不死の王 5
歪な愛情はヤンデレだけではないと思うんだ。
本当に捻くれたデレをかけたと思ってる、最後の方の文章は人によっては不快になるかもしれないが……安心してくれ俺も無意識に書いていて「これでハッピーエンドじゃなかったら、胸糞やな」って思ったから。
「……あー、すまん。名前を伺ってもいいか?生憎俺はこの森で育った身でな、ほとんど魔族については知らないんだ」
「ハウヴァート・ヴァレイン――――灰を被ったような色の髪に、身長は低め、旧魔族の特徴で常に【悪魔化】している。瞳は金色だったはずだから、魔の森に棲んでいるソウならば有力な情報を持っているのではないか?」
「は、ハウヴァート?でいいのか、そいつの名前は」
「あぁ……〈インドラ〉内では指名手配されているからな。全ての魔族が知っているぞ」
「死んだあとも犯罪者扱いなのか?魔族って」
「当たり前だろう?悪いことをしたらそれは永遠に語り継がれるさ、逆に偉業を成せば永遠に語り継がれるものだ。何千と生きる魔族ではそうしないと覚えていられないんだからな」
「ふーん。ちなみに俺はこの森に大分棲んでるけど……そんな奴は見たことないな」
「そうか……」
「あぁ、そうだ。んで話しは変わるが、いいか?」
ソウはリグレイに膝枕された少女を見た。
とんでもない怪我をしていたが回復魔法によって外見は治った少女は一向に起きる様子がないので、流石に切り出さずにはいられなかったのだ。
「その子は……いつ目が覚めるんだ?」
外見だけは治せたが内部が治せていなかった場合、ただの死に化粧。
復活させるどころか葬式に手を貸しただけになってしまう。
「正直なところ分からない。オレの方も急に真後ろから飛んできて焦っているんだ、微かな聖属性魔力反応からみて誰かにやられたのは間違いなのだが……」
「本当にたった今人族と戦ってるならそいつにやられたんじゃないのか?」
「まさか……ギルは、この少女は魔族の中でもかなり強い方だ。しかもオレが魔王城から出る少し前に出撃したんだぞ、いくらなんでも――――ッ!!」
「どうした?」
「英雄だ……!」
「あぁ、人族のやつね」
「奴らなら可能かもしれない……現に六王幻魔は既に四席もやれた。それにこの聖属性となると……〝天醒〟か!!これまでの結果から推測するに――――」
「おい待て待て!勝手に進めんなって、その『てんせい』ってやつの情報とか教えてくれよ。お前だけで進められても手助けが出来ないっての」
「なら着いてきてく――――今からギル達が向かった戦場に行く」
「いや――――」
思わず少し離れた場所の小屋の方角を見てしまう。
そこには未だに目を覚まさないハウザがいる、せめて目が覚めるまでは近くにいたいと思ってしまう自分がいることにリグレイからの頼みを躊躇してしまう。
「頼む!!英雄がいるなら……これは戦争なんだ!!とにかく助けがいるんだ!!」
「……魔法でマーキング魔法とかってあるか?」
「何故だ?」
ソウは後ろの方へと目線を送る。
「あそこに、俺の家があんだ。そこには大事な人もいる」
「なんだ結婚していたのか……マーキング、というかテリトリー魔法ならあるぞ」
リグレイはテリトリー魔法についてソウに伝えた。
テリトリー魔法とは周りの魔素を動かし対象を囲む、そしてそこにある魔素を固めるように圧縮すると魔法陣が現れて魔力と結合して魔法に変わる。
よく財産の管理などで使われる魔法という説明を受けたがそんなことはソウにとってはどうでもいいことだった。
「――――分かった。ちょっとここにいてくれ」
膝を少し曲げただけで地面に伝わる力が〝人間〟でいたときとは違ったからなのか、ソウの言葉は風のようにするりと体を通り抜けっていった。
そのあまりの速さにリグレイは放心状態になってしまった。
「な、なんだ今の。あまりにも速過ぎる……。オレでも見えなかったぞ……?」
その驚きは無意識にギルの腕を強く握ってしまったようで、ギルの体がビクッと反応する。
「――――いたい……」
「お!起きたか!」
「何してんのリグレイ……私を膝に乗せていいのはティルだけなんだけど――――というか、私は……?あれ?何で生きてるんだろう?」
急に起き上がり、顔周りをペタペタと触って確認しているギルの姿にリグレイも困惑した。
