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その12

 溜息をつきながらオツムを下げている相手を見やって、いかにも勝ち誇った表情の木俣さん。さらに持論を展開してきた。


「支店長さ、首謀者じゃね?」


「え、ええ。その可能性は高いような……」

 そして警部は考えながら、こうも続けてきた。それは独り言の風でもある。


「撃たれた犯人Aの中間俊太、それから犯人Bである福津、それにゆかりと菜美子……この四人が、端から支店長殺しも計画していたということか」


「そうそう。だからさ、支店長も問答無用で撃たれたと思うよ。支店長が半分の五千万で、あとを皆で山分けってとこじゃないかな?」


 今探偵は、自身の腑に落ちなかったいくつかの点を、徐々に明るみにしてきている――そう、種明かしをするマジシャンさながら、だ。


「では、木俣さん。その中間を殺すシナリオも、さらに行員三人が作っていたと?」


「そのとおり、中間も仲間にねっ! って言いたいとこだけどさ」

と言いかけて、今度は喉チンコを見せる勢いで笑ってきた。


「ガッハッハ……ブッブー、残念でした! まださ、百点満点じゃないもんね!」


「え? ま、まだ何か?」


 唖然とする相手を尻目に、彼女が紫煙に乗せて吐いてきた言葉――これこそ、船虫さん自身が忘れている事柄だったのである。


「いい? 福津自身が身に着けていたものだけどさ……拳銃でしょ、ストッキングにサングラスでしょ、もちろん着ていた服もでしょ、それに偽の足跡用の靴でしょ、それと……」

 話しながら探偵はそれら一つ一つに指を折り、全てを畳んだあとに再び小指を立ててきた。


「肝心要の札束なのだ! ねね、一億ってさ、どれくらいかさ張るん?」


「そ、そうですね。百万円の札束だと、おおよそ八センチかける十六センチで、新札だと厚みは一センチ程度でしょう。で、こいつが百束あるわけですね」


 実際には、金にはとんと縁のない船虫さんではある。が、そこはプロの捜査官だ。即答してきた。


「そっかあ、百個ねえ。これらをさ、現場から持ち去らないといけないことになるけどね。これってさ、相当な荷物になるよ」


「そ、そのとおりなんですがね。しかしあいつらって、そんな大きな入れものなどは……山分けしたとしても、ポケットに入りゃしないし、無論現場にも残ってなかったしなあ」


 今日何度目になるのだろうか、警部が首を捻っている。というか、次々と思わぬことばかりを聞かされ、ほとんど一ヶ所に停止できないでいるのだ。


「まあ、こちとらは何のしがらみもないから言えるけどさ」


「し、しがらみ?」


 いきなり探偵から発せられてきた、それも場にそぐわぬ言葉に、眉をひそめる警部殿。

 この時だった。これまたしがらみのない“まるで置物”君が、何故だか傍らで一人頷いているのだ。


「なるほど、なるほど。そう言えば、大きい鞄を持ってたのがいましたっけ」


 そう言われても、まだ首を捻ったままの船虫さん。


「田部ちゃんさ、大きい鞄って、誰が……」

 そして気がついたと同時に、今度は顔を大きく左右に振り出した。それも、笑いながらである。


「またまた田部ちゃん、冗談を……警察関係者だよ、あいつは! ハハハ、そんなことなんてするはずがない」


 だが目の前の探偵が、さらに追い討ちをかけてきた。


「じゃあ他にさ、どデカイ鞄を持って現場に入ってきた人物を述べてみてよ!」


 彼女の、その冷たき瞳が、いつの間にやら二つとも氷点下になっている。


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