根源たる力は海ではない
絶対王政
その時代、どこの国も国の頂点に君臨する王の手によってすべてが握られていた。そこに人権なぞ存在しなかった。
王の気まぐれによってすべてが決まる。王の気まぐれによって始まり、王の気まぐれによって終える。時に、王の気まぐれによって人の命が奪われることがあった。
王によって決められた重税や法律。辛い境遇に立たされようとも、命が惜しい人民はそれを遵守し続けた。王に怯えながら毎日を送り、重圧する生活にほのかな幸福をたぐり寄せながら人民は息づく。
王が変われば、国も変わる。人民はそう信じていた。逃げたくなる現実に、彼らは願っていた。
毎日のように教会へと通い、ステンドグラスにて微笑む聖母へ膝をついた。頭を下げた。すべてを捧げる覚悟で、彼らは強く祈った。
けれど、誰も戦おうとはしなかった。
西暦が変わると、王も変わった。
先代の王 イゴールが死去後、その息子であるライザックが後継者となった。
ライザックは他の王とは違った。人民が祈ったように、国が変わった。
重税も軽くなり、人民の財布に余裕ができるようになった。法律から矛盾がなくなり、免罪で捕まった人民も解放された。
ライザックは金色の柄や縁をあしらった赤いマントを好み、王家に伝わる冠を被り、王座に高慢に笑い胡座をかいた。気まぐれではあったが、人の命をむやみに奪うようなことはしなかった。
しかし、ライザックは誰よりも非道だった。
これから幸福に暮らせる。
そう嬉々として喜びの歌を歌った人民達に、新たなる法律が叩きつけられる。
歌は消え、笑みが絶えた。
ライザックは高々とたつ王座から、声なく嘆く人民を嘲弄として嗤う。
再び、人民は不幸の海に飲まれていった。