「そんなの回復魔法をかけたからに決まっているだろう?」
周りから魔素をかき集め【悪魔化】し綺麗な漆黒の翼を広げたリグレイがギルに言った。
だが、リグレイのことを知っているギルは……
「誰が?」
「あぁ……――――」
リグレイが口を開いた瞬間に身の毛がよだつ程の魔力を感じ、思わず二人とも臨戦態勢に入ってしまう。
「……なに、今の」
ギルも病み上がりであるにも関わらず立ち上がって魔素を吸収している。
目を見開いてみている方角には何があるのか……何があるのかとすら考えたくもない存在がいるに違いないと瞳の黒さで理解出来た。
「今の魔力がお前を治してくれたやつだ。ソウと言ってな、良い奴だ」
ギルはリグレイの言葉を信用出来なかった。
それもそのはずだ、ソウを語るリグレイの額には汗が滲んでいる。
「本当に良い奴なの?……その人」
「実のところオレにも分からん。でもお前のケガを治したのはソウだ、そろそろ戻ってくると思うからしっかりお礼を言うんだぞ?ギル」
「うん」
◆
その頃、小屋の目の前に一瞬にして到着した爽は腕を組んで仁王立ちしていた。
魔法に関しての知識を得れたことは良かったが、だからと言って言われたからすぐに出来るというわけもない。
上手くできる保証がない分、頭を悩ませているのだ。
「……空間収納みたいなのはないもんかね。そのままハウザを入れて持ち運びたいんだけどな」
「なぁ?」と声をかけるのは自分の周りに浮いてる魔素にだった。
視界に映る全てに浮遊している埃みたいのが全て魔素だと思うと耐えられるが、正直に感じることは視界不良の一言に尽きた。
「お前らもうちょっと見やすくならない?思ったことが伝わるならやってくれよー」
フワフワ浮いているというよりかは、パラパラと舞っているという感じの視界を擦る。
すると……
「おぁ、見えなくなった」
相も変わらず天気がいい魔の森が視界に映りこむ。
「ちゃんと思ったらやってくれんのかよー……んじゃ、ハウザのこと空間収納できる?」
頭の中では銀河のように煌めき不思議な空間に眠っているハウザをベットごと収納する想像はしっかりと出来ているが、不意に映った魔素が左右に揺れた。
それはまるで『出来ません』と伝えているようにも思えた爽は「わるいな、無理言った」と虚空に向かって手を合わせた。
「して……どうするか」
正直なところマーキングなんてものは信用できない。
ハウザだけでも守ってもらわないと困る。
その英雄とやらがここを狙ったら?
魔族がまた襲撃してきたら?
不安や悩みが増えていく一方の思考回路に、ふと言葉が電波した。
『魔族一人くらいなら余裕だけど?』
「ん?誰だ!」
『うるさいな~、いいから魔力よこしないさいよ!やってあげるわよ、特別にね!』
「なんだ……なんだこれ!?まさか俺はおかしくなったのか!?いや…………俺の好みツンデレじゃない。そうだよ、俺の好みはデレデレなんだ。つまりは俺はおかしくなってない?」
『……いいからよこしな。魔族を守りたいんでしょ?』
「守りたい」
『だから早くよこせって言ってんの!』
「え、魔力ってどうあげればいいの?」
『はぁ……なら勝手に持ってくよ?いいの?』
「んだよ、持ってけんなら早く持ってけよ。俺は異世界初心者なんだ、魔の森の食べれるものくらいしか分かんねぇんだぞ」
『何言ってるか分からないけど――――契約成立ね』
「ん?――――――」
体に貯めこまれた、これまでの魔力がスッと抜けていったのが目に見えることに眉を寄せる。
流れていく先にはあるのはハウザが眠る小さな小屋だった。
平たい屋根の上に微かに見える人型の影が手を振っている。
『今からやるからねー、体は大丈夫?』
冷静に見てみる女の人にも見えなくもないその影はソウの返答など意にも介さず、聞くだけ聞いて手の平を合わせた。
「俺の返事は聞いてくれないのね……まぁ、いいけどさ」
誰にも聞こえないように呟いた言葉は大量に収束されていく魔素と共に小屋の屋根に立つ少女の元へ行ってくれたのだろうか、少しだけ間を取ってから口元の見えない影の少女が魔力を帯び始めた。
少女を中心となって小屋全体が白く輝き、その輝きは柱となって空へと伸びていく。
