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人になった死神10

球技大会の種目毎の参加メンバーも正式に決定し、あかりは晴れて男女混合のサッカーのゴールキーパーに抜擢されていた。


ふふふ…私は学習する女。


今度こそ失敗は許されないわよ進藤明!


このフォーム、この角度!間違いない、右!


ならば私は左へ逃げ、グフゥ!?


こ、今度こそ…次こそは絶対に、ってもうこっち向かってきてる!?


近い近い近い!?


そ、そうだ!変に深読みするからダメなんだ。


だったらいっそ全く関係のないこれなら…。


両手で頭を抱え、蹲るような体制をとる明の目の前には、非情にもボールの影が見えるのだった。


時にして放課後。


全学年の過半数の生徒が、グラウンドや体育館で球技大会の練習で集まるなか、練習場所として区画割りされた範囲のなかであかり達は六体六のミニゲーム形式でサッカーをやっていた。


初めの頃はあかりの顔にボールが当たる度に一時中断して、女子が男子を責め、男子があかりに平謝りを繰り返していたのだが、パンチングでボールを弾いては吸い込まれるように顔へ。


シュートからゴールポストに当たっては顔へ。


キャッチしようとしては顔へ。


避けた先からボールが曲がっては顔へ。


ともをすれば、呪われてるのではないかと思わせるほどの的中率を誇っていた。


サッカー部の次期エースと噂される木下という同級生が放ったシュートは何度となくあかりの顔面に阻まれるという両者にとって悲惨な結果に相成った。


「認めない…。認めない、認めない。認めない認めない認めない認めない認めない。」


「ね、ねぇ皆。なんか木下くんが怖いんだけど。」


「いやぁー、凄かったね。」


「頑なに顔面で受けるってところがなんか引っ掛かるけど、木下チーム相手に失点無しとか、内のサッカー部のゴールキーパーより全然うまいんじゃね?」


「でもなんで全部顔面で受けてんだ?」


「ジンクスなんじゃない?ほら、白線越えるときは踏まないようにーとかと一緒で。」


「うわぁ…。ストイックなジンクスだな。」


「負けられない負けられない負けられない負けられない負けられない負けられない負けられない。」


「皆聞こえてるよね?絶対聞こえてるよね?怖いから!ほんと怖いからやめさせて!?」


半泣きの明と、完全に病み始めている木下を完全に放置で話は続いていく。


もちろん確信犯である。


触らぬ神に祟りなし。齢15にしてこの一文が格言であると皆は実感したという。


とは言え、流石に明が怪我を負うようなことがあれば、回りも今のようにポジティブにはいかないのだが、鼻血ひとつなく、更には肌が赤くなることすらないため、最後の方は皆シュートの機会があっても、万が一ゴールを決めた時の木下の反応が恐ろしかった為、シュートは次期エースと噂される木下にボールが回されていた。


な、何故…。


取り合えず顔に吸い込まれるようにボールが当たるのは間違いなく神のせいとして、回りの皆が段々この状況を受け入れているような気がする。


か弱い女の子が顔にしこたまボールを顔面に打ち付けられてる現状を、現代社会は黙認するって言うの!?


ま、まさか…マインドコントロール!?神はそこまで落ちたか!?


「そういうことは頭の中だけにして、声に出さない方がいいと思うけど?色々とヤバイ子に見られるよ?」


「ほぇ!?」


声に出てた、だと!?


