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第一話(後編) 転生後

長くなってしまいました。

 アキトは転生の扉に入った後、魂だけの存在になり、新たな生への流れに流されていった。


 ◆◇◆◇◆◇


 とある貴族の家では女性が産気づいていた。

 彼女はカレン=サンスタル。

 その傍らにいる男性は夫のバラン=サンスタル。

 彼等は街の中流貴族のサンスタル家の夫婦だ。

 カレンは助産師に手伝われながら男の子を生んだ。

 この男の子がアキトの転生後だ。

 アキトはカレンに抱かれながら産声を上げている。


「可愛いわね。生まれてきてくれてありがとう」


「ああ、良く頑張った。名前は前から決めていた通りにアキトにしよ

 う」


 と、両親の祝福を受けながらアキトの第二の人生の始まった。


 ◆◇◆◇◆◇


 15年後。


「はっ!はっ!はっ!」


 アキトは庭で剣術を磨いていた。今は木刀で素振り中だ。

 アキトにとって剣術と魔法の鍛練は12歳からの毎日の日課だ。

 それには理由がある。

 バランとカレンは冒険者であり、バランは剣術系の職業(ジョブ)、カレンは魔法系の職業に就いているからだ。


 ―――スパルタだなあ、けど、もう慣れたし、異世界に来た事が実感できる。特に魔法は最高だ。

 と、アキトは思う。


 今日の鍛練は終ったので、アキトは汗を拭きながら家の中に入る。

 両親が冒険者なだけあって、広い家にはたくさんの武器や防具が並んでいる。

 アキトが水分をとっていると、


「アキト、話があるの。ちょっと来てー」と、テーブルにいるカレンが呼ぶ。


「お母さん、何?話って?」と、アキトが言う。


「私とお父さんで今日から魔物討伐の依頼に行ってくるから一週間空けるけど、ミラをよろしくね」と、カレンが言う。


 アキトにはミラという妹がいる13歳だ。


「分かったよ。気を付けてね。まあ、お母さん達に敵う魔物なんてあんまりいないけどね。」と、アキトは言う。


 サンスタル家は元は貴族ではない。

 バランとカレンは同じギルドに所属するパーティーだった。結婚後、たくさんの功績を樹立しまくり、貴族になったからだ。

 それほどの強さが二人にはあるので、あまり負けないのだ。


「後、適正職業検査に行ってみたら?ギルドにいる職業管理人のアイリスさんの所でやってるよ」


「もうすぐ16歳だし、しっかりとした判定が出るはずよ」

 と、カレンが言う。


「じゃあ、行ってくるよ」と、アキトが言った。


「ゴーン、ゴーン、ゴーン」


 正午の鐘が鳴った。

 アキトは家を出て、大通りを進んでアイリスさんの所に向かっていく。


 ―――アイリスさんってどんな人なのだろうかと、アキトは思う。


 大通りは武器屋や鍛冶屋、アイテム屋等、ゲームでお馴染みの店がたくさん並んでいる。


「ぐぅ~」と、アキトのお腹が鳴った。


「お腹すいたなあ」と、アキトが呟いた。


 なので、道中、アキトは露店で具だくさんのチャーハンを買って食べた。


 ―――美味しかったな。ごちそうさまでした。

 と、アキトは心の中で言った。


 アキトは大通りの一番奥にある街ギルドに着いた。

 受付嬢の人達や冒険者の人達がいる。

 アイリスさんがいるという場所に行くと、アキトはめちゃくちゃ驚いた。

 アイリスさんは前の世界の教会の管理人の少女だったからだ。

 アイリスは、整った顔立ち、すらりと伸びた長身の女の子で肉付きのいい太股、腰まで伸びた銀髪、程よい大きさの張りのある胸が主張している。

 アキトは冷静にアイリスを見ると胸が高鳴った。

「あなたがアイリスさんだったんですね!?」と、アキトが言った。


「そうですよ。アキトさんが教会から転送したあの場所がこのギルドの地下なのです」と、アイリスが答えた。


 ―――アイリスさんって何歳なのだろうと、アキトは思う。


 彼女はアキトが転生する時と外見が変わっておらず、もう15年たっているからだ。

 アキトは勇気を振り絞り聞いた。


「アイリスさんって何歳なんですか?」


