プロローグ2
完全に次の話を投稿するのを忘れてました、すみません
「ここは……?」
先ほどとは景色が一転して真っ白な世界が彼の目前に広がる。周りには何もないが、彼以外にもう三人ほどがそこに困惑の表情で佇んでいた。
一人はウェーブのかかった茶髪の女の子。
なんとなく気が強そうな感じがその顔から見て取れる。
特徴といえば、目がキリッとしていてにらめっこでは絶対に相手にしたくないと思うことと、美形であること。どこぞのモデル雑誌のカバーに乗っていそうな高身長の十六、十七ぐらいの女子高生だろう。
二人目は少年というよりは青年といったほうがしっくりくるようなイケメンの男。
ただ、少し幼さを感じれる顔から彼が高校生ぐらいであろうということはわかる。他にも、正義感が強そうでまっすぐな性格だということは簡単にわかる。剥斗とは真逆の性格だ。
こちらも高身長、多分百八十はあるだろう。体つきはマッチョとはいかないが細マッチョと言われる部類には入るはずだ。
三人目は小柄な女の子。
彼が通う高校の制服を着ているため高校生だと気づくが、それがなければ中学生としか思えない。
身長は150ぐらいだろうか?童顔だがなぜか胸は大きい。美人というよりは可愛いと言う方が言い当てている。
「あー、お前の名前は?」
「ひっ!」
「あー……」
剥斗が声を発する度に彼女、三人目の女の子は大げさに怖がる。
それが面白くて少し虐めようかと考えた彼だったが現状が現状なので一旦その考えは保留にしておこうと心の中で欲求を塞き止めた。
「あのな、初対面に人にそんなに恐れられてもこっちはいい気になんないんだが……」
「別に初対面じゃないもん……」
「なんかいったか?」
「ひー!すみませんすみません!」
「いや、怒ってねえから……」
これじゃ会話が成り立たねぇ……。
彼は小さくため息をついた。
少しして彼女の震えが終わったら、彼は近づいて怯えるかのようにビクッと体を震わせた彼女の頭に手を置いた。
クシャクシャとまるで犬を撫で回すかのように頭をかき回す。
「なっ、何するんですか!」
「俺が怖くないってことを示してるんだよっ」
「やめてください!この変質者!」
ピキッ
「おい、いまなんつった?」
かき回していた手がいつの間にか拳のに変わっており、彼は両手でグリグリと彼女のこめかみを押した。
「痛い痛い!痛いです!」
「じゃあ訂正しろ!」
「わかりました!訂正します!」
「よろしい」
彼は拳を離し---
「どっかいけ、この不良!」
「不良じゃねえよこのクソ小学生!」
「高校生です!それと、その握った拳を私に近づけるな---痛い痛い痛い!」
グリグリの刑を気がすむまでやり終えた後、彼はもう一度会話を試みた。
「なあ」
「なんですか変質不良」
「ああ!」
「訂正します!すみません!」
「はあ……お前の名前は?俺は剥斗だ」
「私は京子です。道永京子」
京子と名乗った女の子は睨みつけるような視線で剥斗を見るが、彼は気にしていないように振る舞う。
「そうか。で、京子はこの状況についてなんか知ってることはあんのか?」
「いえ、よくはわからないです……」
よくわじゃらない、か。
彼は彼女を見つめる。嘘をついている風には思えない。だが、よく知っていると言うのは違う言い方で「少しだけなら知っている」と言っているようなものだ。と言うことならば、彼女はこの状況に対して「少しは理解を示している」ということになる。
「なら、少しでもいいから教えてくれ」
「……わかりましたです」
彼女は現状をポツポツと喋り始める。
曰く、ここは神様と下界に住む人間たちが会うための場所だとか。四人集まるまで彼女たちは待たされていて、剥斗が来たことによってその神から説明があるはずなのだとか。
「……信じられねぇ」
「そう言われても本当のことなんです!」
「はいはい、別にお前を信用してねえわけじゃねえから」
しかし、神か……。
彼は今朝の事を思い出す。
ドアから踏み出した瞬間に出現した幾何模様の何か。あれは、人が行ったものとは言えないのは事実だ。もしあれが神の仕業と言われたら納得がいった。
しかし、行う意図が理解できなかった。
「俺らはなぜ呼ばれたのか……」
『それには私がお答えします』
空から降ってくる人の声とは非なるもの。
そこに姿を現したのは中性的な顔立ちながらも美女、美男と言える神々しいオーラのようなものを出した人物がいた。
「お前は?」
剥斗はこの人物に見とれていた他にものたちとは違い、その人物との対話を望んだ。
何せ、皆この神のような人物に見惚れて動こうともしないのだ。あまり自分から動きたくはなかった剥斗だが、しかたがなく今回だけはこの状況を理解するためにも自分から積極的に動くしかないと思った。
『私はお前たちが言う神という存在だ。名は無いが創造神をやっている』
創造神は上から目線の言い方だが丁寧にそう口にする。
だが、剥斗は違う。相手が神だろうがなんだろうが---
「名前がないのはめんどいから今日からお前はシロな。お前、髪も肌も全て真っ白だから」
---と、普通にタメ口を使う。
『シロ、か……気に入った。私は今日からシロと名乗ろう』
創造神、改めてシロはその氷のとうな無表情な顔を動かし、微笑みのようなものを浮かべる。
それは見惚れることは必然であろう美しさを持っていたが、そんなことを機にする剥斗ではない。
「で、シロ。お前はなぜ俺たちを?」
