縁側で恋を知る~悟ちゃんside~
楽しくて、悟sideをつい書いちゃいました!
暖かい目でお読みください。
よろしくお願いします。
1/7少しだけ加筆しました!
俺には何よりも誰よりも大切な人がいる。
それこそ、目に入れても痛くないくらい。
…これはもう父親の心境だろうか。
とにかくそれ位、可愛くて可愛くて仕方ない。
食べても、怒ってても、泣いてても、むしろ可愛い。
しかし、ベタ惚れな俺はずっと一緒に居た為か油断していた。本来の彼女の性質を見過ごしていたのだ。
そう、愛しの彼女にはとてつもなく厄介な問題がある。
普通、四六時中一緒にいる男女がなんの関係もないと思うだろうか?
ガキの頃ならまだしも、高校大学とずーっと一緒。
さらには俺が就職してからも俺の実家で三日と空けずに会っている。
これで好きじゃないとか、あり得ないだろう。
しかし、彼女は勘違いしていたらしい。
よりにもよって、俺が彼女の姉に惚れていると思っていたんだと。大真面目な顔して語っていた。
…そう、彼女は信じられないくらいド天然なのだ。
「……普通、寝るかなぁ」
スヤスヤと寝息をたてる横顔を眺め、俺は盛大にため息をついた。
縁側に腰掛けている俺の膝の上には、歩美の頭がコテンと置かれ、そこからスースーと寝息まで聞こえてきていた。
「いやいや、さっきまでバッチリ起きてたじゃん」
一人で突っ込んでみるが、もちろん応答は無い。
つい先ほど、歩美が突然家にやって来た。
何か言いたそうにモジモジしていたので、好物の和菓子を勧めながら、やんわり聞いてみた。
すると、白状したのだ。
俺が歩美の姉が好きだと思っていたと……!
まぁ、結果として、それは勘違いだったと理解してくれたし、俺の気持ちも伝えられたから良しとしよう。
……つか、本当に伝わってるのか?起きたら忘れてるとか、夢だと思ったとか、ないよな?!
……こいつならあり得る。
そう、思ってしまう自分が情けない。
それに、それにだ。
せっかく勇気を振り絞ってプロポーズしたにも関わらず、こいつは俺に抱きついたまま寝てしまったのだ!
背中に廻された腕がなんか重いなーっとは思っていた。
なんか、スースー言ってるなーっとも思っていた。
だからって、寝てると思うか?!
長年の思いが通いあった数分後に寝るとか!
ほんと、ありえねーー!
そう思い、膝枕をしてやっている歩美の寝顔を睨み付ける。
……ダメだ。顔をみると、つい頬が緩んでしまう。
なんだ、そのピンクの頬っぺたは。
なんだ、そのスースーって漫画みたいな寝息!
しかも何でちょっと笑ってるんだよ!
俺の夢見てるのかな、とか考えてしまう自分がちょっと怖い。
「はぁーー」
しょうがない。
どうしたって、歩美が可愛くてどうしようもない。
ちょっと天然パーマの髪も、少しつり目で潤みやすい瞳も可愛すぎる。しかも、きつめの外見なのに中身は小心者のウサギときた!
ヤバすぎる。
俺はいつから、歩美の事をこんなに好きになってしまったんだろう。
こいつとの出会いは昔すぎて、いつからなのかも、もう覚えてない。最初はドジだなぁって感じで鈍臭くてそれでもついてくる歩美にイライラしていた。
でも、そのうち放っておけなくなって、他の男が構ってるのを見ると無性に邪魔したくなった。
だから、他に目が行かないように、あれこれ世話を焼いた。
これが恋だと気付いたのは歩美が中学生になってからだろうか。急に女の顔になった歩美に不安を覚えた。
俺から、離れていくんじゃないかと思った。
だから、さらに一緒に居るようになった。
歳が違うから、学校では接点は無いが、登下校や塾、歩美の受験勉強も俺が教えた。
休日だって、友達と遊ぶとき以外は一緒だ。
そんな、俺をみて今度は周囲が不安になったらしい。
まず、自分の親から釘を差された。
「歩美ちゃんと仲良くするなら、嫁にする気で真剣に付き合いなさい」
「ん、そのつもり」
平然と答えた俺を、少し怯えた眼差しで両親は見ていた気がする……。
次は、歩美の両親だった。
「さささ、悟くん?まだまだうちの子は嫁になんて行かないよね?!うちから離れるとか、いやいや、お父さんから離れるとか無いよね?!」
歩美の父親に会うと、なぜか毎回涙目で聞いてくる。
歩美のテンパりぐせは父親譲りだろう。母親と姉貴は結構しっかりしてるもんな。
うん、絶対に父親似だな。
そんな事を再確認しながら、毎回無言でやんわりニッコリとスルーしている。
そして、最後は一番面倒くさい歩美の姉貴だった。
あいつは明確な言葉は出してこない。
だが、俺に歩美を取られるまいと行動を全力で表してきた。
あいつは妹の歩美が可愛くて仕方ないらしい。
確かにそれは認めるが、俺が歩美と一緒に居るのを見かけるといっつも邪魔してきた。
あいつ曰く「毒牙から妹を守ってる」だそうだ。
誰が毒牙だ。
就職のため、実家そして歩美の側からようやく離れてくれて心底ほっとした。
結婚して、旦那の転勤で海外にでも行ってくれないだろうか。
俺の精神的に安心だ。
そんな事を考えながらボーッとしていると、門柱から足音が聞こえてきた。
「……あらっ?帰ってたのね!」
玄関に入ろうとした母は縁側から伸びる俺の足に気付いてこちらに話しかけてきた。
「この寒いのに、何で縁側なんか……」
俺がなにも言わないのを不審に思ったのか、わざわざこちらにやって来た。
そして、俺の膝に寝転がる歩美に気付く。
「あらあらあら!」
「……」
手で静かにするようジェスチャーする。
「あっ、ごめんごめん」
少し小声になりながらも、母親はその場に佇み何か言いたそうにニヤニヤしている。
「……なんだよ」
「えっ、いや~」
ニヤニヤ。
「だから、なんだよ!」
「……ふふっ」
いい歳こいて、膝枕をする息子を見るなんて……! あらあらまあまあ。
……何も口にはしなかったが言いたいことが顔で分かった。
そのまま、気持ち悪いニヤニヤ笑いを浮かべたまま、母は玄関に去っていった。
「……はぁ」
やっぱり実家を出ようか。
今だったら、歩美も部屋に通ってくれるかも。
てか、プロポーズしたんだし、一足早く同棲とか? いやいや、歩美は大学に在学中だけど早めに婚約してしまうか?
……絶対に歩美の父親が泣くな。
そんな事を画策しながら、俺は歩美の髪を優しく撫であげた。
~ほんとの後日談~
「悟ちゃん、ごめんねごめんね!」
「だ、だいじょ、ゲホゲホゲホ」
「うわああーん!私が縁側で寝たりしたから悟ちゃんに風邪引かせちゃったよー!!どうしよどうしよ」
俺のそばで、バタバタと無意味に動き回る歩美はいたって元気そうだ。
…何とかは風邪引かないって聞くがあれは本当かもしれない…。
「あ、歩美、少し落ち着いて…ゲホゲホゲホ」
「さとるちゃんーー!!」
俺の苦難の日々は続きそうだ。
悟のヤンデレ不憫は永遠に続くかもしれません(笑)
ま、本人はとても幸せそうなので良かったです。