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人になった死神5

「聞けぇぇぇ!分かっているとは思うが改めて言っておく。道中は我々教師が引率しているが、どのような危険があるかはわからない。皆、それぞれがそれぞれの決めた仲間同士で対処をしていくように。勿論手に余る状況であれば加勢はする…だが、忘れるな!今日はお前達のチームワークを試される日なのだ!」


いや、遠足は和気藹々とするものであって、戦地に赴くような危険もなければそんな重い試練を課せられた内容じゃないはずです。


「臨機応変に対応するもよし、マニュアルに沿って行動するもよし……。小隊のリーダーを事前に決め、リーダーの決定に従え!この一ヶ月で結んだ絆の力を思う存分発揮しろ!」


重い…重いよ!!て言うか小隊って言ってますけどいいのそれ!?


「それから、道中の襲撃の可能性や、遭難する危険を想定したリストを作っている。今から配布するのでよく確認しておくように。」


割りと分厚い冊子が遠足のしおりとは別に配布され、明は早速眼を通すと声を失った。


その一、熊が出た場合


熊は前足が短く、下り坂に弱い。


出会った場合はゆっくりと、且つ、迅速に坂下に周り有利な位置を確保。


犬より嗅覚が優れており、香辛料などをぶつけるのも効果的。


怯んだ隙にナイフで弱点の眉間を一撃。


その二、猪が~…。


ナイフ持ってないよ!?普通の学生は常備してません!罠の道具一式も持ち合わせてません!?


そもそも遭難する可能性なんて皆無です!


重い!?発言も、このリストも重々(おもおも)だよ!?


「後…おやつは千円までだ。それ以上と思しき物は全て回収処分とする。特別な理由のあるものは事前に申請しておくように。では出発する。」


ああ…うん。おやつ発言で大分重たくなくなった。


五月頭のGW直前。


この日は前々から生徒に通知をしていたが遠足の日である。


出発前に、担任の永見先生より出立式なるものが急遽開催されたが、整備されてない山を上るわけでなし、遭難した際の生き抜く方法や煙を使った暗号、熊の殺し方から捌き方まで、まず使う機会がないだろう。


というかあったら困る。


先程も言ったが、今日は学校の行事の遠足で、山登りに来ていた。


この行事は、受験を控えている三年生を除く一、二年生合同のイベントで、かなりの人数が列になって登頂を目指していた。


班という括りは特になく、仲の良いもの同士で現在展望台を目指して登っているわけなのだが…。


ゼェ…ゼェ…はぁ、はぁ


「進藤さん…ちょっと歩くの、早くない?なあ、りゅう?」


ゼェ…ゼェ…はぁ、はぁ


「そう、だよ…他の人間のこと考えて、もっと協調性を、持つべきだと思う。ねえ、ながれ?」


喧しいわ!?どの口が協調性とか言っちゃってんの?本当にブレないなこのウザキモ兄弟…あ、つい最近ホモホモに改名したんだっけ?めんごめんご。


「秋雨君たち無理せずマイペースに登ってくればいいのに。あかりや私とペース合わせる必要なんてないのよ?」


「本当だよ。運動神経良いってあれほど豪語してたのに、二人とも残念な体力なんだね。ゆかちゃんを見倣いなよ…ププ。」


まだやっと山の麓に来たばかりというのに、秋雨兄弟はバテバテで、同じ御曹司という立場にある縁は対照的に汗一つかくことなく歩いていた。


普段であれば、明の挑発めいた発言に水を得た魚の如く喰らい付いてくる双子が、妙になまめかしい表情で歩くだけになっている。


そんな秋雨兄弟を普段は滅多に見られない別のクラスや二年生の女子たちが通り過ぎ様に激写していく。


中には男性もいたが、用途は不明だ…不明ったら不明だ。


「これじゃあどうしようもないわね…あかり。」


「そうだねぇ…ゆかちゃん。」


休憩もやむなしかな…。本当にしんどそうだし。


「じゃあ先に行ってましょうか。」「じゃあちょっと不本意だけど休もっか。」


「「…え?」」


「え?って、二人のペースに合わせてたら着くのお昼頃になっちゃうけどいいの?」


「いや、まあ…めんどくさくはあるんだけど、一緒に行きたいって人を無碍にするのも気が咎めふ…。」


噛んだ…。割りと難しい言葉をスラスラ言えたと思ったら最後に噛んだ…。


ちくしょう…神は我を見棄てたか!?


