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21.血臭

作者です。いつもご愛読ありがとうございます。

本日、久々の短編「ネオ・ウインド 〜新たなる風〜」を投稿致しました!

この作品は「フェルダムト!」シリーズの外伝となります。

主人公は一組の少年少女ですが、もちろんベアも出演しますし、意外なあの人が!?

「真夏」のこれからにも関わりの有るエピソードとも言えます。

もちろん、関係を知らなくても楽しんで頂ける様に仕上げていますので、お気軽に読んで頂いて、感想や評価を頂ければ幸いです。

URLは以下の通りですが、「小説家になろう/小説を読もう」にてタイトルや作者名で検索頂いても出て来ますので、どうぞよろしくお願いします!


小説URL:http://ncode.syosetu.com/n4875d/

「いくらなんでも、迂闊過ぎます!!」

ベアの声がサロンに響く。

テーブルにはしょぼん、と項垂れたマスターと半泣きでオロオロするアイシャ様が座っている。

「ああ、今回は私の認識の甘さでアイシャを危険に晒してしまった…

 済まなかった、ベア」

項垂れたままベアに詫びるマスター。

中標津での襲撃犯人の男女二人はロナウドの指揮する警備隊が拘束して帰って来たが、

双方とも重態で話が出来る状態ではない。

もちろん警察も来たが、神崎家コネクションによりうやむやとなっている。


「ベア、ごめんなさい…私がお父様に無理を言って連れて行ってもらったの…

 だって、ベアと一緒に地平線を見てみたかったから…」

美しきルビーの瞳からポロポロとダイアモンドを零しつつマスターを庇うアイシャ様に、

さすがのベアもそれ以上怒る事は出来ず、

「…まあ、次からはお気を付け下さい」

と言って黙ってしまう。

「さあ、お茶にしましょう!」

私は場の空気を代える為に、わざと陽気に声を上げる。

「ねえ、もう入っても良いかな…?」

ふと見ると、サロンの入り口のドアからレイラ様が恐る恐ると言った態で覗いている。

「ああ、もちろんだよレイラ!さあこっちへおいで、一緒にお茶を飲もう」

マスターが微笑みながら声を掛けると、レイラ様はにっこりと笑いながら

タタタ、と掛けて来てアイシャ様にピョン、と飛び付いた。

「姉様、なんで泣いてるの?どこか痛いの?」

心配そうにアイシャ様に声を掛けながらハンカチを取り出し、

アイシャ様の涙を拭いて差し上げるレイラ様を見てベアも微笑している。

「ううん、大丈夫よレイラ。一緒にお茶を飲みましょ!」

可愛らしいレイラ様の優しさに、アイシャ様も笑顔を見せ、穏やかな時間が動き出した。

待機していたメイド達がお茶の支度をテキパキとこなし、

五分後にはテーブルの上に紅茶やコーヒーと共にスコーンやクッキーが並ぶ。

「おいしいね、姉様!」

お口の周りにクリームを付けたレイラ様をアイシャ様がティッシュで拭っている。

「マスター、自分は捕らえたヤツ等の様子を見て来ます。

 あと、少々セラをお借りします」

ベアの言葉にマスターが頷く。

「ああ、だがあまり無理な事はしないでくれ」

「イエス、マスター」

マスターに答えた後、

「セラ、悪いがちょっと付き合ってくれ」

と私に言いながらサロンを出て行くベア。

「マスター、それでは少々失礼いたします。

 ミホ、後はよろしくお願いね」

「はい、セラさん」

浜松別邸付きのキャッスルメイドのミホに少し指示を出し、ベアの後に続く。

中標津のお屋敷はまだ完成したばかりなので、

日本国内の別邸から多くのスタッフが応援に出張して来ている。

その内で、ガードマンリーダーとしてロナウドが、そしてメイドリーダーとして

このミホが共に浜松別邸から出張して来ていた。

なんでも、ミホとロナウドは最近良い感じで、交際を始めたみたいだと聞いてるけど…?

ま、公私混同とは無縁の二人だから、幸せならば問題無いわね!

ベアについて向かったのは、シルビア、いえマリーを軟禁している部屋。

「セラ、さっき捕まえてきた二人をシルビアに見せて、知っているかどうかを聞きたい。

 お前とシルビアは妙にウマが合うみたいだから、お前から頼んでみてくれ」

あら、ベアにしてはなんだか消極的なのね…

「どうしたの、ベア。貴方がそんな事をそんな理由で私に任せるとは思えないんだけど?」

少し、からかう様な調子で私が言うと、

「ああ…シルビアの旦那を殺しちまったのは俺だからな。

 彼女にとっては憎い仇でも有る俺に命令されるよりは、お前に頼まれた方が

 彼女も従い易いだろう」

あ、そう言えばそうだったわね…

ふとベアの横顔を見ると、とても悲しそうな瞳で宙を凝視している。

私はベアが滅多に見せない繊細な一面を見てしまった様で、

「はい、解かりました」

とだけ答えて沈黙した。


私の頼みを快諾したマリーを連れて、襲撃してきた男女が寝かされている部屋に向かう。

部屋の前には、隊長であるロナウド自らが二人の部下を連れて見張りをしていた。

「セラ、ベア、どうかしたのかい?」

「お疲れ様、ロナウド。中は大丈夫?」

ロナウドに笑い掛けながら聞く私。

「ああ、一応中にも二人、見張りを置いている。

 時々覗きながら警戒しているけど、今の所目を覚ます様子も無いし

 覚ましたとしてもあのケガでは動くこともままならないよ」

ロナウドの言葉に頷きながら、

「でね、このマリーが彼らを知ってるかどうかを調べに来たの。

 入室しても良いかしら?」

ロナウドがマリーをキッと睨み付けながら

「ああ、もちろんだけど、十分注意してくれよ。

 俺はまだ、コイツを信用も許しても居ない」

マリーがため息混じりに肩を竦める。

「ああ、大丈夫だ。じゃあ開けてくれ」

マリーの後ろで黙っていたベアがずい、と前に出ながらロナウドに頼む。

「OK。ちょっと待ってくれ」

ロナウドはカギを取り出し、ドアを開けた。


「な、なにっ!!」

部屋に入ったロナウドが放った叫びに驚く私。

その瞬間、すでにベアは室内に駆け込んだ。

「!これは…」

ベアが息を呑みつつ懐から大振りなナイフを取り出す。

ロナウドとベアの肩越しに見えた室内には、真っ赤なペンキがぶちまけられている様だった。

そして、あの独特の臭い…!


「いえ、これは…血!」

私も思わず息を呑みながら、凄惨な光景に唖然としてしまった…



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