憂鬱は泉に飲まれて
ポニーテールの美少女がハンサムの振りをしたスケベ精霊と異世界でドンパチやる物語(予定)。
ボク自身、ブギーポップとかそーゆーの描きたいんだけど異世界転移じゃ無理だろーなぁ…
や、なんでもないっす。
「さあ、この先が極楽だ」
少女を後ろから抱きしめて男が囁く。
泉のふちに立った少女はエメラルド・グリーンのまた奥の、深淵を見つめる。
「……奇妙な手品だ。人の家に来ていきなり、大きな水溜まりを作るなんて」
しかし、そこにある闇に、竦むどころかむしろ惹かれている自分を確かに感じて、少女は不思議に思った。
ただ一つだけ、頬に感じる、男のなよなよとした茶髪だけがうざったかった。
毎日顔を合わせているはずの、自分の住処のはずなのに、まるでセカイが異なっているような違和感がからだを包んでいる。
少女はその違和感が、変にくすぐったい心地が不快で顔を顰めて、そしていよいよ男がからだを倒した。
「……さあ、いよいよだ」
泉に、落ちていく。
二人のからだはゆっくり水面に近づき、波紋を立てて溶け込んだ。ふたりは泉の奥で、ひとつの影になって混じり合う。
泉の口はそのふちからするすると閉じて、いつしか消えた。
泉が消えたそのあとはただただ普通の、一人暮らしのごちゃごちゃとしたワンルームに、梅雨の日の夜みたいに寂しげな空気が漂った。