恥ずかしくて縁の顔を直視できなかったが、生暖かい視線は犇々と感じた。


そして息絶え絶えだった双子は地べたに転がって爆笑していた。


「「ギャハハハハハ!咎めふって、めふって!アハ、アハハハハハ!」」


「…やっぱり置いていこっかゆかちゃん。」


「え、ええ。じゃあ二人で行きましょ!秋雨君たちは体力に相談しながらゆっくり、本当にゆっくり上がってきてね。無理しちゃダメよ?」


残った体力を振り絞って爆笑した兄弟は、ほぼ瀕死の状態で横たわっており、縁はしゃがみこんで二人に神々しい笑みを浮かべてそう声を掛けた。


「「あ…うん、わかった。」」


ゆっくりと髪をかきあげ耳に掛けるというだけの動作がとても絵になる。


双子は息苦しかったはずなのに、一瞬呼吸することも忘れて見惚れていた。


やれやれ…。信者がまた増えたんでなければ良いけど…。


小学生の頃、明には縁の他に友人と呼べる者がいた。


そう『いた』だ。


時折明に見せる、女神にも劣らない縁の柔らかな慈愛の笑みは男女問わず縁に人を惹き付けた。


それは縁への羨望から、徐々に明への嫉妬に変わり、明の周りには気付けば縁のみとなっていた。


もちろん縁にその事で怒ったことはない。


苛めに合いそうなときは、何時も陰ながら縁が助けてくれていたのは知っているし、その事を一番気に病んでいるのは縁だからと知っているからだ。


『ごめん…ごめんねあかり。ごめん…。嫌いに……ならないで。』


涙を溢し、今にも消えてなくなりそうな縁の表情を明には拒絶など出来ようはずもなかった。


「まあ、私はゆかちゃんが居ればそれでいいから特に気にしてないんだけどね。」


強がり等ではなく本心から、明は幸せそうに笑う。


声に出したつもりはなかったのだが、バッチリ漏れていたその声に三人は自然と明に視線を向け、いつもと雰囲気の違う柔和な笑みに三人は自然と胸の辺りを押さえていた。


所謂ギャップ萌えである。


双子が気持ち悪いと言って憚らない明のいつもの笑みと違うそれは、心根の曲がったものには眩しかったのだ。


不味いわね…。


誰に聞かれることなく縁は呟く。


「あーっかり。さ、行きましょ!」


「わわわ…。もー、ビックリするからやめてよ。じゃあ二人とも先に行ってるね。」


縁は明の腕に飛び付き、さっさとその場を離れるのであった。


「でも、ちょっともったいなかったな…。」


「うん…?なにが?」


「もうちょっと見ていたかったなぁーっと思ってね。」


「なにを?」


「えへへ。…秘密。」


頬を赤く染める縁があまりに背徳的にきれいだったので、思わず赤面せずにいられない明だった。


「ま、いっか。行こう。」


「うん。」


なんか何時もより子供っぽくて可愛い…ムフ。役得役得。


腕に犇々と感じる胸の圧力にいつもの残念な笑みを浮かべる明だった。




山の中腹に来た頃、先に出発した二年生の最後尾が見えてきた。


そして、同時に奇妙な集団も眼に入る。


井型に組んだ木材の上に、山に似つかわしくない皮貼りのソファーがあり、御輿と表現すればいいそこには誰かが座っているようだった。


「あかり…なんか彼処に変なのが見えない?」


「そうだねぇ…。あの雲はキリンみたいだね。」