「私はエルフで長生きなので、人間の歳で言うと15歳位です

 よ」とアイリスは答える。


 ―――よしっ!同じ歳だ!とアキトは心の中で喜ぶ。


「ところで、どうしてアキトさんはここにいらしたんですか?」

 アイリスが聞く。


「適正職業検査を受けに来たんです」

 たアキトが答えた。


「それでしたら、この紙に血を垂らしてください。そうすると、ステータスと適正職業が出ますので」そう言いながらアイリスはアキトの紙を手渡す。


 それにアキトが血を垂らすとステータスと適正職業が浮かび上がってきた。

 DNA的なもので判断しているのかなとアキトは思う。

 だとすれば、あの両親を親に持っているのだから強いといいなとアキトは期待した。


 ―――やっぱり剣術系か魔法系の適正があれば良いかな。いや、特殊系も捨てがたいな。まあ最初はファイターとかにつくのが無難かな。


「どれどれ」とアキトが紙を覗きこむ。


 しっかりと浮かび上がった紙。目に入ったのは適正職業が『ニート』となっていたことだ。


 ―――ニート………?ニートってあのニートだよな……。


 アキトは期待を裏切られたからなのか前世でのゲーム脳でも知り得ない新しい職業だったからなのかぷすぶすとショートしてしまった。


「すごい!何ですかニートって初めて見ました」

 と、アイリスが驚く。


 それに続けて、

「アキトさん!ステータスを見てください!」とアキトに言う。


 アキトは落胆した気持ちを押さえつけ泣く泣くステータスを見る。

 そこには筋力SS、器用さS、丈夫さS、敏捷性A、賢さS、精神力SS、運A

 と書かれていた。


「うおおお!!!」アキトは歓喜の雄叫びを上げた。


 ―――やっぱり運命の女神様は僕についていたようだ。

 と感慨深くアキトは感じた。


「まず、ステータスの説明します」


「この紙に出るステータスというのは、限界値です。上からSS→S→A→B→C→Dの順番で良いです」

 と、アイリスが説明を始める。


「アキトさんの場合はとても強いですね」


「最初の場合、運以外は全てDになっていて、ステータスをあげるには魔物を倒したり、鍛練したりして経験値を貯めてレベルアップすれば徐々にステータスが上がっていくという感じです。しかし、アキトさんは日頃から鍛練を積んでいらっしゃったみたいなので、全体的にCまで上がってますね」


 アキトは心から鍛練をしていて良かったと思う。


「職業に就くと自身のステータスが自由に見ることができ、念じると、目にスクリーン状になって映ります」


「ありがとうございます。ところで『ニート』というのはどういう職業なのですか?」とアキトが聞く。


「私にも分かりませんが、職業に就き、職業レベルをあげると、ジョブ経験値が溜まり、そのジョブ経験値を使い、色々な職業スキルを解放していけるので、アキトさんは『ニート』しか適正がないですが、未知数な職業なのでワクワクしますね」と、アイリスが嬉しそうに説明した。


「今から職業に就く契約をしますがよろしいですか?」と、アイリスが聞いた。


「はい!僕が世界最強の『ニート』になってやります!」


 と、意気揚々とアキトは『ニート』になるという、元の世界では爆弾発言にもなりかねない、おかしな宣言をした。


「では、この転職水晶に手を置き、先程出た適正診断書に書いてある転職の宣言をしてください」と、アイリスは言った。


 アキトは宣言をする。


「我、『ニート』に成りし者なり。我に力を!我に怠惰を!」


 すると、転職水晶が淡く光り、その光がアキトの胸に吸い込まれていった。


「転職が完了しました」と、アイリスが言う。


 アキトは晴れて『ニート』になった。


「ありがとうございました!頑張ります!」

 と、アキトは言った。


「私を守れるくらい強くなってくださいねっ」

 と、少し照れながらアイリスが言った。


「が、頑張ります」


 不意討ちのデレを喰らった免疫のないアキトはドキドキしながら足早に家に帰ったのだった。

誤字脱字があるかもしれません。

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