もし主人公が勝手に作品を書き直す能力があったら、どこに辿り着くのか ~目的は忘れずに~
この世界は――――全て神によって定められた運命になりたっている。
人間の意志に関係なく、
全ては神の考えのままに動く。
抗うことさえも神の運命に定められているとしたら?
あなたはそれに抗うか? 定められた運命を変える力が無いとしても、君は抗うか?
ならば君に運命を変えるための力を与えよう。
君は今から――――私だ。
私は君、君は私、一つの願いの元に重なったたった一つの人格である。
◇ ◇ ◇
「ハッ、ゆ、夢か……」
とある高等学校の教室、時間は昼休みであり平凡そうな少年――――足先 サムイは不思議な夢を見ていた――――
「なんだ……? 紙切れ……?」
サムイは胸ポケットから一枚の紙切れを取り出す。
「……? 『異世界召喚まで残り十分』……? なんだこれ」
「…………異世界召喚まで十分って書いたけど、地味に長いから書き直すか」
◇ ◇ ◇
「なんだ……? 紙切れ……?」
サムイは胸ポケットから一枚の紙切れを取り出す。
「……? 『異世界召喚まで残り二分』……? なんだこれ」
サムイはその紙切れを読んでから、ぐちゃぐちゃに丸めてポケットにしまった。
「おーい、サムイ~。今日も独りで昼食か~?」
「うるさいな……どうせお前も独りだろ?」
「まぁな~、ほら、昼食食べようぜ~」
「へいへい」
サムイは先ほどの紙を思い出して友人に話しかける。
「なぁ……もし、十分後に異世界召喚されたらどうする?」
「はぁ? そんなことあるわけないだろ?」
「もしもだよ、もしも」
「うーん、そうだな~可愛い女の子と一緒に過ごしたいかな~」
「そうかそうか~、普通にイイ奴そうだから書き直し」
◇ ◇ ◇
「なあ、もし十分後に異世界召喚したらどうする?」
「はぁ? そんなことあるわけないだろ?」
「もしもだよ、もしも」
「そうかぁ……俺なら……可愛い女の子をボコボコにして……げへへ」
「……」
「……」
「友人キャラ、設定丸ごと消しとくか」
「ちょ、ま」
◇ ◇ ◇
「今日も独りで昼食……まあ、ボッチの俺にはこれぐらいがちょうどいいか……便所飯でもしよう」
そしてサムイはトイレに移動する。
「ごめん、トイレ行ってたら異世界召喚とずれるから書き直しで」
◇ ◇ ◇
「なんだ……? 紙切れ……?」
サムイは胸ポケットから一枚の紙切れを取り出す。
「……? 『異世界召喚まで残り二秒』……? なんだこれ」
そう呟いた時には時遅し、クラスの中には大きな魔法陣があった――――
「うっわああああ、な、なんだこれ!」
「魔法陣!?」
「まさかー、異世界召喚かーなー。うーれしーいなー」
「最後の奴、ちょっと頭おかしいから書き直し」
◇ ◇ ◇
「うっわああああ、な、なんだこれ!」
「魔法陣!?」
「きゃーーー」
「ま、まさか……この『異世界召喚まで二秒』って……本当に!?」
――――気が付けば、目の前に美しい女性がいた。
「私は女神、あなた達には世界を救っていただきたいのです――――って言えと主人公に脅されました」
「チッ、女神は作者権限の効果を受けないって設定か……」
「ええ、貴方は先程から『作者の力』を乱用しているようですが……それは借り物の力、私は『本物の作者』から『主人公の作者権限を無効化する設定』を受けています。」
「ふふ、ふははは、あーはっはっはっはー」
サムイは突然、笑いだす。その様子に女神は「なんだこいつ」と言いそうな顔をした。
「なんだこいつ」
実際に言った。
「ふふ、悪いな。作者に『意味ありげな感じで高笑いする設定』を仕組まれていたものでね」
「ならばいいでしょう、少し貴方とはお話をする必要があるようです」
女神とサムイは向かい合いながら、座布団に座る。
「そういえば貴方のクラスメイトは……?」
「作者が『絡んでくると面倒そうだから元からいない設定にした』らしい」
「なるほど」
二人は緑茶を飲んで落ち着いてからオデンを創って、食べ終わってから本題に入った。
「アンタは、俺が『作者権限を借りている主人公』だと思っているのか……?」
「ええ、その通りです」
「ふっ、そいつは違うな」
「なんですって……?」
「俺は『作者権限を持っている主人公』という『設定のキャラ』でしかない。 簡単に言えばな……俺は『書き直しをする設定』を持っていないんだ」
「嘘ですね、貴方は先程から書き直しをしている。これは作者権限からのものでしょう?」
「いいや違う、本当の作者権限と言うのはな……一々『書き直し』って言わないんだよ……本当の作者権限は――――」
「――――これだ、わかったか?」
「……? 何も起こりませんが?」
「そうだ、何も起こらないんだ。だけど実際はな、今の空白の間に貴女は『裸踊り』をしていた」
「なんですって!? そんなことした覚えはありません!」
「その通りだ! 女神の記憶すら操作されている。これこそが『作者権限』。そもそも無かったことになっているんだ! 主にR18になりそうだったから消したんだ!」
「そ、そんな……私が裸踊り……」
「貴方の『裸踊り』の事実すら書き換えられている。今ではこれは『事実』ではなく『主人公の妄想』として片付けられている――――『という作者が創った設定』だがな」
「でも……あなたは確かに書き直しを……」
「そう、俺は何度も書き直しをした。だけどな、この世界にはある名前が付けられているんだ」
「それは……?」
「『もし、主人公が勝手に作品を書き直す能力があったら、どこに辿り着くのか』」
「……」
「この問いに答えは無い。何故なら――――」
主人公そのものが作者の創り出した存在――――想像だからである。
ゆえに主人公が作品を書き直したところで、それは『主人公の形をした作者』が書いた作品である。
主人公=想像
主人公=作者
作者=主人公
ゆえに、
女神=想像
女神=作者
作者=女神
そして簡潔に答えをまとめよう――――
――――――――結局この話、何を伝えようとしたんだっけ? by作者
解:足先が冷えてきたから『どうすれば温まるか』を書こうとした。
主人公は……思いつかなかったので