『鈍の湖に沈む黄金 虹に浮かぶ泥濘の王冠 蒼穹が目指した地の果ては大地が存る蒼穹の夢 この場は晴天が差し示す天上の界 掴むは天獄の腕 その名は魔精霊が|称する――――熾天使ノ領域』
どこか笑っているようにも見える影は霧となって姿を消すと、天から大量に魔素が雪崩て小屋全体が純白に包まれた。
純白が故なのか、真っ白すぎて小屋が見えなくなってしまうことに少し肩を落とし不安そうに一歩近づいていくと、急に肩を掴まれる。
『これ以上先には行かないで。ほら見てみなさい』
一歩近づいただけで白い靄が爽の足元まで伸びていた。
「なんだこれ?」
いつもの通り、目に見える魔素だと思い触れようとする爽の両肩を持って後ろに投げる。
「んぉ!?」
『このお馬鹿さん!これに触ったらダメなの!』
「え、なにそれ……怖い」
『当たり前でしょ!?これはこの世界とは領域が別なの、言うなれば神の世界に近しいところから無理やり力を借りたもの。この世界で生きている者が触れた瞬間に存在を喰われるわよ』
「んでも俺の魔力でやったんでしょ?それでもダメなの?」
『ダメダメ、神様ってそんなに優しくないから。術を解きたいなら一回死ぬしかないわね』
「あぁ……なら簡単だわ。てか、逆に言えば簡単に死ねなくなったってわけか」
『ふふっ、そうよ。いつもみたいには行かないわね』
「――――このさい、何も聞かないことにするけどさ」
『なぁーに、ご主人様』
いつまでも尻もちをついてはいられないと思い、爽は立ち上がろうとしたその時であった。
表情も体格もまるで分からない……だが確かに可愛らしい声音で『ご主人様』と呼ばれてしまったのだ。
ごく普通すぎる一般のオタクという分類される東雲爽という人間にはあまりにもパワーワード過ぎて、胸がキュッと絞られる感覚に陥った。
「ぐッ……い、いやぁ。名前だけでも教えてくれませんかね?」
『なんで今更緊張して早口になってるのよ、少しキモいわ』
これはときめきではない。そう自分に言い聞かせて自我を保っていると少女からコミュニケーション能力が欠けている人物には最も心に突き刺さる一撃をお見舞いされ、
「お、お前ぇ!!女の子がキモいとか言うんじゃありません、全く近頃の教育は――――」
実質なにも言い返せなかった。
『あー、あー、うるさい。分かったわよご主人様。それで……名前だっけ?』
「そうだよ。お前だけ俺のこと知ってんのは気にくわねぇ」
『何のプライドなのか理解できないけど……ここからが大事なの、よく聞きなさい』
これまで少女の全体が薄っすらと空間に滲んでいるように見えていた。
だが徐々にメッキが剥がれ落ちるように、少女を包んでいた影が風に流されていく。
「おぉ……ノー。とんだ美少女だ」
『ようやく見えて来たのねこの美少女が……でも、それでは足りないわ』
「何が?既にお前は完成している、これ以上望むのは罪ってもんだ」
『顔のパーツの問題じゃないわよ……名前よ、名前!!』
「あぁ!そのパターンね、こう……名前を決めて契約成立てきな」
『いやもう契約はしているわ。私を創り出したのはソウ――――貴方だから』
「……俺はツンデレは好みじゃないよ?」
『それは私の性格よ。ソウ、そろそろ真面目に考えて……怒るよ?』
「うーん…………」
もう既に何となくは理解していた。
それは前の世界からの受け売りではあるが、異世界転生特有のものだろう。
パターンは似たり寄ったりのものがほとんどだが、よく見ると全部が違う。そんな解析不可能なパターンからは検討が付かない。
「だから……」
この目の前にいる少女がどういう存在であれ、自分の考えに沿って行動してくれたのは間違いない。
つまりは欲望をそのまま体現してくれる存在。
単純に〝今〟の自分にとって都合の良いような見かたをすればいいのだ。
「異世界から来た俺の想像力、最初の二年は孤独に生きて来た故の俺の本心、この魔法……」
異世界から来た者がこの世界に既存しているか?と問われたとしても「分からない」と答えるしかないほどには周りの環境を知らない。所謂、世間知らずな爽にとって一番欲しかったもの。
友達が欲しい、話し相手が欲しい、誰にこの世界を教えて欲しい、魔法を使いたい、森の中にいてこの程度の欲望しか思い浮かばなかった。
「…………」
目の前にいる少女は全てを叶えてくれるのではないか?
