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人になった死神6

明一人が、女子達のヘイトを稼いでいるという理不尽極まりない状況に加え、双子の参入によって場が更に荒れそうな時、縁が明を庇うような位置取りをし山頂へと目を向けた。


一人、また一人と縁の視線に気付き、同じ方へと目を向ければ、等間隔で木が揺れていることに気付いた。


揺れは段々と近付いてきており、木の揺れる音が耳に入ってくる程に近付いてきた頃には、縁を除くその場の誰もが不安な表情を浮かべていた。


双子を背負っていた黒服の男達は、直ぐ様双子を降ろし、それぞれがそれぞれの前に緊張した面持ちで張り付いた。


そして、一番側の木が揺れた時点で、生徒達は皆唖然とその木の枝に立っている男をただ眺めた。


何故に貴方は軍服を着用されてるんでしょうか…。出発するときはジャージでしたよね?


「お前達、何をしている?作戦中に内輪揉めとは呆れて物も言えん。」


腹の底まで響く重低音に、生徒達はその人物から眼を離せずにいた。


「聞き分けのない子供にはキツいお仕置きが必要か?」


あくまで無表情でそう言い放つと、高く聳え立つ樹木の木の枝を何度かクッションとして飛び移り、何事もなかったかのようにふわりと地面に降り立った。


黒服の二名は、男が降り立った瞬間を狙い、事前に相談したわけでもないのに左右に別れ、何処からか取り出した警棒を掲げ軍服の男に襲いかかる。


「危ない永見先生!?」


明は思わず声を掛けると、黒服の男達も聞こえてきた『先生』というキーワードに一瞬動きが鈍った。


その僅かな隙に、永見は黒服達の意識の隙間を縫うように間をすり抜け、同時に男達が手に持っていた警棒を奪っていた。


「と、言いたいところだが、お前達は現在学生であり、その本分は学ぶことだ。特に一年生は一月という短い期間での事…。一人残らず一つの意識を共有するというのは存外難しいのだろう。」


永見はまるで黒服の男達が襲いかかってきたことがなかったかのように振舞い、それが男達を逆に恐怖に陥れたのだろう。


パニックに陥った二人は、永見の背後から叫び声をあげながら強襲を仕掛けた。


「背後から攻撃に移るときは、静かに、しかし、迅速に…が鉄則だ。覚えておくように。」


後ろをチラリとも振り返ることなく、永見は二人の拳が触れるギリギリのところで勢いよく屈伸運動をし、避けると同時に自身の肩で二人の顎を揺らし昏倒させた。


こ、こえぇぇぇ!?警棒を奪ったときもどうなってたのかよく分からなかったし、何で背後から来た二人の攻撃が見てもないのに分かったの!?


「足音で背後の敵の位置くらいは読めて当然だ。」


こやつも私の心を読むというのか!?…なんか私の周り超人ばっかりで、私の凡人度が浮き彫りになって悲しくなってくるんですけど…。


縁、北大路、秋雨兄弟は財閥の跡取り候補達で、永見は何ヵ国も言葉を巧みに話すだけでなく、格闘技術に至っては明からすれば上位神レベル。


加えて、ジャンルこそ違えど、容姿も五人は非常に優れており、平凡を地でいく明は一人ショボくれていた。


「こんな異常な事態に、思考を別の世界へ飛ばせるあかりの事を私は好きよ?」


「ゆか…ちゃん………それって図太いってこと?」


「「………っ!?」」


二人の会話が耳に入り、双子は今にも腹を抱えて笑いそうになっていたが、流石に永見の威圧感を前に必死に堪えていた。


ぎゃ、逆にムカつく…。いっそ笑われてしまった方がどれだけマシだったか。


図太い一年生組は緊張しきっている二年生組に呆れた顔で見られていたが、四人は気付かない。


正確に言うと、縁だけは永見の姿を確認したときから既になんと言って切り抜けるべきかを算段つけていたため、初めから緊張しておらず、見られていることにも気付いていた。


永見は軽く周囲を見回して嘆息をつくと、北大路の方へと向き直る。


北大路光きたおおじ ひかる。上級生であるお前は本来下級生の手本となって然るべきだ。貴様の持つ類い稀なるリーダーシップは眼を見張るものがある。傲慢にならず、精進すれば誰もが貴様を頼りにするよう成長できるだろう。…出来るな?」


う、うまい!?あの残念王子の自尊心を擽りつつも、悪い…と言うか、最低な部分をどう変えていくかも然り気無く仄めかした!