縁が指差す方とは全く違う明後日の方向に眼をやり、あかりは悟りでも開いたような表情で空を見上げる。


「なんでそんな遠い眼をしてるの…?そっちじゃなくてあっちだって。」


「ああ、あの雲はソフトクリームみたいだね。」


「あかり?もしもーし?」


いくらあかりが現実逃避をしながら歩みを遅くしても、人一人乗せた御輿は山の傾斜を登るにはきつく、段々と近付いていく。


そして、位置関係からまだ後ろ頭しか見えないが、簡易のプロフィールが見えたことでその人物が誰かが確定した。


いや、まあ…金髪が眼に入ってた時点で誰かは気づいてたけどね…。


「今日は暑いな…。」


王子事、北大路は総勢40人の女子生徒に支えられる御輿の上でポツリと独り言をこぼす。


「王子が暑いと仰せよ!」


「誰か!誰か団扇持ってきてないの!?」


「こんなこともあろうかと私芭蕉扇みたいなのを自作して持ってきました!」


「グッジョブ!直ぐにあおいで差し上げて!」


その女子生徒は鞄から荷物を取り出すと、あっという間に組み立て芭蕉扇擬ばしょうせんもどきであおぎ出す。


御輿も大概だけど、その団扇もすごいな!?この状況を当然のように受け入れられるこいつはある意味大物だ…。


「風が温くて気持ち悪い。」


「何やってるの!?直ぐにあおぐの止めて!全く…そんな下らないもの作ってきて、どうかしてるんじゃないの?」


「ほんとほんと…媚び売ろうとしてるのがみえみえでなんか嫌だぁ~。」


北大路の一言で、周りの女子生徒はこれ幸いと団扇を自作してきた女子生徒を貶めだす。


どうかしてるのはあんたらの頭だよ!?そんな残念王子のために身を粉にするなんて止めて!


残念度がこの上なく急上昇してるし、貴女達まで残念な人に成り下がってますよ!?


「暑いから喉が乾いてきた。」


「私冷えたポカリ持ってきてます!」


「あなたは御輿を担ぐ番でしょ!今離れて王子が落ちたら責任とれるの!?」


寧ろ叩き落としてしまった方が貴女達の、ひいては私の心の平穏にいいんですが…ダメかな?


「どうぞ王子。私がアイスコーヒー持ってきてますから飲んでください。」


「ん。…ブッ!!」


忙しそうに指示を出していた女性が魔法瓶に入れてきたコーヒーを差し出し、北大路はそれを口にしたとたん吹き出した。


「インスタントじゃないか…。こんなのは飲めない。気が利かないな。」


「も、申し訳ありません。」


北大路が吐き出したことで、少なからずコーヒーが掛かった者達がいたのだが、その者達は皆一様に恍惚といった表情を浮かべている。


げに恐ろしき女の恋…。吐き掛けられて不快感じゃなくて誇らしげなんだけど…。そしてなぜ周りは羨ましそうにしてる!?


あの人たちも頭おかしいんじゃないの!?と言うかほんと怖い!マジで怖い!なんなのこの人達!


あかりは見た…見てしまった。


指示を出していた女性が北大路に謝るため頭を下げていたときの周囲の女子が見せた蔑みの視線。


もうひっそりと気付かれないようさっさと先に行こう…。心臓に悪い。本人達が幸せそうなんだし、私が口出ししていいことじゃないしね…。


明はそう思い歩を早めようとした時、北大路の一言が明の体を引き留めた。


「フゥ…。久し振りに桃の天然水が飲みたい。」


桃の天然水とな!?インスタントコーヒーは飲めないのに桃の天然水とな!?