友達のようでいて、会話も途切れず、色んなことを知っていそうで、魔法が使える。
「あ……んと、俺の欲望詰め込んだ奴がお前……か?」
『惜しい!けど、大体そんな感じで覚えておいてくれればいいわ。で、名前は決まった?』
「うわっ、色々と誤魔化しやがった。俺はご主人様なんじゃねぇのかよ……」
『名前を貰ってないからな~……』
「分かったよ、分かりましたよ……。たった今から名前を考えるよ」
名前を決めたのはいつ以来か……
スマホゲームをダウンロードした時にユーザーネームを決めるとき以来だろうか。それでもゲームの名前は自分の名前を使っていた。
「(俺って……名前つけるの初めてなんだなぁ)」
『早くしてよ』
「ちと待ってな」
見た目は自分の欲望からなのか随分と日本人に近い。
黒髪黒目の肌は白目。きっと海には行ったことない箱入り娘か何かだろうな、俺も海に言ったことなかったな……。
特に特徴という特徴がない。強いて上げれるならば可愛い……。
「顔のパーツだけだけど……」
『は?なによ?』
「いや何も」
考えても出ないってことは、まだこの少女に興味を持っていないということ……
残酷なことを言ってしまえば正直もういらないんだよなぁ。
ハウザを守ることが出来ればそれでいい。
そのために自分が創り出した、ただの空想。
「――――あぁ、なんだ。うん。全く決まらねぇわ」
『なにそれ……私の主としてどうなの?』
「そう、それだよ。何で俺ってお前の主なわけ?」
『そんなの決まってるでしょ?貴方が私を創ったからよ!なら私の主になるべきでしょ!?』
「悪いけどさ……俺の生きて来た人生でそんなことは一回も無かったわけだよ、って言っても分からないよなー。この〈アディベート〉に来る前の俺のことも、ここに来てからの俺のことも」
『当たり前でしょ?たった今都合良く作られた存在が私なんだから』
「そうだよな――――だから都合良く消えてくれ」
『え?』
心に小さくない傷が入ったからなのか少女の体に歪みが走った。
自分を生み出した者から拒絶されて絶望している、まるでその場で生きているかのような表情は正しく人間のそれだった。
「俺は今から人間と戦うことになると思う。ここに来てから捨てられて、随分酷いことをされたからその分は必ずやり返すつもりだ。俺は……死なないしな。【魔人化】のおかげで完成に近づいた力で無限に追い詰めて一人くらいは殺す、そう決めてるんだよ。なんならハウザを狙う魔族だって殺す。まぁ魔族とは和解できそうだけど、同じ人間だからこそ人族は許せない」
『そ、それは……私の、私のご主人様にならない、理由にはならないじゃん』
「うん、ならない。ならない……よなぁ」
『ならちゃんと私のご主人様になりなさいよッ!!』
「お前さぁー俺に触れたでしょ?」
『当たり前でしょ!!貴方に触れなかったら、動く体に生まれた意味がないじゃない!!』
「んじゃさ。他の人も触れられるわけじゃん」
『それは……仕方ないじゃない。そういうのが世界の理ってものでしょう』
「だからさ――――――」
言葉を止めた瞬間に二つ同時に、少女と爽を挟む形で放たれた魔法を【魔人化】された腕で地面に叩き落と少女を後ろに追いやる。
魔の森の上空から現れた浮遊している三人の人間。
反対方向からは男女二人の魔族。
双方が爽へと圧力をかけるように威圧してくるなか、少女に向かって爽は言った。
「こういう時に守る対象が増えるのは勘弁してほしいんだよね……分かる?」
少女は驚いたまま爽の背中で茫然としてしまった。
『全く気が付かなかった……ごめんなさい』
「いや、いいんだけどさ。――――とにかく続きはこれを片付けてからにしようなッ!!」
魔族――――リグレイが放った炎を纏った魔力弾を、
「(魔力を足に集中させて……ッ)」
サッカーボールのように蹴り流す想像をしてみるが【魔法の源収】の力により即座に吸収してしまい、不意に出た無色透明な魔力波がたまたま人族が浮遊して固まる場所に向かっていき空で爆炎が舞った。