永見優ながみ まさる……恐ろしい子。


「フ、フフ…ハハハハハ!そう、その通りだ!よくぞ言ったそこな国家の犬よ!さあ、君達!僕に、ついておいで。君達にて・ほ・ん、をみせてあげるよ!」


て・ほ・んの部分では主に縁を見ながら淀みなく言い切ると、クルッと華麗にターンを決め山頂へとスタスタと歩き始めた。


王子信者達は「は~い。」と黄色い声をあげながらぞろぞろとそれに続いていく。


うわぁ………あれをキモい、じゃなくて、カッコいいと思える彼女達は本当に信者だね…。


北大路のターンを見て鳥肌が立った腕をさすりながら、明は振り返ることなく進んでいく北大路を眺めていた。


「進藤明、藤堂縁、秋雨柳、秋雨流。あのような熱狂的信者を抱える教祖を前に、正面衝突は避けなさい。後半分程度で山頂だ、道中気を付けてくるように。…後、秋雨両名は自分の足で歩け。」


教祖………的確すぎて全然笑えないんですけど。


言いたいことは終わったと、永見は再び木々の中に消えていった………二人の黒服を抱えて。


え、ちょっと…永見先生。その二人、殺さない…よね?殺しちゃダメだよ!?


しないだろうとは思いつつも、心の中でそう思わずにはいられない明だった。






北大路の直ぐ後をついて行くのは信者達が怖かったので、少し距離を開けてから展望台を再度目指して登っているわけなのだが…。


ゼェ…ゼェ…はぁ、はぁ


「進藤さん…ちょっと歩くの、早くない?なあ、りゅう?」


ゼェ…ゼェ…はぁ、はぁ


「そう、だよ…他の人間のこと考えて、もっと協調性を、持つべきだと思う。ねえ、ながれ?」



………デジャブである。


ついさっきの焼き直しのように同じことをのたまう双子に、頭に幻痛を覚え手を当てる。


本っっっっっっ当にブレないなコイツら!?置いていって先に進むとさっきの痛々しい集団に追い付きそうで嫌だし、そもそもこんなに体力なくて大丈夫なのこの二人?


「りゅうくんも、ながれくんも、そんなに体力なくて大丈夫?夏休み前には体力測定だよ?悲しい結果にならないように頑張った方がいいよ?」


「「その、前に…中間テス、トも、あるけどね。」」


虫の息になって尚、相手の弱点を的確に突くところをみれば、双子の性格が分かるというものだろう。


「うぐっ…。別にいいもん。まだ時間あるから十分試験対策できるし…それに、25番と言っても学年のよ?クラスではドベでも、学年からすれば頭はいいんだから!」


「「そん、なこと、言ってて…夏休、み、明けに、クラス替え、になって、ても、知らない、からね…。」」


…うん?クラス替え?


「何言ってるの?クラス替えなんて二年生になるときまで関係…ない、よね?」


双子の勝ち誇った顔と、縁の慈愛に満ちた表情に語尾は尻窄みしていく。


え?あるの?なに?なんでゆかちゃんそんな生暖かい目で見てくるの?


「あかり。なんで一組だけ月一でテストが催されてるか知ってる?」


なんですと!?一組のみとな!?


