァートォォォオ!!!――――」


淑やか、穏やか、優しさ、強かさ。

自らが女性として生きていくために備えた(過去)を脱ぎ捨てる。

まるで獣のような力強くも気高い雄叫び。

決して女性から発せられる声とは思えない程の怒号は〈インドラ〉の枯れた大地に響き渡った。


「ふっ、ようやく……か。デイディ!!」


対抗するかのようにハウザも声を張り上げ、突貫してくるデイディに急接近していき――――互いの莫大な魔力が衝突した。

方や魔人の力。

方や魔族の力。

どちらが強力かは言うまでもない。


「な、なんで……ッ!!」


空間から何千と木々を伸ばし一点に集中させた本気の一撃にも関わらず、ハウザは片腕で受け止めピクリとも動かない。

その目に見える力の差がデイディの心を揺さぶった。


「お前は思うのが遅すぎた。だが、力が沸くだろう?」


「余裕を、見せても……いいのか?」


「ふふっ……魔族が他者のために(・・・・・・)力を振るう。それだけでここまでの力を得られるんだ」


「……何が言いたい?」


「これが私の最終目標でもあり、更に探求心をくすぐる結果だからな」


人間と魔族の共同性。

ハウザが幼き日に気が付いてしまった、魔族ではありえなかった考え。

誰とも同じ考えに至ることがなかった故に頭に過ぎってしまった一つの可能性がたった今デイディの目の前で証明されかけている。


「最初にいたあの人間……まさか!!お前はアイツのためにここで私たちを食い止めて――――」


「その通りだ。私の今があるのはシノノメ・ソウという人間のおかげだ。これからはどこまでもあの男の隣にいよう、そう決めてからは心が軽い」


不敵に笑うハウザの表情にはどこか自分の両親と重なった。


「なぁ……デイディ。誰かのために戦うと力が沸くだろう?」


当たり前だ(・・・・・)……私はヴァガイを守り抜き、魔族を守る。そのために復讐しに来たお前を通すわけにはいかないからな」


「安心しろ復讐などは感情の建前でしかない。私は力を得た、私の力で導き出した結果()


――――それをお前ら魔族に見せつけたかっただけだ


「な……んだ、吸い込れる……」


「【亜空切断】」


数えることすら億劫にすら思える木々はハウザの手元に吸収され始める。

無慈悲の別の次元へと吸収されるそれを目の前で眺めるだけのデイディに小さく囁いたその言葉。


「離れた方がいい、この力がどれほど強大なものか私は知らないからな」


ハウザが腕を振り払い、デイディの攻撃は無に帰った。


「……くるぞ?備えろ――――」


そう言いながら穏やかな表情でハウザは空を仰いだ。


「…………ッ!!」


それはまさに神の所業。

いや……この力は神すらも殺めてしまう――――


「世界の衝撃に……」


大気が震え、どこからか籠った爆音が鳴り響く。

音がした方向は空。

デイディはゆっくりと見上げる。


「空が……割れた?」


〈インドラ〉では決して見えることのない太陽。

曇天に囲まれることなく、その姿は勇ましくも儚げに〈インドラ〉を照らしていた。

そろそろこの話も終わりますねぇ

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