「いくらなんでも失礼だろ、りゅう。流石に進藤さんに比べられたら他の子達がかわいそうだ。」


「そ、そっか…ごめんね、進藤さん。」


「失礼なのはあんた達の態度だよ!?その流れで謝られたらなんか妙に辛いからほんとやめて!?」


木下の復帰が直ぐには難しそうだったので、今日は早めに切り上げようとなり、明は秋雨兄弟に付きまとわれながらバレーの練習をしているだろう縁の場所に足を運ぶ。


ウザイ。そして怖い。


それは明が、現在抱く率直な感想だった。


ウザイは勿論双子の執拗なまでに神経を逆撫でしてくる態度と言動にだが、怖い、は周囲の話したこともない上級生。


明風に発言するなら、双子の信者の御姉様方の事だ。


その御姉様方は今尚少し距離を取りつつも、射殺さんばかりに視線を投げ掛けており、あからさまなのに至っては小さく舌打ちが聞こえる始末であった。


この学校にはいってからの双子は、以前と比べ問題行動として取り上げられるようなことはしておらず、なまじルックスと学力と財産とほぼ完璧な為、御近づきになろうと虎視眈々と狙っているハンターの方々だ。


「知らないって本当に罪だよね…。」


「「どうしたの進藤さん。そんな頭が良さそうな発言するなんて、なにか変なものでも拾って食べたの?」」


発端である双子はやや心配そうに明の顔色を伺ってくる辺り、本気で心配してそうなのが伝わり、明はいつかこの二人の頭をかち割ろうと心に誓った。


そんな胃の痛くなる状況をなんとか潜り抜け、ショートカットと思い裏側から体育館に近づくと水飲み場で多くの生徒が思い思い休憩をとっていた。


その中に一際目立つ少女、藤堂縁も居た。


声をかけようと思ったが、普段見慣れない生徒、明の残念な脳細胞を駆使しても、思い当たらないためおおよそ別のクラスであろうその少女たちと会話していたため、邪魔にならないようゆっくりと近付いていく。


そして、ある程度近づいたところでそれは聞こえた。


「藤堂さんさぁ、本当に大変だよね?」


「えっと、何がでしょう?」


「いや、ほら?なんかいっつも藤堂さんの腰巾着になってる必死な子がいるじゃん?付き纏われてて迷惑してるっしょ正直?」


「あー、わかるぅ。あの地味な子だよね?自分が地味だからって美人の藤堂さんに御近づきになって色々とおこぼれ授かろうと必死な子でしょ?マジうけるよねぇ。」


「ちょ、ちょっと止めなよ。」


「…えっと?誰の事でしょうか?」


クラスメイトからすれば、明が特に縁に対しておもねる様な態度はしてないし、縁の反応から、二人は対等な友人関係なのだと感じていたが、他のクラスの人間からすれば、藤堂のスペックから鑑みるにそう見えても不思議はないだろう。


まあ、親切心と言うよりは嫉妬によるものからの発言には間違いないのだが。


それ故に、変な空気になる前に止めようと思ったのだが、縁の方は本当に検討がついてないようで、心底不思議そうに聞き返した。


「えー!?もしかして藤堂さん利用されてるのに気づいてないの!?かわいそうー。」


「えっ?何々?何の話してるの?」


大袈裟に驚く女子生徒の発言に周りに居た様々な学年の男女が興味深げに聞き耳をたてる。


その様子を、秋雨兄弟が普段と打って変わって酷く冷めた目で見つめていた。


「ほら、内の学校の王子に急接近してるとか噂になってる子の事だよ。」


「ああ、あの子の事ね。ほんと良い性格してるよね。」


クスクスと辺りで嫌に耳障りな嘲笑が漏れ聞こえる。


「そうそう。藤堂さん美人でお金持ちじゃん?それを利用して御近づきになってさあ、さも自分が他の人達とは違う特別な人間ですアピールしてる痛い子。名前何て言ったっけ?」


「あ、私知ってる!進藤さん?だったと思うよ。」


「…ヒッ!?」


明の名前が上がるまでは、少し困惑ぎみだった縁の雰囲気が一気に変わるが、それに気付いたのは心配になり縁の顔色をこっそり伺ったクラスメイトのみだった。


「本当に藤堂さんかわいそうだよねぇ。利用されてるのにも気づいてないみたいだしさぁ。でも気にしちゃダメだよ?あんなの友達だなんて言わないし。私だったら絶対そんなことしないんだけどぉ。あれだったら私が友達になったげるし!」


