青木青花店 登場人物
青木青花店 登場人物
柚木一馬
36才
176㎝/65kg
駅の通りに面した小さな花屋「青木青花店」を営む青年。
よれよれの古着のTシャツ、ボロボロのジーンズ、深緑のエプロンに黒い長靴か薄っぺらいサンダル、乱視用眼鏡がいつものファッション。
愛飲している煙草はキャメル ブラック。
言葉使いは粗野、基本的に無口ですぐに苦笑いかあきれ顔をしてはぐらかす癖がある。
超がつくインドア派で、休業日はPCに向かって何かをずっとしている。
一人称は「俺」。呼び名は「店長」「柚木君」「柚木」
この店舗自体は、以前ここで花屋をしていた青木夫妻から譲ってもらったもの。
この花屋には、その名前にも関わらず、青い花が一切ない。
本人自身が、青色が大嫌いである。
アルバイトが青いものを身につけていると、苦言を呈する程である。
快晴の日は、青空を見たくないために下を常に向いて歩く。
ただし、飼っている白猫の首には真っ青なリボンをつけている。
花屋は五年前からやっている。
その前の過去について、一切語ろうとはしない。
童顔なこともあって、あまり聞かれないのだが、花屋には警察関係者や裏社会の関係者など、少し物騒な人物が訪れることもある。
彼らは何らかの依頼をしていくのだが、その内容は一切明かされない。
閉店後、柚木はスーツを着て外出することもある。
その昔、ある製薬会社で働いていた優秀な研究員らしいが・・・・・。
十年程前に起こった、製薬会社の研究施設爆破事故に関与した重要人物。
神崎すみれ(かんざき すみれ)
24才
169㎝/59kg
青色が大好きで、よく青い服を着ては柚木を怒らせる。
ボーイッシュな格好が好きで、基本的に服は動きやすさや着心地で決める。
男っぽい性格で、余り化粧っ気もない。
休校日にジーパンにTシャツ、ノーメイクで着たすみれを見た柚木にもうちょっとかわいくしろよ、と言われた程のラフさ。あげくの果てには「図体がでかい」とほぼ初対面で言われてしまったが、別に気にしていない。嫌なことがあっても、一晩寝れば整理がつくタイプ。1人で旅行に行ったり、出かけたりするのが好き。
コーヒーが大好きで、ほぼ毎日飲んでいる。自宅にはミルまである。
カッとするとつい英語で喋ってしまう。寝言は英語。
一人称は「私」。呼び名は「神崎」「神崎さん」「お前」「すみれ」「Viola (ヴィオラ)」
都内国立大学の英文科3年生。
アメリカの大学から今の大学に編入した。
アメリカの大学での専攻は薬学。卒業間近にして全く異なる専攻に編入した。
前の大学で取得した単位と合わせて、卒業に必要な単位を履修し終わっている。
都内の出版社に就職も決まっている。必修単位は殆どとってしまったので、実質は大学に行く必要があまりない。そのため、バイトをたくさん入れて生活費や学費を稼いでいる。
そうした費用は叔父が振り込んでいるのだが、すみれは殆ど手をつけていない。
もともと下記の生い立ちのため、英語が堪能。多少難しいビジネス会話でも問題なく英語で受け答え出来る。
就職後は通訳や翻訳の職業に就く予定である。
幼稚園の時に両親を事故で亡くし、母方の妹である叔母夫婦に引き取られた。
アメリカに住んでいた叔母夫婦に連れられ、高校生までアメリカで育つ。日本語を忘れないように、日本語と英語を日常的に併用しながら育てられた。その時はViola (ヴィオラ)と呼ばれていた。
すみれは知らないが、叔母はある組織の捜査官であり、ある案件を長い間追っていた。すみれはそんな叔母から、射撃や体術、ガーデニングなどを教えてもらい逞しく育った。
義理の叔父は日本大使館に駐在する外交官である。
すみれが17歳の時に、叔母が捜査中に死亡する。叔母の死をきっかけに、すみれは叔父に薦められて日本に戻り、日本の高校に転入した。叔母の死には多くの謎が残っており、すみれは叔母の事故死をずっと疑問に思っている。
日本文学の美しい文体が好きで、日本の小説を読むのが小さい頃から大好き。暇さえあれば文庫本を読み漁る柚木とはこの点ではものすごく趣味が合っている。ただ、一文を暗記するほど読みふける柚木はちょっとレベルが違うなぁ、と思っている。
店の奥にある、一階のダイニングに文庫本が山のように積まれているので、見たことのない本があると、よく借りている。
実は小さい頃、アメリカで柚木に会ったことがある。
その時は柚木は茶髪や金髪にしていたので、すみれは「カズ」が柚木だと気付いていない。
椿香
45才
177㎝/61kg
