第67話 人望を憂いて
――魔王城へ向かうメンバーは、貴方にお任せします。明日までに、その面々の報告をお願いします。
――ああ、そうそう。20人ほどで向かうのがいいと思います。それ以上の兵力を貸し出すのは、少し難しいですね。
……あのさ、そういうの、性格悪いと思うんだよね。君に選ばせてあげてるんだよ的な。私は善意の塊ですよ的な。
俺がそれを望んでるように見えるかってンだよォ!!
「やっぱ性格悪ィィィッ」
わざわざ部屋にまで呼びつけやがって。アドラスとピーアの個室に繋がる中部屋から廊下へと出て、俺は悪態をついた。
「大体、この俺様に。声を掛けられるような知り合いが20人もいる訳ねェだろうがッ」
自分で言ってて悲しくなってくるけどさァ!!
「いや、まあ元気出せよ。俺も声かけとくからさ……」
逆に、妙に俺に配慮した様子のアルにも、違和感があった。
「なんだよお前、何か企んでんの?」
「滅相もねえよ。ただ、強いて言うなら、俺も同行させてほしいってのはあるが……」
思わず、目を瞬かせる。
「え、お前……魔王城行きたいのかよ? でも、お前にはヴァリアーでの立場があるんじゃねェのか」
見てて思ったけど、雰囲気的にヒガサよりも更に偉いんだろ。いや、彼女は既にヴァリアーを追われた身。今となっては地位なんてないんだけどさ……。
アルフレートは肩をすくめた。
「あぁー……。ウン。まぁ、色々あんだよ。問題ねえ、つーかむしろ都合がいい」
「よく解んねェけど、遠出オッケーってことなら、まあ好きについてきてくれよ」
そう、ついてきてくれ、なんだよな。
理由は教えてもらえなかったが、フェリス・マリアンネは俺をご所望だ。というより、魔王サマとやらが俺を招きたがっているのだと。ジェノもそれを違和感ないという様子で聞いていた。
吸血鬼である俺を指定して、わざわざ魔王城に招く理由って……何だ? 優秀な人材の引き抜き……とか? 無いか。
正直、俺にそこまでの価値があるとは思えん。
「とりあえず、レンドウ。お前の知り合いを列挙してみろよ」
「あぁ? ……あァ、すまん。そうすっか」
ええっと……指折りを交えながら、人物を思い描いていく。こういうのって同じ奴の名前を何回も上げちまいそうになるんだよな。いや、ネタとかじゃなく。
「アル、レイス、リバイア、カーリー、ダクト、平等院、大生……は怪我の具合どんななんだろうな。貫太、守、真衣……ううっ」そこで項垂れる。「正直、子供3人は来てくれる保証ないし……自信なくすわ……」
「……………………」
「いや何か言ってくれ!」
無言で冷や汗流すのやめろよ! もっと頑張って解決策考えて! フレーフレー! アルフレート!!
すると、何かを決心したのか、フレフレート……じゃない、アルフレートは俺から視線を反らしつつ、言う。
「よし、俺に任せておけ……人数的な部分なら、まるっと解決してやれる」
「何でこっちを見ない!? 人数だけ揃っても不安しか残らないんだけどォ!?」
――響き渡った俺の声に、アドラスが扉の向こうで辟易としているだろうとか、そんなこと考える余裕も無かったね。はは。
フレフレートすき。
私、人生はくだらないダジャレを言う為にあると思ってるフシがあるかもしれません。