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5.尋問

俺とご主人が部屋に入ると、椅子に座り縛られている五人の侵入者と

床に敷いたシートの上に寝かされた一つの死体を三人のガードマンが監視していた。

侵入者の口には猿轡が噛まされており、また俺の指示により奥歯などの口中に自殺、

もしくは自爆の為の薬物や小型爆弾等が仕掛けられていないかは調べてある。


「ほう、こんなにたくさん居たのかね」

ご主人が感心した様に言う。

覆面やマスクなどをしている者も居たが、全員剥ぎ取られている。

「おや、お嬢さんも二人いらっしゃったのか」

ご主人がふっと微笑みながら言う。

やっぱそう思うよな…

「マスター、一人は確かに女ですが、もう一人は男です」

俺が最後に倒した金髪の女と、もう一人ブルネットの長い髪の侵入者が居る。

が、普通に見ると女にしか見えないがコイツは男なのだ。

「ほう、それはそれは…ふむ、もしかするとCN(コードネーム)毒蠍(スコーピオン)とは

 彼の事じゃないのかね?私も聞きかじっただけだが」

ブルネットの長髪がビクッとしてマスターを見る。

「さすがマスター。その通り、コイツがスコーピオンです」

俺が答える。

俺も直接会うのは初めてだが、傭兵時代にコイツの写真と情報は確認している。

そして、奇妙な暗殺技術を持つ危険な男だという事もだ。

「コイツはこの女の様な外見(ルックス)を利用して取り入り、

 独特の技術と毒物等を使って暗殺や諜報活動、テロ活動を行います。

 こういった形で作戦行動に出るのは極めて稀な事でしょう」

俺の解説に驚きを隠さずに俺を見詰めるスコーピオン。

「ふむ、なるほどな。しかし、何故そんなヤツが私達を狙うのだろうね?」

俺はニヤっと嗤う。

「それはこれから彼達自信にお答え頂きましょう」

「そうだな。まあ、アイシャとレイラが待っているからさっさと済ませようか」

「イエス、マスター」

俺はとりあえずスコーピオンと女の猿轡を外した。


「さて、毒蠍スコーピオン君。キミ達の目的及び具体的な殺害目標、それと依頼者を教えてくれないかね?」

ご主人がのほほん、とでも言うべき雰囲気で話しかける。

しかし、その目は全く笑ってはいない。

そして、そのプレッシャーは俺ですら冷や汗が滲むほどだ。

ただし、作戦行動中のプロは殺される事は覚悟の上だろうから

その目を正面から見詰め、心を砕かれる様な愚は犯さない。

「さっさと殺せば良いでしょう。俺は命なんか惜しくないしね」

不貞腐れた女の様な声で、目を合わさずに答えるスコーピオン。

「ふむ、それは困った。さっさと喋ってくれないと野蛮な方法に訴える事になるのだが」

キッとマスターを睨み、金髪の女が叫ぶ。

「今更何が野蛮よ!マイクを殺した癖に!」

マイクってのは、俺が最初に殺した見張りか。

「お前の男だったのか?そりゃ悪かったな。殺したのは俺だ」

女がはっとした様に俺を睨み、声を搾り出す。

「あんたが、マイクを!…マイクは私の男じゃない!弟よ!!」

ほう、俺の予想は外れか。だが、そんな事をペラペラ喋るテロリストってのもなあ…

しかし、この女は見掛けは二十代だが、マイクってのは三十代に見えたが。

コイツが若く見えるのか、マイクが老けているのか?ま、どうでもいいが。

「そうか、だがキミ達は罪も無い人間を巻き添えにしてまで

 屋敷を爆破しようとしていたのだろう?

 それでは、反撃されて殺されたとしても文句は言えまい」

マスターが諭す様に女達に言う。

「さて、私もサドでは無いからね。若者を痛めつけて快感を得る事は無いのでキミ達に提案をしよう。

 もし、キミ達が先ほどの質問に正直に答えてくれるならキミ達の命と安全は保障しよう。

 但し、キミ達の雇主を我々が捕らえるか仕留めるまでは軟禁させてもらうがね。

 その後は、キミ達が雇主から貰う筈だった報酬と同額を支払い、自由にしてあげよう。

 もしこの提案を蹴ると言うならば、あらゆる手を使って喋ってもらう。

 どちらにしろ喋るならば、私の提案を呑んだほうがお得だと思うが、どうかね?」

女がぐっと息を呑む。スコーピオンもかなり揺れている様だ。

その時、大柄な男が「むー、むー」と唸りだした。

「…アイツがリーダーだ、猿轡を解いてやってくれ。何か言いたいみたいだ」

スコーピオンがマスターに頼む。

「そうか、ベア、彼の猿轡を解いてやってくれ」

「イエス、マスター」

俺は男の後ろに回り、猿轡を解いた。

「さて、リーダー君、答えはどうかね?」

「…俺としてはその提案を受けたいのだが、他のメンバーとも相談したい。

 明日の朝まで時間をくれないか」

リーダーが悔しげに声を絞り出す。

「ふうむ、ベア、どうかね?」

「ダメですね。明日の朝までこの屋敷に何も動きが無ければ

 コイツらのスポンサーが失敗したと知って次の手を打つでしょう。

 いや、もしかすると既に手を打ち始めてるかもしれません」

俺はリーダーに向き直る。

「たった今、この場で決めろ。五分だけやる。俺達の前で相談しろ」

俺は喋りながら残り二人の猿轡を解いた。


「みんな、聞いての通りだ。

 俺は彼の提案を呑みたいのだが、お前達の意見は?」

スコーピオンを含め、男二人はそれに同調する。

しかし、女が声を上げて反対した。

「何言ってるのよ!私達はプロでしょう?

 そんな提案を呑めば二度とこの世界で生きていけないわよ!」

リーダーが答える。

「落ち着け、リンダ。拷問にしろ、薬物にしろ、白状させられれば同じ事だ。

 ならば、精神と肉体にダメージや後遺症を残したり、殺されるよりも

 最初から喋ってしまう方が利口と思うだろう」

「ダメよ!大体、こんな奴等の拷問や、日本で手に入るような自白剤で

 口を割られるかどうかなんてわからないでしょう!?」

やれやれ、なんだこの甘ちゃんは。俺が殺した弟もそうだが、

どうもこの女はテロリストって感じじゃないな。

「いや、神崎財閥をもってすれば薬物などどうにでもなる。

 それに、彼は”CNコードネーム・グリズリー”だ。

 彼に掛かれば我々など物の数でないのも当然だ」

リーダーが俺を見ながら言う。

その瞬間、女を除いた全員が凍りついた。


ちっ!嫌な名前を思い出させやがるぜ…


「ぐ、グリズリーだって…?」

スコーピオンが擦れた声を搾り出す。

女が不満そうな声を上げる。

「何よ!Gullizry(ハイイログマ)って?何だって言うのよ!?」

「リンダ、知らないのか!?アイツの事を…?」

もう二人の男のうち、小柄なほうが驚いた様に女に聞く。

「アイツは、たった一人で一個中隊程の数のゲリラを殲滅した男なんだぞ…?」


嫌な古話(はなし)が出やがった…



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