第1話 勇者の旅立ち
遂に始まりました。
勇者ソルト&魔法少女ペッパー!!
第1話はプロローグとして、勇者ソルトが別世界に飛ばされる場面です。
第一話
勇者の旅立ち
とある日の朝。
一人の青年は、多くの人々に囲まれていた。
そこにはかつて共に旅をした二人の仲間もいた。
「勇者ソルト。お主、本当に良いのか?もう、魔王の脅威は去ったのじゃぞ。」
「...私は、今回の旅でまだまだ学ぶべき事が沢山あると知りました。魔王がいなくなったからとは言え、私の修行は終わりません。それに、もっとこの世界を知りたいのです!」
白く長い髪と髭を生やした国王の問いかけに、勇者ソルトは笑顔で応えた。
赤い癖のある髪に緑の瞳を耀かせ胸を張っていた。
「ソルト!!」
二人の旅の仲間、戦士のジャックと魔法使いで紅一点のカリンが同時にソルトの名を呼んだ。
「本当に行っちゃうの?」
「あぁ。」
カリンが寂しそうにソルトを見つめ、すかさず抱きついた。
「私!ソルトが好きっ!ずっと、ずっと待ってるから、無事で帰ってきてね。」
ソルトの胸に顔を埋めたカリンの目には小さな涙が浮かんでいた。
ソルトは一瞬戸惑ったが、心を落ち着かせて微笑んだ。
「ありがとう、約束する。」
「ソルト!...くたばったらただじゃおかねぇぞ。」
ジャックは涙を堪えながら震えた声で言った。
「あぁ!」
ジャックの言葉に自信を持って応えたソルト。
カリンはソルトから離れると、ポケットからあるものを取り出した。
「手を出して。」
「これは?」
「お守り。ソルトは赤、私は青、ジャックは緑。これをつけていれば、私達ずっと一緒よ!あなたは一人じゃない、私達がいるから...」
「そうか、ありがとう。大事にするよ。」
カリンはソルトの腕に赤いミサンガをつけた。
カリンの腕には青いミサンガが、ジャックの腕には緑のミサンガが、つけられていた。
「あなたはいつでも一人じゃないの。私たちがついてるから。」
ソルトは皆を見回した。
「みんな、ありがとう。」
勇者ソルトは凛々しい顔で旅立ちの前に感謝の意を述べた。
「勇者ソルト、気を付けてな。」
「国王様もお元気で!では、行ってきます!!」
勇者ソルトは多くの人々に見送られこの国を去っていった。
皆の目にはその背中が、18歳とは思えないほどに大きく頼もしかった。
「元気でねー!」
「いつでも帰って来いよ!」
「待ってるからーーー!」
多くの仲間や民の声援を浴びてソルトは旅立って行った。
ソルトが旅に出た次の日の夜。
王国の空を怪しい雲行きが包み込む。
雷が鳴り始めた。
カリンは心配そうに空を眺めていた。
その時、腕のミサンガがほどけた。
それを見たカリンは不吉な予感を感じた。
「ソルト...」
その頃ソルトは激しい雨と風の中をゆっくりと進んでいた。
「くっ!早く、この雨風を凌げる場所を探さなければっ」
激しい雨と風がソルトの体を叩きつける。
それでも、ソルトはじわりじわりと歩み続ける。
何かの気配を感じ取ったソルトは空を見上げた。
「な、なんだあれは!!」
ソルトはその光景に思わず立ち止まった。
彼の目に映ったのは大きく渦を巻くの灰色の雲とおぞましいオーラを放つ濃い黒と紫色の球体の物質だった。
その刹那、ソルトの体が宙に浮き始めた。
ソルトは近くの木にしがみついた。
「何なんだ...あれはっ!体が持っていかれる。誰か...助けてくれ!」
しかし、ソルトを飲み込もうとするその力は次第に大きくなっていった。
ついには、木々が掘り起こされ、地面が軋む音と共に剥がされた。
ソルトのしがみついた木は他の木よも根がかなり頑丈だったようで、暫くは地面に植わっていたがそれも時間の問題だった。
「う...俺は、こんなところで、終われないっ!」
ソルトの脳裏にジャックとカリン、国王や皆の顔が浮かんだ。
決して飛ばされまいと必死で木にしがみついていたソルトであったが、雨で濡れた樹の表面で手は滑りやすくなっている。
そして、雲の中の怪し物質が彼を引っ張り、強風がそれをサポートするようにソルトを激しく押し付けている。
そして、遂に...
「あっ」
ソルトは耐えきれず手を滑らせてしまい、その身は強大な力で謎の暗黒物質の中へと吸い込まれて行った。
その暗黒物質はソルトの飲み込むと、何事もなく消えていった。
それだけではなく、先程の嵐が嘘みたいに去り、清々しいあおぞらが一面に広がっていた。
第1話ではよくあるファンタジー系ですが、
この後からは登場人物も増え、コメディ要素も
ふんだんに使う予定です。
バトルもありますが、基本的に緊迫感はありません!