表向きは貿易会社ファルファッラのCEOである。名門、帝都大学を卒業後に企業し、運営する会社は常に利益を算出する手腕を発揮している。
容姿端麗、頭脳明晰である。性格はやや不遜で大胆。一見すると華奢なように見え、多くの人間は花のある顔立ちもあって「モデルのよう」と見惚れる。
大きな瞳と可憐な顔立ちだが本人に「女性のよう」と言ってはいけない。椿はその言葉を言われようものなら、容赦無く殴りかかる。また、その容姿に反するようなドスの効いた低い声を持っており、その声はやけに耳に残る。言葉遣いも荒っぽく、そのギャップに大概の人は驚く。時に喧嘩っ早く、獰猛な一面を持ち合わせる。
ちなみに滅法喧嘩には強いらしく、どんな大男でも椿にはそうそう勝てないという。
実年齢は既に40を超えているらしいが、詳しいことを知る人はいない。知られている歳も推定である。髪を下ろすと幼く見えてより容姿の女々しさがます、という理由で就業中は前髪を後ろに撫でつけている。
多くの情報を握り、その情報を柚木に一部流している。ただし、情報の見返りに自分が投資している製薬会社への助言などを柚木に求めている。
また、法律の厳しい日本でも、柚木が必要と言えば銃やナイフ、闇医者などをすぐに用意出来る人脈やツテを持っている。
九頭見は表・裏双方での片腕である。人前では「九頭見」、プライベートでは「勍一郎」と読んでいる。九頭見とは数十年以上の幼なじみである。
その実体は日本最大の「組織」、源流会の若頭。組長が病であるため、殆どを椿が運営している。それまで武闘派だった組織を椿は存続のために一代で頭脳派に仕立て上げ、合法的な資金繰りを可能にした。現組長の多田勝好がたまたま椿が高校時代の時に拾い、その能力を見込んで養子にした。多くの関係者には次期組長と囁かれている。
反発勢力もいるが、非常に人情深く部下を大事にするため、支持者が多い。多くの者はその手腕に舌を巻く。
危険人物として警察に監視されているが、工作は巧妙で一度も尻尾を掴ませていない。「表舞台で生きていたら、相当なやり手として騒がれていただろう」と言われている。
背中には、一面に椿の草叢で戯れる虎が掘られている。この入れ墨を取って「虎椿」「赤虎」という異名がある。この異名は冷静で潔癖な外面だが、報復や処理は徹底しどんなに残虐で困難な事もやってのけ綺麗に片してしまう、「血も飲んで残さない」という畏怖も込められている。
銃で撃たれても、刺されても椿は死なないという噂が半ば伝説のように広まっている。
数年前から柚木に接触し、柚木の「プロジェクト」に協力している。
椿自身も、なにか思惑があるようだが・・・。
「あの野郎、疲れて寝てやがんのか」
「…ったく、仕方ねぇなぁ」
「アラアラアラアラ、柚木君ったらお優しいことで」
「さぁて、俺と桐生サンはお片づけ、お片づけ」
「オイ、何正義面してやがる。俺はなテメェみたいな糞野郎なんざ消えちまえって思うがなァ」
「こりゃ、薔薇を手向けねぇとなぁ」
九頭見勍一郎
44才
184㎝/74kg
表向きは貿易会社ファルファッラのCEO付き秘書(秘書室室長)である。椿に影のように従う有能な秘書。仕事も早く、迅速・確実。椿の難しい要求にも応えることのできる辣腕秘書。また、椿の車の運転手も兼任している。プライベートでは椿とため口で話している。その時は「椿」と呼んでいる。
椿と違って言葉遣いも柔和で、椿のフォローをすることが多いが、無表情だと何とも言えない重圧感がある。背も高く、性格も悪くないため、社内の人間や女性には人気がある。もちろん人当たりもいい。
近視があるらしく、たまに眼鏡をかけている。
武術に長け、マーシャルアーツ四段、剣道七段。他にもフェンシングも得意である。
青木青花店には柚木の遣いで現れることがしばしばあり、その度に美味しい手土産を持ってくるという気配りをする。
裏の世界でも椿の補佐として付き添い、「赤犬」「赤鷹」という異名がある。九頭見の知らないことはない、と言われどのような隠し事も九頭見には筒抜けであると恐れられている。「椿の犬」とも言われる。また、どんな汚い仕事も何も躊躇わずに遂行する冷徹さもあり、椿だけでなく九頭見にも畏怖を抱く者は少なくない。
ただ、いつ頃から九頭見が椿に付き添うようになったのか、ちゃんと思い出せる人間はいない。
「依頼があって来たのですが…おつかれのようで……また今度にしましょうかね…」
「お電話有難うございます。ファルファッラ本社秘書室、九頭見と申します」
「その、五月蝿い口を、どう塞いでやろうか」
「椿、オヤジがそろそろ顔見せろって焦れてるぞ」