「え…桃の天然水?」


「まだ売ってたの?」


「あ、私そういえば先日スーパーで見ました!まだ売ってるんだ、って思って印象に残ってますから間違いないです。」


「そんなこと聞いてないのよ!」


「そうよそうよ!」


「持ってないのにしゃしゃり出てくるんじゃないわよ!」


性格終わってるなこの人達、恋をするとこうなるのかな…やだな。


ここぞとばかりに先日見たと発言した女生徒糾弾していく女の子達を見て、怖気が走り隣に居る縁に身を寄せる明。


そんな明を元気付けるためか、組んでいた腕の力が少し強まった。


うぅ…。一人じゃなくてよかった。こんな恐い集団の側を歩くのはもう耐えられない。やっぱりさっさと…


「私、持ってます!」


「「「「「「っ!?」」」」」」


周囲の女性達はビクッと体を震わせ、罪の擦り付け合いを中断して一人の女性に視線を集める。


「私、王子がこれを好きなの覚えてましたから…買っときました!」


宣戦布告しよったでぇぇぇ!?…凄いな、あんなに大人しそうな子なのに…。


周囲に勝ち誇った顔を向けながらの発言に、ことの成り行きを見届けんと明は出歯亀根性で再び歩みを緩める。


「どうぞ、王子!」


喜色満面に手渡しする女生徒と比べ、雲一つない陽射しで気怠けだるそうにしているとても対照的な北大路が手を伸ばし桃の天然水を受け取り、一口含むと


「温い…。」


と一言だけ発し開けられたばかりのペットボトルをポイッと投げ棄てた。


周囲が唖然とし固まっている中、縁は明の表情を軽く伺い、そっと組んでいた腕を放し三歩明から離れた。


明の顔にはおおよそ表情はなく、ゆったりとした動作で今朝方配られたしおりをリュック横のポケットから取り出すと、思いっきり振りかぶって北大路の頭目掛け投げつけた。


「オラァァァァァァ!」


大きな声に反応して振り返った北大路の顔面に、しおりは吸い込まれるように放物線を描いており、バシィッ!っと大きな音をたてて御輿近くに落ちた。


「っっっっ!な…何をする!?」


「それはこっちの台詞だ!女の子達に御輿紛いのものを担がせておきながら、自分は歩きもせずに暑いだのインスタントコーヒーは飲まないだの、そのくせ桃の天然水は飲みたいだの…しかも最後には温いって言って捨てるとか………何様のつもりよ!?」


「フンッ…俺様、だが?なにか問題でも?」


勝ち誇った表情を浮かべ、右手で髪をかきあげると周りの女子生徒から黄色い声が生まれた。


この子達…不憫すぎて涙もでないよ。いや、顔と財産とを合わせてもぶっちぎりでマイナスなこいつの性格を愛せるんだから、ある意味尊敬…。


「はい。」


縁はいつの間にか明の側まで来ており、明に自分のしおりを手渡す。


「ありがと。…オラァァァァァァ!」


ほとんど先程の焼き直しのような状況で、再びしおりは大きな音をたてて北大路の顔面に吸い込まれていった。


「何をするんだ!?いい加減にしろ!」


「今すぐ全人類に産まれてきて御免なさいって詫びを入れるか、地球に土下座して許しを乞うかすれば止めてあげる。」


「はい、あかり。」


二人がにらみ合いをしている間に縁は二つのしおりを拾っており、当然のように明に手渡す。


「ま、待て!顔は、顔は止めてくれ!」


再び振りかぶった明を見て北大路は慌てて声をあげる。


「この顔が傷付くのは君とて本望ではあるまい?どうだ?ん?」


あまりの発言に呆れて開いた口が塞がらない明に縁はそっと手頃な石を見せる。


「あかり…やっぱりこっちにしとく?」


「いや、さすがにそれはダメだよゆかちゃん!?しおりならまだしも石はちょっと…。」


「しおりもダメに決まってるだろ!?」


縁の行動に落ち着きを取り戻した明は、縁が敢えてそう動いたのだと思い至り「ごめん、ありがと。」と縁にのみ聞こえる小さな声で呟いた。


「ちょ、ちょっと貴女たち一年生ね?王子になんて事するのよ!?」


「そ、そうよそうよ!王子の顔に傷がついたらどうするつもり!?」


「最っっっ低ね貴女たち!?」


場が落ち着きを取り戻した事で再起動し始めた周囲の信者達が、ここぞとばかりに北大路をチラチラと見ながら縁と明を罵倒するというアピールタイムを始めた。


最低なのは間違いなくそいつですから!?


心の中でそう思いつつも、突っ込むと現状が悪化しそうなのでどうしたものかと思いあぐねていると、縁が一歩前に出てクスリと失笑した。


「引っ込んでいてくださる?今私たちはそちらの北大路先輩とお話してる最中ですから。」


それまで明の影のように存在感を消していた縁が笑いながらも冷たい目で周囲を睨むと辺りは途端に静かになった。


「げぇっ!?藤堂縁…君。」


今の今まで全く気付けなかったことで顔を青く染める北大路に、縁は瞳はそのままに口角を僅かにあげる。


「御機嫌よう、北大路先輩。良い御身分ですね。」


「な、何が言いたい?」


「いえ、別に。ただ、目立ちたいが為に態々県立の高校にいらしただけはありますね。と言っただけですが。言葉から相手の意図を読む事ができなければ北大路グループの未来も暗澹あんたんたるものですわね。」