「聞いてないよ!?」


「「ブッ!?…なんで、聞いてないんだよ?」」


「入学式の後に永見先生から言われてたけど…聞いてなかったわよね?」


「…うん。」


「何故一組だけ月一でテストがあるのかと言うと、単純に言えば学力を常にキープさせることで組落ちをさせないためよ。」


「…くみおち。…なるほど。」


さっぱりわからん…。


「「ぎゃははははは!なるほどって、なるほどって。アハハハハハ!確実に知らないって顔してんのに、アハ、アハハハハハ!」」


一頻り笑った後、再び死にそうな表情で酸素を必死で取り込む双子。


今濡れタオルでも口に置けば、あの二人を永遠に黙らせられるのでは…と、鞄から水筒を取りだしハンカチを濡らした。


縁が説明を続けながらその様子を見守っていたのだが、明と縁の視線が交わると、明はハッとした表情をし、なんとか誤魔化すべく下手な口笛を吹きながらびしょ濡れのハンカチで顔をぬぐった。


組落ちとは、読んで字の如く組を落ちることだ。


明で言えば一組から下のクラスになることを指す。


中学の時は学年が変わる毎に変わっていた。


高校では一般的に、二年生になるときには替わるが三年生になるときは変わらない。


しかし、この学校では各中間考査・期末考査のテストの結果毎にクラスの入れ替えが行われる。


通例でいけば二組以下の者が一組に上がったことはない。


毎月のテストに加え、クラスを落ちるという明確な恥を誰もよしとしないため必死に勉強するからだ。


だが、縁のみならず、秋雨兄弟も既に気付いている。


放っておけば明はまず間違いなく進んでクラスを落ちる…と。


「そっかぁ…一組だけなのか、小テスト。ふーん…。まあ、テストの結果で下の組に落ちたんじゃあ不可抗力だよね?しょうがないかな!ね?」


人はそれを不可抗力ではなく、自己責任と言う。


ダメだこいつ、早くなんとかしないと!?


