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7話:家庭教師

 

 夕食も終わり次は体を洗うため浴室に向かう。サーラに服を脱がされ浴室で体や髪を洗ってもらう。前世の記憶があるから改めてサーラを見ると綺麗だなって思う。肌が特に綺麗だ。ツルツルしてるもん。ずっと触っていたい。

 わたしもサーラを洗ってあげようとするがいつも断られてしまう。むぅ〜、わたしだってサーラを洗ってあげたいのに!


 そんなことを考えながらサーラの手際の良さですぐに体が洗い終わり、浴室から出て寝間着を着せられる。この後はもう寝るだけだ。


「それではエシリア様、おやすみなさいませ」


「サーラ、おやすみなさい」


 わたしは自分の部屋に入り、サーラと挨拶をして別れる。そして一人になったので、わたしは他の魔法を使えるのか確かめてみる。


 えーと……。何属性の魔法を試してみようかな。室内だから安全な水属性がいいかな。水属性の詠唱と神様の名前は何だっけ……。確か水の女神 グレイシオーネだったかな? 使えるか確かめてみよう!


「水の力を司る 水の女神 グレイシオーネよ 我の願いを聞き届け 水を生み出す 力を与え給え」


 身体に力が漲ってくるような感じがする。詠唱は間違っていないね。これで使えたら自分の適してない水属性も使えることになる。


 わたしはコップ一杯ぐらいの量の水を想像する。

 ……よし!


「手を前に出してっと……。いくよ!【アクアボール】」


 すると、わたしの手の前に水の球ができる。

 っ! できたよ……。後はこの水の球を放てば相手を攻撃できるし、コップに少しずつ入れれば飲むこともできる。

 水属性の魔法も使うことができたよ! とういうことは他の属性の魔法も使えそうだ! 別に魔法の本が読めなくても使えるんだね。でもどうして魔法を使える人も読めないんだろう。これについては本当にわからないなぁ。


 わたしは手の前に出していた水の球を消す。

 他の魔法も試してみたいな。でも常にサーラがいるからなぁ。こっそり使って確かめるしかないか。うーん、外で遊んでいる最中でサーラが見てない間に風属性魔法を試す……とか。えへへ、いいこと思いついちゃった〜! 風属性魔法はそれでいいとして、後は火属性魔法と闇属性魔法だね。どうしようかなー。まあいつか使える場面がくるでしょ。今日はいっぱい勉強したから疲れちゃったな。そろそろ寝よう。


 わたしはベッドの中に入り目を閉じる。


「聖なる力を司る 聖の女神 アメスフィーナよ 我の願いを聞き届け 心を癒やす 聖なる力を与え給え 【リラクセーション】」


 わたしは無意識に自分を癒やす魔法を使っていた。前世では毎日、魔力を高めるために自分に癒やしをかけていたからね。つい魔法を使っちゃったよ。これからは気をつけよう。誰かに見られたりしているかもしれないしね。


 わたしはすぐに深い眠りについた。







 チュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえてくる。


「うぅ〜」


 わたしはまだ寝ていたくて目をギュッと瞑る。すると部屋の外から足音が聞こえてくる。その足音はわたしの部屋の前で止まり、扉をノックしてくる。誰よこんな時間に!


「サーラでございます。エシリア様、起きていらっしゃいますか?」


 あ、サーラ? そりゃ毎回朝起こしに来ているサーラしかいないか。ていうかもう起きる時間? まだ寝ていたいよ〜!

 わたしは寝たふりをしてやり過ごそうとする。


「…………」


「もう起きなければいけない時間です。エシリア様、入りますよ」


 や、やばい! サーラが来る!


「ダメ!」


「起きているではありませんか。入りますよ。……ふふっ、確か前も何回か寝たふりをして結局自分から声を上げていましたね」


 サーラがわたしの部屋に入りながら、昔もこんなことがあったと語ってくる。なにそれ? わたしってば何回もそんなことやってるの? 忘れてるよそんなこと! くぅ〜、やられた〜。サーラってばこうなることを分かってて言ってきたな! 次からはずっと黙って寝たふりをしとこう。


「次からは声を上げないで黙っておこう、などとそんな事は考えていませんよね?」


 ギクッ!

