出会い
「ふぁ~あ」
ああ、眠い。とても眠たいのに、こんな深夜にコンビニに買い物に行くなんて、私は何をしてるんだろう。
「まぁ、いっか。お腹すいたし」
今は0時。日付も変わり、夜が深まっていく時間帯だ。
春休み中の春夜は、毎日同じ繰り返しの春休みに、いい加減飽き飽きしていた。
「友達はみんな彼氏と新春旅行かあ。でも男の人、気持ち悪くて話すのも無理なんだよなあ」
フゥ、とため息をつく。
両親も毎年恒例で、春休みに2人で旅行に行ってしまう。と言うのも、春夜も来ないかと言われるが、40過ぎてもイチャイチャ仲のいいバカップル親子の邪魔をするわけにもいかないので、いつもひとりお留守番しているのだ。
「んー、ポテチと、コーラと、あとカップラーメンでも買うかな」
とりあえず買うものは決まった。後は帰ってぐうたらするか。
すると、横を通り過ぎた3人の男が声を掛けてきた。
「ちょっとぉ、そこの姉ちゃん、俺たちと遊ぼうぜぃ」
うわ、気持ち悪い。ただでさえ男性を気持ち悪いと思ってしまうのに、見た目がこんなばっちぃ不良に絡まれたとあっては、普通の男子が可愛く思えてくるくらいだ。
「すみません、急いでるので他を当たってください」
丁寧に断り、コンビニへと足を早める。
しかし、ここで引かないのが不良だ。囲むように春夜に近づいてくる。
「やめてください!こっちに来ないで!」
「いヒヒヒ、いいじゃねえか悪いようにはしねえよ!よく見りゃいい体してやがるぜ」
「そうだよぉ、大人しくしてりゃすぐ終わるからさぁ?」
キモい。吐き気がする。
「警察呼びますよ?」
「なんでだよぉ、俺たち何にもしてないぜ?まだ」
「おめえ、まだってことはこれからするつもりなんじゃねえか!ハッハッハ」
不良たちが笑う。
私はそのまま無言で横をすり抜けようとした。しかし、タダで通してもらえるわけがなかった。
「おい、待てよ小娘!ギャハハ」
「俺達が可愛がってあげるって言ってんじゃん?」
1人に羽交い締めにされ、身動きが取れなくなる。まずい。このままでは犯されてしまう……だが、人っ子一人いない。声を出そうが喚こうが、静かな夜に声がこだますだけだろう。
「やめっ…て!」
必死にもがくが、男の力に敵うはずもない。ならば、急所を狙うしか……そう思って足を股間目がけて振るが、男に密着され、微妙に届かない。もう抗う術がなかった。
友達に聞いた話だが、男は出すものを出せば無気力になるそうだ。
その話を思い出し、
「抵抗しないので離してください……」そう告げた。
すると、調子に乗った不良たちは、
「へへ、わかりゃいいんだわかりゃあな」
と、服を脱がせようとブラウスのボタンに指をかけた。
仕方がない。痛い思いをするよりはマシだ。男が何を出すのかは知らないが、それまでの辛抱だ。
そう諦めかけた時だった。
「おい、その子を離せ!」
ヒーローが登場したのは。
この誰もいないコンビニで、不良たちと私を除きただ1人、バイトの店員がいた。
だが、正直いって心許ない。体がヒョロヒョロで、それに相手は3人。勝ち目があるとは思えない。
「お前ら、男3人で寄ってたかって女の子に手を上げるとは、恥ずかしくないのか!」
「なんだい、坊っちゃん、お客さんいないからってバイトサボって出てきちゃダメでしょー?」
「さっきから見てたけど、その子嫌がってるじゃないか!その汚い手を離せ!」
「子供は帰っておねんねしなさいよ、ヒヒヒ!」
不良たちは気にもせず、ついにブラのホックに手をかけた。
-次の瞬間-
ありえない速さでその少年は地面を蹴った。
「その子を離せと言ってるだろ!」
ガンッ!ドスッ!
痛々しい音がして、2人の不良が気絶した。
「え……こんな強いなんて」
あまりの強さに、春夜のブラを外しかけていた最後の1人は、腰が抜け、後ずさりした。
「ひぇっ!ゆ、許してください!そこのふたりが、やれって言うからやったんですぅ!命だけは!」
「さっさと失せろ」
少年が一言そういうと、2人を引きずり不良は逃げていった。
「あ、あの……ありがとうございます。おかげで何もされず済みました」
「いえいえ、無事でよかったです。お怪我はないですか?」
爽やかに少年は笑った。