双子は、どう見ても組落ちを望んでいるようにしか見えない明を見て焦っていた。


いつも人に嫌がらせをすることには慣れていても、からかうことでやる気を出させるということは今までやったことがない。


そうしたいと思わせる相手に巡りあってきたことがなかった。


だが、明は違う。


二人が出会った初めて自分達を見分けてくれる………恐ろしく面白い相手なのだ。


このオモチャを離すわけにはいかないと、色々と頭を働かせるも、疲れはてている肉体がそれを阻害する。


焦りは募るばかりだった。


「あかり。」


「うん?なに、ゆかちゃん?」


「受験勉強が懐かしいわね…もう一度、あれ…やりたい?」


「頑張ります!頑張りますから!こつこつと今から少しずつ頑張りますから、あれだけは御勘弁してくださいませゆかり様ぁぁぁ!」


ああ、うん……。この女に任せていれば組落ちはしそうにないな。


明が言うあれが気にならないわけではないが、取り敢えずの危機は脱したと双子は脱力した。


「それも大事だけど、試験前に勉強会もしましょうね。」


「「あ、それ僕たちも参加したい!なんか楽しそう!」」


「勉強の邪魔だからダメ!そもそも、乙女の部屋に野獣を二匹もつれ込んでたまるか!?」


「え…乙女って…誰のこと?」


「バカ、それ以上は進藤さんがかわいそうだろ。ながれ?」


「……。」


やっぱりさっきの間に濡れタオルを口に置いてやればよかった…。


押しの弱い明は、結局双子の家で四人で勉強するという約束を、条件付きで取り付けられるのだった。






「それにしても」


ムグムグ


「二人は本当に体力つけた方がいいよ。」


ゴッゴッゴッ


「ぷはぁー。」


「「仮にも女の子なんだからさ、食べるか喋るかどっちかにしなよ。」」


「別に私良いとこの御嬢様って訳でもないしいいのいいの。」


「そうそう。明は今のままでいいと思うわ。はい、あーん。」


あーん…パクッ、もぐもぐもぐ


「藤堂さんさ」


「何か餌付けしてるみたいに見えるよ。」


双子の歩みがあまりに遅く、私達が山頂の展望台についたのは昼前だった。


しばらくは自由時間との事だったので、少し時間的には早いが昼食を摂っているのだが…そこには何故か双子も付いてきた。


謎である。


普段であれば完全に二人の世界に入って、誰も話し掛けてくるなと言わんばかりの雰囲気を醸し出し、二人ボッチで食事していたのに。


「餌付けなんてされてないよ!?私はそんな単純じゃありません~!」


「「このだし巻き玉子美味しいけどいる?中にウズラの茹で玉子も入ってるんだ。」」


「いる!いいの!ありがとぉぉぉ!どれどれ……うぅ、うまっ!?」


明の姿が餌をついばむ犬のように見えたが、突っ込むと面白くないので、あえて放置して双子はニヤニヤと観察していた。


なに…?もしかしてさっきの毒入り…とか?まさかね。ニヤついたりして怪しさマックスだけど、そこまで流石に外道じゃないでしょ?


違う…よね?……どうしよ。吐いた方がいいのかな?吐くべきか、吐かざるべきか…。


「「毛羽の燻製焼き。食べる?」」


もうどうでもいいかな…。食べ物には罪はないし。人を疑うのって、最低だと思うの。うん。


「それにしても信じられないほどよく食べるんだね。僕もながれも食欲あんまりないから羨ましいよ。」


「ほんとほんと。見てて気持ち悪くなるくらいの食べっぷりだったよ。」


「それ全然誉めてないよね…。どうでもいいけど、少しゆっくり休ませて。調子に乗って食べ過ぎた…。」


今年はいつまでたっても寒さが続いたせいか、まだ半分ほど花を咲かせている桜の木下で明は横になっていた。


縁も双子も、何故か容赦なく口に放り込んできたのだ。


まるでなにかを競っているかのようだった。


謎である。


山登りという運動をしたお陰か、いつもより空腹間が強かったため、欲に任せて普段のカロリー重視の食事とは違う豊富な栄養を接種するチャンスと思い、せっせと流し込んでいたらこのざまである。


「それだけ食べれるのに、なんで太らないのか不思議ね。羨ましいわ。」


「「いや、あんたに言われたら嫌味にしか聞こえないからやめてあげたら?」」


珍しく意見が合うじゃないか…。嫌だな。


明がそんな果てしなく失礼なことを考えていたら、双子の弁当箱と呼ぶには大きすぎるそれを、黒服の方々が回収に現れた。


「…もう食べないの?二人はもっと食べた方がいいよ?だからそんなに体力ないんだよ。」


「む…本当に失礼だなこの牛は…。なあ、りゅう?」


「本当だね。食べ過ぎて横になってるなんて女性あるまじき姿だよ。」


「ふふーん。貧弱な二人に何言われても痛くも痒くもありませんよーだ。」


「流石に」


「ここまで」


「「貧弱貧弱と連呼されたんじゃあ許すわけにはいかないな。」」


「オホホホホ。悔しければ体力測定までに自力をつけてらっしゃい!」


双子のムッとした膨れっ面をみて、さながら悪女のようにわざとらしくせせら笑う明。


「そんなに雌雄をつけたいんだったら腕相撲でもしてみたら?」


そんな三人を見て縁は何気無く提案をしたのだが、双子は妙に乗り気で、どこから呼び出したのか、先程の人とは違う黒服の方々が素早く台座の用意を整え、明は台の前に肘を付き構える。