ギリッと歯をならし、怒気の籠った目で縁を睨み付けると、困り顔でオロオロとしている明が視界にはいり北大路はフッとほくそ笑んだ。


「よっ、と。」


北大路は御輿から勢いよく飛び降りると明の近くに着地し、唖然としている明の髪を手ずから両耳へかける。


なにしてくれてんのこいつ!?セクハラ、セクハラだよね?ボディーを抉る様に打ち込んでも許されるよね?


オロオロとしていた表情から、眉間に皺を寄せた険しい顔に変わった明を見て北大路は得意そうに笑う。


「フッ、嫉妬する気持ちはわかるが…女性は笑顔が一番似合うというもの。笑って…みせてくれないか?」


この女は僕に惚れているはず…。僕が彼女達に囲まれていたのを見て嫉妬に狂ったのをみても間違いない。


見ていろ藤堂縁!お前にこいつしか友達が居ないことは事前の調べで知っているんだ。フフフ…唯一の友人に裏切られて、自分が下であることに気付かせてやる!


「「なぁ~んだ…進藤さんやっぱり王子の事好きだったんだ。」」


北大路がまるで検討違いの妄想を繰り広げ、明はセクハラをする北大路にボディーブローをいれる準備を整えた時、秋雨兄弟が二名の黒服の男性にやたら豪華な背負子のようなものでかつがれやって来た。


「あのねえ…この状況でどうやったらこの人の事を好きになれるのよ?」


気勢が削がれた明は、左手で北大路の顔を覆い突き放す。


「女の子達に(多分だけど)御輿紛いなものを作らせて、整備された道路を歩くとは言っても、女の子達に担がせて自分は悠々自適に座って我が儘三昧よ?更に嫌いになりこそせよ、好きになる隙間なんて一ミクロンもないわ!?」


「なっ…。」


「「またまた~。照れちゃってかーわーいーい~。」」


「照れてないよ!?本心だよ!?」


照れ隠…し?……そう、だよ…この僕が藤堂縁のような家柄の奴ならいざ知らず、こんな平凡が服を着たような女に嫌われるはずもない。成る程、照れ隠しか…。


わかる、わかるよ!同級生の前で素直になれないんだな?ここは大人な僕が君の顔をたててあげようじゃないか!アッハハハハハ!


随分な勘違いで、心の中で高笑いしながら明の肩を抱き寄せ双子の方を指差す北大路。


抱き寄せられた際明に心底嫌そうな顔をされたのだが、それを見た北大路は「全てわかっている。あとは任せろ。」と言わんばかりの表情で何故か北大路にウィンクされた。


ひいぃぃ!?キ、キモ!


そんな明の心の声は当然北大路に届くわけもなく、北大路は背負子に後ろ向きで優雅に座りながらニヤニヤと笑っている双子に指を向ける。


「君達!女性をからかうんじゃない。もっと大事にしたまえ!」


…うん?こいつどの口でそんなこと言っちゃってんの?


「そもそも彼女は私の親友だ!彼女の、唯一無二!の親友だ。からかうのはよしてほしい。彼女が困ってるじゃないか!?」


「やだよバカ。こいつなに言っちゃってんの?なぁ?りゅう?」


「そうそう。そもそも進藤さんがいやがってんのはどう見てもあんたが肩を抱き寄せたからだよバカ王子。」


わかってて言ってたのかよこいつら!?て言うか、バカって…バカって言い寄ったでぇ!?こいつら勇者か!?この信者の前でそんなこと言ったら…。


明の心配をよそに、周りの女生徒たちはどちらかというとうっとりとした表情で双子を見つめているものが多く、敵意をもって睨んでいるのは少数だった。


双子にも信者が!?……と言うか、睨むのであれば双子を睨んで欲しいのですが…。何故あなた方は私を殺さんばかりに睨まれてるんでしょうか?


そう、敵意をもってにらんでいるものたちは皆明に視線を向けていた。


え…ちょっと理不尽すぎない?泣いてまうやろ~!?

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