 そう考えていたらサーラがわたしの考えを的確に当ててきた。なんでサーラってこんなにもわたしの考えていることがわかるの? まるで頭の中を覗かれているようだ。遊ぶときに企んでいることもバレてしまいそうだ。これは慎重にいかないと。


「やっぱりそんな事を考えていたのですね」


 わたしのビクッとした体と図星を突かれたような顔のせいで、これからは黙って寝たふりをしようと考えていたことがバレてしまったようだ。や、やばい。この話題はすぐに切り替えないと企んでいることが本当にバレてしまう。


「サーラ! 今日の予定は何ですか?」


 わたしの質問にサーラはやれやれと言いたそうな顔で答えてくれる。


「今日は朝食を終えたらエシリア様の適性である光属性魔法についてのお勉強です。どうやらルイス様がエシリア様のために家庭教師を呼んでくださったそうですよ。それともし早く終わって夕食まで時間があればその後、外にでも出かけましょうか」


 魔法の先生! どんな人なんだろう。それに最後とても大事なことを言っていたよね?


「終われば遊んでもいいってこと?」


 光属性魔法のお勉強でしょ? あの本の内容は知ってたからすぐに終わりそうだね。早く外で遊びたいけど家庭教師もいるし終わるのが早すぎないように気をつけなきゃね。


「エシリア様、遊ぶことより魔法について興味を示してくださいよ。それに終わればですからね。終わっていなければ遊んでは駄目ですよ」


 サーラがしっかり釘を刺してくる。そんなことはわかってるよ! 勉強をしないと思っているな。むぅ〜。


「もちろん勉強してから遊ぶよ! 早くダイニングルームに行こう!」


「ふふふ、そうですね。行きましょうか」


 わたしはむっとしながら部屋を出る。この後サーラはわたしの頭の良さに驚くんだからね! あとわたしの風属性魔法に驚けばいいんだ!





 朝食を取るためダイニングルームの中に入る。わたしはむっとした顔だったけど部屋に漂ういい匂いで口元緩んでしまう。さすが料理人だ。いつも美味しそうなものを作り上げてくれる。


 サーラがわたしを椅子に載せてくれる。わたしの他に椅子に座っているのはロイお兄様だ。

 ロイお兄様は本当にお父様と似ている。髪色は茶色でわたしの好きな焼き立てパンのような色をしている。想像してたら食べたくなってきたな。

 それで瞳はわたしと同じ金色だ。ロイお兄様はお父様と全く同じ色の髪と瞳なのだ。あとはロイお兄様の体格がお父様みたいだったらすごかったのに。お父様の鍛え上げられた体はとても普通の人ができるようなものではないはずだ。騎士として日々の鍛錬を頑張ってきたのだろうな。かっこいいし、とても頑丈そうだ。

 それに比べてロイお兄様はスラリとした体格だ。でもこっちの方がわたしは好きなのでそのままのロイお兄様でいてほしい。


 そんなことを考えているとロイお兄様に声をかけられた。


「エシリア、おはよう! 今日のエシリアも見惚れてしまうほど可愛いね。あれから怪我とかしてないかい? いつも心配だよ」


 ロイお兄様……普通な顔をしていますけど、とんでもないこと言ってますよ。今7歳ですよね!? 前のわたしは素直に嬉しかったんだけど、前世の記憶を持ってから改めて言われると恥ずかしい。ロイお兄様、私以外の女の人にそんなこと言っては駄目ですよ! そんなこと言われたらどの女性もすぐに恋に落ちてしまいますからね! まあロイお兄様みたいなかっこいい人に限るけど。


「ロイお兄様、ありがとうございます。あれからはサーラも常に近くにいて、わたしも気をつけるようにしていますのでそんな心配しなくても大丈夫ですよ」


「遊ぶときは気をつけるんだよ。僕もエシリアと遊んであげたいけど、最近父上と剣の稽古をしてもらえるようになったんだ。だからあんまり遊べなくなるけど許してほしい」


 なんて優しいお兄様なのだろう。わたしの自慢のお兄様だ! お兄様大好き!


「大丈夫ですよ。わたしももうすぐ5歳になります。それに学校に入るために勉強しなきゃいけないことがたくさんあるので遊ぶ時間も減りますから、ロイお兄様も剣の腕を磨いていてください」


 するとロイお兄様と会話をしていたら扉の方からガチャという音が聞こえた。扉が開いて入ってきたのはお父様とお母様だ。そしてお母様に抱かれているわたしの妹フローラもいる。


「父上、母上おはようございます。フローラもおはよう」


「お父様、お母様おはようございます。フローラおはよ!」


 ロイお兄様が挨拶してわたしも挨拶をする。


「「ロイ、エシリアおはよう」」


 お父様とお母様が挨拶をして席につく。レインお兄様は学校にいるので今はいない。今はこの五人でテーブルに座り食事をとっている。


 皆が席についたことでワゴンを手にして待機していたメイド達が丁寧な所作で食器類を置いていく。そして大きなお皿に盛られた料理もいくつか置かれていく。今日は朝食のメニューにパンが入っている。おぉ。ちょうど焼きたてのパンが食べたかったんだよね!