おおう…。なんかとんでもない誤解が実話のように話されてる。


気、気まず過ぎる。一刻も早く、私が居ることがバレていない内にこの場を離脱せねば。


そもそも、この程度の陰口なら昔から言われ慣れている事から、兎に角気まずい雰囲気からの脱出を優先させることにする事にした。


何故かフリーズしてる秋雨兄弟を取り合えず放置して、こっそりとその場を立ち去ろうとするも、明は腕を柳と流にガッチリと捕まれる。


「あそこまで言われてるのに逃げるの?」


「それともさっき言われてるないように心当たりでも?」


何時ものおチャラけた雰囲気ではなく、酷く冷たい眼差しに一瞬答えあぐねてしまい、小さくため息をつく。


「今私が何か言ったところで空気悪くなるだけでしょ?」


「「だから逃げるの?」」


「いや、逃げるって。なにそれ?」


ムフ


鼻で笑われた事に眉間にシワを寄せる二人だったが、次の明の一言で更に眉間の皺を深める。


「そもそも、ゆかちゃんがそんなの信じるわけないじゃん。」


「…そんなの、わかんないだろ?」


「箱入りのお嬢様なんて噂話を鵜呑みにするもんだよ?」


「しないよ。」


「なんで…なんで言い切れるわけ?」


イラつきを隠すわけでもなく、その感情のまま言葉を明にぶつける。


「そんなの、私が信じてるからに決まってるじゃん。」


突拍子のない発言に、キョトン。という擬音語がぴったりな表情で双子は暫く固まると、少しして柳が口を開いた。


「他人を…なんでそこまで信用できるの?」


「いや、他人じゃないし。」


「「え?」」


どちらからともなく、じゃあなんなのさ?と口からこぼれでる。


「だって親友だもん。」


「「…。いや、それやっぱり他人だよ!?」」


秋雨兄弟が思わず突っ込みをいれるのと同時に、女性特有の耳に響く叫び声が聞こえた。


神「何かモテ要素って知らない?


補佐官(以後補と表示)「どうかなさいましたか?」


神「いやぁ、今あの子に下界に行ってもらってるじゃない?」


補「はい」


神「何名かの中から運命の力が強い者と子供産んで貰わないといけないわけでしょ?」


補「そうですね」


神「行ったわいいけど結ばれませんでしたー。チャンチャン!ってなったらちょっと洒落にならないよね?」


補「我々の存在意義は神合ってのもの。叶わずともそれに異を唱えるようなものはいないかと」


神「え?うーん…そうなんだけどね。」


でもそれだと、他の神にバレたらちょっと不味いんだよね


補「申し訳ありません。御信託を聞き逃す等と、背信にも近い行為ですが、もう一度―――」


神「へ?あー、いいのいいの。独り言だから!」


補「そうでしたか。…それで、モテ要素でしたか?」


神「そうそう。何かないかな?」


補「以前私の担当していた地区の死神が連れてきた魂ですが、どじっ子属性とか、地味な子が恋をすることで段々綺麗になっていくとか、妹でツインテールが正義とかはが鉄板とか言っていました。が、大変に申し訳ありませんが真偽は定かではありませ―――」


神「それだ!よし、それでいこう!何か考えるの面倒だし!」


補「しかし、妹にしてしまうと子供を作れないのでは?」


神「あ、ほんとだ~。どうする?て言うかどれにする?もう面倒だし妹って部分除いて全部詰め込んじゃう?」


補「全部となると、矛盾が出てくるので…」


神「よし!こうしよう!そいつにちょっと転生待ってもらって設定してもらおう!決まり~!じゃあ僕眠いからもう寝るね~」


補「はっ!畏まりました!」


こうして明の預かり知らないところで今後の身の回りの設定について決められたとかそうでないとか…fine

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