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3.侵入者

ウイスキー以外の酒瓶を空にし、食い物を完全に平らげた俺は少し食休みをした。

五分ほど椅子に腰掛けていると、大体消化が終る。

時計を見ると、俺達が到着し、パーティーが始まってからおよそ三十分。

そろそろ、だな。

「さて、一仕事するか」

俺は独り言を言い、懐から陳さんに貰ったブツを取り出す。

革製のシースに収まった特殊ファインセラミック製の大振りなナイフが二本、

高密度セラミック製のトンファーがワンセット、そして投石(カタパルト)セット一式。

まあ、投石器と言っても便宜上そう呼ぶだけで、

実際には様々な用途の針を打ち出すセラミックで出来た銃だ。

航空機に乗るには金物はダメだし、屋敷に着いてから武器(えもの)を用意するんじゃ

まだるっこしいしな。さて、ご主人(マスター)の話ではもう既にネズミが入り込んでるらしいが…


しかし、まさかパーティーを開くとは思わなかったぜ。

我が雇主(スポンサー)ながら、大胆なお人だこと…

吹き抜けのエントランスなパーティー会場を狙い易い場所は、

まずは各階の踊り場だろうな。

しかし、何だって個人所有の別荘が四階建てなんだよ。

迎賓館かよ、ここは。

俺はナイフを腰に、トンファーを腿に装着すると行動を開始した。

踊り場を確認するには各階の廊下から見ればOKだし、

屋敷付きのガードだって居るから多分大丈夫だろうが

作戦現場で信用できるのは自分の目だけだ。

俺は素早く二階から三階までの踊り場を確認する。

各階とも二人ずつガードマンが警備している。

俺の脳内にインプットされたガードマン本人ばかりなので問題無し。

さて、俺のカンでは天井裏がヤバそうだ。

頭に叩き込んである見取り図を検索し、天井裏への階段を見つける。


ん?

鍵なんざ掛かって無い筈なのに、ドアが開かないぞ。

もちろん、いきなりノブを掴んでガチャガチャなんてやってないから

もし扉の向こうに見張りが居たとしても俺には気付いて無いはずだ。

ドアにぴたっと耳を押し当て、向こう側の気配を探る。


…確かに、人間の息遣いと気配が有る。

こりゃ、ビンゴだな。

気配は一人、もしこのドアを開けようとしたヤツが来たら

何らかの対策を講じる積りか。

さて、気配は殆ど動かない。

俺はポケットサイズの感熱計測装置を取り出し、ドアの右横の壁にそっと当てる。

うん、仄かに人間の体温を感知した…

よし、こちら側に寄りかかっているな。

ダメだぜ、お前。寄り掛かるなら、壁の厚い外壁に寄り掛からないと…

まあ、俺なら壁に寄り掛かるなんて愚行は犯さないがな。

なるべくなら殺しはしたく無いが、壁の向こうじゃ眠らせるのは不可能だ。

体温の分布で大体の部位を捉えた俺は、後頭部を狙って

壁に刃渡り四十センチのセラミックナイフを突き刺した。

ドス、と鈍い音と共に手応えが返って来る。

少し待っても壁の向こうは静かなままだ。

俺はナイフを壁に突き刺したまま、ドアを開錠してそっと開ける。

狭い入り口から潜望鏡の様なアングルスコープを入れて覗くと、

ナイフを口から生やした男が壁に磔となっていた。

ドアの隙間から体を滑り込ませ、即死状態の男の体をナイフから抜いて床に転がす。

一度外に出てナイフを引き抜いて戻り男を調べると、やはり日本人ではない。

アングロサクソン系の三十台前半って所か。

所持している武器は357マグナムに弾が四ダース、おっと、腰には手榴弾(パイナップル)が四つ。

アーミーナイフ一本にベレッタ一丁、防弾はベストのみ、か。後は無線機一つ。

さて、屋根裏の状況はどうなってるかな。

狭い階段をそっと登りながら暗視眼鏡(ノクトビジョン)を掛ける。

上り切る前にアングルスコープで覗くと、だだっ広い屋根裏には

梁や柱が縦横無尽に走っている。こりゃ都合が良い。

俺は階段を上りきり、柱に身を隠しながらエントランス直上に向かって近付いていった。

途中、見張りが二人居たが問題無く眠らせる。

しかし、こりゃあんまり質は高くないな…

エントランス直上には三人程が何かを仕掛けるように動き回っている。

さて、どうするかな…


とりあえずカタパルトに催眠ニードルをセットして一番大柄なヤツに向ける。

ひゅっ

ほとんど音を立てずに飛んでいった針は、ヤツの首筋に突き刺さった。

直ぐに同じ物を装填して、次のヤツに向けて撃つ。

最初に刺さったヤツがふら付いて倒れたのと同時に次のヤツにも命中。

倒れたヤツに駆け寄りながら次のヤツも昏倒する。

しかし、三人目のヤツは冷静に分析したらしく、さっと柱の影に隠れた。

が、俺は既に三人目の真後ろに移動している。

大体の位置関係から、三人目が隠れそうな柱に当たりを付けて

移動したらドンピシャビンゴだったぜ。

「悪いな」

俺の声に驚いて振り向いた瞬間、俺は手刀を首筋に叩き込んだ。

「あうっ…」

小さく呻いて昏倒した三人目を見詰めながら俺は呟いた。

「おいおい、コイツ女かよ…」


三人を縛り上げてから仕掛けていた物を確認すると、手榴弾を使った時限爆弾だ。

もう五分もすれば完成だった様だな。

俺の食事がもうちょっと時間掛かってればコイツらの目的は達せられただろうに。

まあ、人生そんなもんさ。

俺は生きている五人を纏めて縛り上げ、屋根裏から出てガードマンたちを呼んだ。

後片付けを頼み、取調べは後で俺とご主人で行う旨を伝える。

また、一応他にも俺が予想した怪しい場所を見回るように指示し、

そろそろうんざりしているだろうアイシャ様とセラを助ける為と、

ご主人に報告をする為に服の乱れを直してからパーティー会場に降りて行った。




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