「さあ、りゅう君でもながれ君でもどっちからでもかかってきなさい。」


「僕からいくよ。」


「りゅう君からね。カモーン。」


明の無意識の発言に、縁は思わず明の方へと視線を向ける。


双子は容姿だけでなく声もそっくりで、髪型と服まで同じにされれば縁には全く見分けがつかない。


台座を用意している間、落ち着きのない双子がじっとしているわけもなく、縁にはどちらがどちらか全く分からなくなっていたのだ。


こんな短期間でいつの間に見分けれるようになったのかしら?…まあ、明の事だから第六感的な神掛かった野生の勘でどちらがどっちだってわかってるかもね。フフ。


あながち外れではない辺り、縁の勘の鋭さと、明に対する観察力の凄まじさがわかるというものだ。


正確に言うなら、勘ではなく観。


神の力が掛かった運命の相手限定の観る能力。


明が先程の見解を聞いていれば、詳しく説明もできないのに『惜しい!』と、間違いなく合いの手をいれる程に近かった。


「じゃあ審判は僕がやるよ。」


流は勝ちを確信した表情で審判を請け負う。


それもそうだろう。


明はあまりの胸の成長の遅さを除けば何処からどう見ても平均的な一女生徒でしかない。


180に届かんとする双子の身長と20センチ近く違うのだ。


身長は高ければ高いほど地力は強いもの。


普通に考えて、体力以外で負ける要素がないのだ。


「準備はいい?」


流の声に二人は頷くと、張り詰めた緊張感の中、開始の合図が辺りに響いた。


勝負は一瞬でついた。


物珍しそうに近くで野次馬をしていた生徒たちはその容赦のなさに唖然としていた。


勝負は一瞬だった。そう、ほんの一秒足らずで明が柳の手のひらを台座に叩きつけたのだ。


よ…弱っ!?弱いだろうとは思ってたけどまさかここまでとは。


「な…そんな、なんで……。」


「えーと、その…ごめん。」


「「っ!?」」


明としては、妙な空気になってしまったので、取敢えず謝ってしまうべきだろうと謝罪をいれたのだが、完全に二人のプライドを砕く行為となってしまった。


「「…フフ。凄いね…あゴリ、じゃない、あかりちゃん。そこまで力が強いとは思わなかったよ。」」


こいつら今ゴリって言わなかった!?噛んだ…の?この場に来て急に下の名前で呼ぶとか怪しすぎる。


「腕相撲では敗けを認めるよ。あ、ゴリ、じゃない、あかりちゃん。ねえ、ながれ?」


「本当に…凄いねゴリラ、じゃない、あかりちゃん。」


「誰がゴリラか!?」


確定!こいつらわざとです!?か弱い乙女になんたる暴言!?


明が双子のゴリラ発言に腹を立てていると、周囲の男子から参加表明が次から次へとなされ始めた。


え…。もしかしてこれって…あれよね?有名な…。


モテ期来たー!?


ムフ。


勘違いである。


次から次へと挑んでくる男子をバッタバッタと負かしていき、本人の知らないところで、ゴリラに育てられた説を不名誉にもつけられるのだった。


そして…「今の私ならゆかちゃんにも勝てる気がする!」と言い出し、勝負を挑みあっさり負けた。


この事で藤堂縁は戦乙女の生まれ変わりでは…。と、男子たちが頬をほんのり染めて噂するのであった。




現地解散ということもあり、明は縁と共に帰路についていた。


当然と言うべきか、縁の護衛の方々も付かず離れずで後ろから付いてきていた。


双子はというと、疲れ果てたようでさっさと車に乗って帰っていった。


「あかり。ゴールデンウィークの予定って…ある?」


縁の一言に護衛の男達はビクッと体を震わせるが「うん、あるよ!」と明が返したことで皆安堵の溜め息を吐いていた。


「そっかあ…。」


「どうしたの?」


「パリにね…行くから一緒にどうかなって思ってね。あ…暇ならよ?」


縁の発言に再び護衛の方々に緊張が走る。


「うーん…お金がないからまた今度ね。」


「お金なら私が出すわよ!行こう!ね?」


「ダメだよ。お金は自分で出さなきゃ、私ゆかちゃんの友達だって言えなくなっちゃうもん。」


「…あかり。」


「それに、試験勉強もしなきゃだし。旅行は春休みにでも行こうよ。あ、海外は高いから国内にしようね?」


「約束、約束よ!」


「うん、約束約束。」


「えへへ…。」


もう、この甘えん坊さんめ。このこのぉ~。


仲睦まじく女の子二人で戯れ合う姿を、周囲は生暖かい目線で見守っていた。


それとは対照的に、護衛達の顔に死相が浮かんでおり、足取りは重かった。

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