単刀直入にいうのが彼の流儀だ。その方が本題に素早く入ることができ、余計な会話や面倒ごとが起きずに済むからだ。
まあ、それが最善の選択といえる訳ではないが、確かに結論には早く至る。
『私たちは君たちを異世界に連れていくためにここに呼ばせてもらった』
「異世界に?なぜ?」
『簡単にいうと、できた異物を排除してもらうためだ。コンピューターにウィルスが忍び込んだらそうする?』
「俺らはウィル〇バスターかよ……」
『そういう訳だ』
「なた、俺たちは勇者になるってことか!」
突然大声を出したのはイケメンの男だった。
彼の声にはどこか喜びが感じられた。
『君は……』
「蓮華一暉です」
『一暉だったな。君のいう通り、あちらには勇者として召喚されてもらう』
「ということはチート能力も!」
『渡すさ』
「あのー……いまいち状況についていけねえんだが」
「私もよくわからないんだけど」
そう声を出したのはモデルのような女性だった。
「あ、名前がまだだったわね。私は優希明日。あしたと書いてアスと読むわ」
明日はそういってこの場でもう一人の女である京子の方を向く。
「わ、私は道永京子です!年齢はこれでも十七歳です!」
「俺より年上!ありえねぇ」
「うるさいです、この後輩!」
ぷんぷんと怒ってるアピール。
可愛いと思ったのはこの場にいる全員だろうが、それを声に出すと拗ねてしまいそうなのでグッと喉のあたりでこらえておいた。
「で、なにが起きてるんだ、今は?」
くるりと一回転して剥斗はシロの方を向く。
『簡単にいうと、君たちをあちらに勇者として召喚されてもらう際に私からの餞別としてそれぞれ周りよりも優れた、強力な力を二つほどもらえる、という話をしていたのだ。その餞別は異物、つまりは魔王を倒すための能力だ。餞別は全て使い方次第では最強になれる能力だ。どう使うかは、君たち次第だが』
「二つももらえるってそれはどんな能力なんだ?」
『例えば、虚無魔法というスキルを持ったエルフの勇者はその魔法で触れたものすべてを消すことができたらしい。他にも、変換能力といって〇〇変換と書かれたスキルはその〇〇を自分のステータスに変換することができる』
「それだけ聞けば勇者一人を送って魔王を倒すことが可能なように思えるが、四人も送るってことは何かを相応な対価が必要なんだろ?」
『勇者が四人の理由はいたって簡単で人族、獣人族、妖精族、魔族を代表する勇者を送る必要があったからだ。どの種族になるかは運次第だが。しかし、能力に其れ相応の対価が必要なのは間違いない。先ほどの虚無魔法は質量の百倍の魔力を持ってして消すことができ、それを使用するのに必要な魔力を持つのは神にもほとんどいないであろうためそのエルフは自らの寿命を魔力に変えて能力を行使しなければいけなかった。他にも、魔力を他のステータスに変換する能力などはステータスの数字を一変えるのに百を消費しなければいけなかった。それだけでなく、減った魔力は戻ることがないため、使い道も少なかった』
「……それだけ聞くと全く使えないような能力にしか聞こえないんだが……」
『そうとも言える』
「言えちゃうのかよ!」
『まあ能力云々は運任せではあるが、これから君たちにはこのカードを引いてもらう』
「カード?」
そういってシロが手元に出したのは二十二枚のカードであった。
カードはすべて裏面を向いており、そこには何の模様もなく真っ黒にクレヨンで塗りつぶされているかのようだった。
「それはんいよ?二十二枚ということは、タロットかしら?」
ふと声を出したのは明日だった。
彼女はこの二十二枚のカードをタロットの枚数と思ったらしい。
『アルカナと呼ばれるカードだ。これは君たちに渡す能力とは関係ない、まぎれもないチートだ。その能力は間違ったことに使われれば世界を破壊することも可能だ』
「そんなカードを私たちに渡してもいいわけ?」
『そうでなければ魔王に勝てないからな。だが、きちんと封印が施されているので使いたいときに使える訳ではないが。条件を満たし、心から力を望んだ時のみにしか顕現しない力だ』
そういい、シロは一人一人を彼の前に呼んだ。
まず最初に呼ばれたのは京子だった。
「どれでもいいのですか?」
『ああ、構わない。どれを引こうが結果は変わらないのだから』
「わかったです」
彼女は可愛らしく「えい!」とかけ声を出して一枚カードを引く。
結果は---
「女教皇、です?」
「何だそれ?」
描かれていたのは神秘的な女性だった。
意味は知的、聡明だとか。
次に呼ばれたのは一暉だった。
彼はためらいなくカードを一枚抜き、結果を報告する。
「世界、って書いてある」
世界。意味は完璧。
それを知った一暉は小さくガッツポーズをして元の場所に戻る。
三人目は明日だった。
彼女は「どれにしようかな〜」と声に出して選んだ後、その結果を報告した。
「私は運命の輪ね」
運命の輪。描かれているのは三人の美女だった。
意味は幸運など多数。
最後に引くのは剥斗だ。
彼は適当に一枚引き、そのカードを小さく笑ってしまった。
「俺は愚者だそうだ」
そこに描かれていたのは旅人風の青年。
意味は自由と無限の可能性。
「俺にぴったりかもな」
彼はそのカードを気に入ったのか、丁寧にズボンのポケットに仕舞い込む。
『では、これより君たちを異世界に送らせてもらう』
シロのその言葉を最後に、彼ら四人は未知なる世界に送られたのであった。