 料理が全て置き終わるとお父様の掛け声とともにメイドたちがわたし達のお皿にバランスよく盛り付けてくれる。


 わたしはサーラに盛り付けられた料理を食べて思う。やっぱここの料理は美味しいね。料理人の腕が良いのだろう。

 そんなわたしが食べるのに夢中になっているとお母様から声をかけられた。


「エシリア、今日魔法の勉強するんですって? それに家庭教師も来てくださるとか」


「はい、そうなんです。まだ先生には会っていませんけど頑張ります! あっ、お父様家庭教師はどんな人なんですか?」


 わたしの質問にお父様が思い出したかのように答えてくれる。お父様……家庭教師のこと忘れてましたね?


「私が、騎士にいた頃の後輩でな。光属性が適性だったので頼んでみたがあっさりと承諾してくれた。あいつは基本は真面目なやつだが、たまに調子に乗るのだ。まあ普段は真面目なやつだからエシリアもしっかり教わるといい」


 お父様の後輩とういうことは25歳ぐらいだろうか。そんな大事な時期に家庭教師なんかしていていいのだろうか。するとお母様が言葉を付け足してくる。


「先生に迷惑かけないようにね。それに最初は魔法が使えるようになるまで大変だろうけど、学校まで時間があるから諦めないで練習するのよ。日々の努力が大切ですからね」


「わたし、お母様やお父様みたいにすごい魔法を使いたいんで諦めたりしません! それに適性じゃない魔法についても勉強したいと思っています」


 他の魔法の本が読めないのに魔法が使える理由を知らないままではいたくないしね。それに何で読めないのかも知らないし。これが分かるまでは魔法についての勉強は終わらないだろう。


「まあ! 嬉しいわ。でも、適性じゃない魔法を勉強する意味なんてあるの? 勉強するといっても読めないのよ」


 確かに今の時代の人には意味はないと思うだろう。しかも勉強するための魔法の本が読めないんだから。でも昔は読めていたんだよ。読めていたものが読めなくなったということは何かしら読めなくなった原因があるということだ。


「お母様、昔は誰もが自分の適性じゃない魔法も使うことができたと考えたことはありませんか?」


「え? そうねぇ、うーん……」


 わたしの質問にお母様は考え込む。するとそんなお母様とわたしの会話を静かに聞いていたお父様が手をあげる。わたしはお父様の方を見て言う。


「お父様は考えたことがあるんですか?」


「考えたというより……昔は使えたと聞いたことがある」


 え? それ本当!? どこでそれを聞いたの?

 そんなわたしの疑問を聞いたかのようにお父様が答えてくれる。


「学校に通っていた頃だった。確か歴史の授業で300年前までは多くの人が他の属性の魔法も使えていたと聞かされた。だがちょうど300年前の時に唯一女神と呼ばれ拝められていた聖女が亡くなってから段々と他の属性の魔法が使えなくなり、そして200年ぐらい前からは誰もが自分の適性ではない魔法は使えなくなっていたそうだ」


 え? そ、その女神と言われていた聖女ってわたしのことじゃないよね? 300年前にちょうど女神と呼ばれていて死んだけど……。


「そういえばそんな事も聞かされたわね。あの時は誰もその話を信じていなかったわ」


 お母様も聞いたことがあるのか。学校の歴史の授業でやるのだろう。学校には色々情報がありそうだ。


「そんな話があったんですね。お父様、貴重なお話ありがとうございました」


「ああ。エシリアも魔法の練習頑張るんだぞ」


「はい!」


 その後ロイお兄様とも会話をしたり、懐かしそうに話をするお父様とお母様の学校でのできごとを聞きながら朝食を終えた。






 わたしは部屋に戻り準備をする。それは魔法を練習するために庭へ移動しなければならないからだ。室内で魔法の練習なんかしていたら部屋が壊れてしまう。わたしだったらそんな事にならないんだけどね。