「汚ねぇ花火だ……」
人生でもう二度と言う機会がないでろう名台詞を吐き捨てた後、リグレイたちのほうを向いた。
激高しているリグレイの周りに生える草木は徐々に炭に変わっていく光景が面白く見えてしまう爽は、手を振って……
「よう!どうした!?」
「……貴様ッ」
それ以上食いしばったら上下ともに綺麗に生えそろう歯が砕けてしまうのではないかと心配になるほど、怒り狂っているリグレイが答えた。
「まさか、人族だとは思わなかったぞ……ソウ」
「いや。俺は一回も魔族とは言っていないけどな」
「……それでも俺を騙していたことには変わりはない。――――その真っ白な空間に〝大罪禁忌〟が眠っているのだな?」
「どっから聞いてたんだよ」
「全部、最初から聞いてた」
「おぉー、起きたのか。体は大丈夫か?」
「……人族に治されたこの体、私は魔族の恥晒し。ここで刺し違えてでもテメェを殺す!」
急に豹変した、それは態度だけではなく魔力の色そのものが、だ。
「多重人格者かよ……サイコだな」
「おいおい……俺たちを忘れてもらったら困るって」
声が聞こえた方を向こうとすると目の前で放たれた魔法が体に吸収された。
「「「なッ!?」」」
「よう!ゴミ野郎共、元気か?」
「私の魔法が……アイツッ!!ただのノーマルじゃないの!?」
「私が切ってもいいでしょうか?既に人間を辞めた様子ですし……討伐の方向で参ります」
刀と鞘を擦る音が耳鳴りのように周りに響き渡り木々たちがさざめきを起こす。
「【一刀 神絶】!!」
視界に映る魔素の靄が綺麗に二つに割れるのが見えたことで、不可視の斬撃を腕で防ぐも……
「あ、斬り落とされるのね……」
「畳みかけるぞ!!」
浮遊している場所から一気に迫る三人の他に、横からはリグレイたちが人族諸共焼き尽くさんとする業火を放った。
熱気は離れていても感じ、何より毛先がチリチリと燃えている。
人族の三人組は何か防ぐ方法があるのか一気に迫りくるが爽の後ろには〝名もなき少女〟が腰を抜かしている。
一瞬にして脳裏にステータス画面の一部を確認し、魔素を集中させた拳を強く握る。
【魔法の源収】
魔力が関わる全ての物質を吸収する。
(物理攻撃は吸収不可)
吸収した魔力を力に変換する。
魔力を内部に蓄えることが出来る。
(現在の蓄積値 10パーセント)
内心では盛大に舌打ちをするが仕方ないと区切りをつけた。
「魔力蓄積5パーセント……」
魔の森そのものの魔力、それもたった5パーセントほど。
だがそれは他の5パーセントといとは訳が違うのが、使った爽だけではなく周りに伝わったのか、即座に離れていく人族。
リグレイ達は次の魔法を構えているが……
「逃がさねぇよ……」
腰に腕をくっつけるように構え、リグレイの業火魔法を無効吸収した瞬間に地面を飛んだ。
全走力ではない……およそ二割と言ったところか、それでも人族のただの動体視力には追い付くことは無かった。
「まずはお前からだ、刀女」
「……ッ!!速い」
力任せに速さだけを思い求めた。
その拳の速さは人間の限界などとうに超えた一撃だ。
威力は【魔人化】の指先から黒く染まった〝魔人の腕〟で保証された、そして素早さに関しては通常では腕が初速でもげるほどの速さ……
「【魔力撃 一閃腕】」
帯刀する女に直撃する瞬間に男が庇うが、あまりの風圧の威力に三人とも森林の向こう側へと吹き飛んでいく。
「どうた、リグレイ?」
標的を自分ではなく〝名もなき少女〟へと変更しようとしていたリグレイへと声で釘を刺す。
「……まだハウザを狙うか?」
先程のリグレイの魔法攻撃によって蓄積量が増えたことにより、爽から感じる魔力の圧が、リグレイの足を後ずらせた。
「まだ狙うってなら……容赦はしない」
最後の奴は捻デレなのか……
それとも上手いこと伝えられない歪み切ったツンデレなのか……
胸糞を少しでも感じた人は仲良くなれそう。




