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ポニーテールと精霊の弾丸  作者: 幸川愛羽
一章 スプライト・ラッシュ
8/8

スプライト・ミーティング 1


「何度言ったら分かんだよ、てめえは!」

藍たちがドアを開けて入った瞬間。

その人物は後ろを振り向きながら怒鳴って、部屋から出ていこうとしている最中で、そして藍と衝突した。


「うおゎ!」

「くっ!?」

藍の方はそのまま尻餅を着いたが、対してぶつかってきた人物は足を止めるばかりで痛がりもしていない様子だった。


「あらー」

と、その様子をみていた狩谷が面白がるように手で口を抑えるとその人物ー鎧を着た長髪の女性は、


「やっときやがったか!」


そう言って、狩谷の小さい鼻を右手でつまんで思い切りねじった。


「ちょっと、痛い痛い!」



狩谷がぱたぱたと暴れるのをみて、彼女はげらげらと笑っている。


「何なんだ、いったい……」


藍は唐突にこんがらがった状況に、そう呟いた。

シルクみたいに艶のある銀髪にシャープで端正な顔のつくり、その麗人の、まるで女性とは思えない豪快の素振りに呆気にとられ、さらに言うと彼女にも愛らしい”ネコ耳”がちょこんと生えていることに違和感を覚えていた。

すると、


「ミス、一体何を叫んでいらっしゃった?」


そう、藍の横のピートが訊ねた。

するとその女性は狩谷の鼻をやっと離して、


「あの老害が、全く戦況を進めようとしねえんだよ!」


と言って、親指でくい、と背中の方を示した。


示した方には広いガラスの円卓と、その向こうに、腕組をして椅子に座っている白髪の男がいた。

高齢だろうが、とても”老人”と呼ぶのがおかしいような筋骨隆々、座っていても藍より背が高いような巨人である、短い髪といい鋭い切れ目といい軍人のような風貌だ。

また彼が座っている椅子と、円卓を囲む合計五つの椅子の背もたれや足は全て、今通ってきた廊下と同じ青い宝石で造形されている。

まさに”玉座”というような、神々しい趣である。


ただ着ているものは決して豪華とはいえず、僧侶のような灰色の袈裟である。


「いやぁ。待たせて悪かったね、ミス・ラングマ、それに………


……キング・レビュア」


狩谷はそう言って、”キング”と呼んだ男に向かって恭しく空中で一礼した。


……キング?


そう怪訝に思いながら、横のピートに合わせて藍も礼をする。

藍の前に突っ立っているラングマと呼ばれた女は、「ふん」と鼻を鳴らして不機嫌そうである。


「……俺を待たせたことに関しては何も咎めん。

ああ、それはいい。まずはそこに座れ、客人」


レビュアと言うらしい男はそう言って、自分の右隣にある円卓を囲む椅子を指し示した。



この部屋は三百六十度、完全な展望である。しかしどれほどこのフロアが高層にあるのか、やはり見えるのは空のみだった。


また大して広さはなく、ホテルのスイートルーム、その一室程度の広さの中央に半径3メートルの円卓が置かれている、そんな配置だ。


「突然の誘拐で驚いたか、少女よ」


正面に、堂々という様子で座るレビュアが藍に訊ねた。やはりその耳もネコ科のもので、むしろ威圧を和らげる役目をしているようだった。

藍は円卓を挟んでレビュアの真正面、そしてその右に狩谷、その左にピート。

不機嫌なラングマは入口ドアの端におっ架かって状況を見物している。


「……驚くに決まってるだろ。そこの妖精なんか、私になんの説明もせず気づけば見知らぬ森のなかだ。正直私は、早く、元の世界にどうすれば帰れるのかということを聞きたい」


藍は真っ直ぐにレビュアの方を見つめてそう答えた。

ピートはその、藍の物怖じしない受け答えに少しハラハラした様子でいるが、狩谷の方はふふん、と椅子の上で小粒な身体をふんぞり返らせてむしろ満足げだった。


「その答えは簡単だ。おまえが、私たちを救えば済む」


レビュアは切れ目を尖らせて言った。一室の空気が彼の発言に伴って凍るような、重々しいものになっていく。


「救う?……どうやって、私があなたたちを救うんだ」


「まずは、戦争が始まった経緯をおまえに説明する」


そう前置いて、レビュアが話始めた。


「そもそも、この世界にはふたつの種族が存在する。俺たちが含まれる”シグレ”と、そして禍々しい角を持つ”カスミ”だ。


我々シグレの特徴として、奇怪な魔法が使える。例えば龍が吐くような炎を出したり、だ」


言いつつレビュアは右の手のひらを開いて見せた。

すると一拍置いて、円卓から火柱が噴き出した。


「っ!」


藍は思わずのけぞって、狩谷はそれを愉快げに眺めていた。

レビュアが一息その火柱に吹き掛けただけで、まるで水を打ったように炎は消えた。


「対してカスミは”召喚”を得意とする。彼らは地獄と自らの身体を繋げることが出来る。カリヤ、映像として見せることは可能か?」


「ハイハイ、もちろん」


そう言ってカリヤが承ると、指をひとつ鳴らした。

するとレビュアの背後の、今まで外の青空を移していたはずのガラス一面が、一斉に映像に切り替わった。


それはいくつもの頭を持つ、日本の神話に出てくるような”ヤマタノオロチ”のようなケダモノ一体を、鹿の角を持つ真白な肌の獣人ひとりが使役している、その戦場を写す映像だった。


レビュアやラングマ、ピートに似たネコ耳の獣人が何十と向かっていって、そして焼き払われたところで映像は切れた。



ちょっとこの会議のくだりは長引くかも。


まあ、世界の説明に必要なパートすね

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