「エシリア様、着替えていますので大人しくしていてください」


「は、はい」


 どうやら考えごとをしていたら動いてしまっていたようだ。わたしはすぐに大人しくする。


 いつも室内で着ていたドレスだと動きづらく汚れると大変だから、動きやすい格好に着替えなければならない。わたしはサーラの手慣れた動きですぐに着替えさせられた。今のわたしの姿は太ももから腰までの下半身をぴったりとフィットするパンツの上に短いスカート履いて、上の服も動きやすい格好になっている。よし! 準備万端だ。わたしは準備が整ったので早速庭へ移動する。


 庭へ着くとお父様とロイお兄様がいた。剣の稽古をするんだろうか。


「お父様、これから剣の稽古ですか?」


「ああそうだ。それに家庭教師を紹介しないといけないしな」


 確かにそうだ。どんな感じの人だろう。真面目とか言ってたから厳しくて怖い先生かなぁ。そんなの嫌だ! でもたまに調子に乗るとか言っていたね。案外面白い先生かも。

 そんなことを考えていたらメイドが藍色の髪をした男の人を連れてきた。この人がわたしの家庭教師か。背丈はお父様ぐらいあるがスラリとした体格だ。ていうかすごく爽やかな笑顔をこちらに向けている。あ、今目がった。なんか恥ずかしい。するとわたしが緊張しているように見えたのかお父様が早速紹介してくれる。


「こいつがこれからエシリアの魔法を見てくれる私が騎士だった頃の後輩、ネイド・ローランドだ。ローランド家は同じ子爵だし、こいつは三男だから家を継ぐこともない。だからそんなに張り詰めなくても大丈夫だ」


「こいつって酷くないですか!? それにルイス様、エシリア様とても可愛いじゃないですか! もっと早く紹介してくださいよ」


「可愛いのは当たり前だ。エシリアには手を出すなよ。エシリアは私のだからな!」


 お父様はそう言うとはっはっはと笑う。

 お父様……。わたしは誰のものでもありませんよ。その前にネイド先生ってこんな小さい子供が好きなの? ただ調子に乗ってるだけだよね? わたしは一応自分のぺったんこな胸を守るように腕で隠しておく。

 でもお父様とネイド先生の会話を聞いて安心したよ。厳しそうじゃなくて寧ろ優しそうだ。


「エシリア様、よろしくお願いしますね」


 ネイド先生の挨拶にわたしはニコッと笑って言う。


「ネイド先生、よろしくお願いします! 先生に迷惑をかけないようにしっかりと先生の話を聞いて一生懸命頑張ります!」


 わたしの言葉にネイド先生は目を見開く。


「ルイス様、エシリア様って本当に4歳ですか?」


「ああ、エシリアは今4歳だ。どうやらエシリアはロイやレインが4歳の頃と違って大人びているのだ」


 くっ、もっと4歳児らしい言動にするべきだった。わたしってそんな大人びているかなぁ。


「エシリアは怪我をしてから大分変わったよね。なんか別人になったみたいだよ」


「え?」


 静かにしていたロイお兄様がわたしを見ながら言う。わ、わたしってそんな気づかれるほど変わってた? なんか呼吸が苦しくなってきた。心臓の音がすごくうるさい。


「怪我をしたことによって意識が変わったのだろう」


「確かにエシリアはあれほどの怪我をしましたからね」


 お父様の言葉で何とか落ち着きを取り戻せた。はぁはぁ。

 気をつけよう……。バレたと思うと息が苦しくなってくる。するとネイド先生がわたしの顔を見て言う。


「エシリア様、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」


「は、はい。大丈夫です」


 やっぱり顔色が悪いのか。自分でも顔色が悪いんじゃないかと思っていた。


「エシリア、気分が悪くなったらすぐに言うんだぞ」


「わかりました。お父様」


 お父様の言葉が嬉しい。わたしって愛されているなと実感できる。


「では、私達は向こうで剣の稽古をしに行くので、ネイドあとは頼んだぞ」


「わかってますよ。ルイス様」


 そう言うとお父様とロイお兄様はわたし達から離れていった。


「ではエシリア様、少し休憩したら始めましょうか」


「はい、お願いします」


 わたしの魔法練習が始まった。





水属性の魔法が使えました。

どうやら他の属性の魔法も使えそうですね。

ロイはイケメンで優しくてポエマーです。

家庭教師登場です。ロリコンかもしれませんw


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