夢で見た冒険物
「『思えば遠くに来たもんだ』って、そんな歌があったな」
古代の迷宮。その奥にあった空飛ぶ船のブリッジで
ふと、そんな事を漏らす。
「たしかにな。あれからもう2年は経つのか」
気が付けば横に並ぶように甲冑をまとった女が立っている。
その髪は雪のように白く、その目は燃える炎の色。
何よりも特徴的なのは、頭に生える角の存在だ。
「ん?…聞いてたのか、と言うか本当に動くのか?
いくら保存状態が良いとは言っても数千年は放置された遺物だぞ?」
「私に聞くな。そう言う事はアイツに聞いてくれ。
…説明はされたが頭が痛くなったんでな」
ふと浮かんだ疑問を投げれば、頭を振りつつそう言う。
戦いともなればまさに《鬼神》の如き活躍を見せるこいつも
頭を使う方は苦手だったな。
「むっ! なんとなく馬鹿にされた様な気がするぞ?
私は『おーい、ブリッジ! 聞こえるか~?』むぅ…間の悪い…」
「くくく…、『アーアー、こちらブリッジ。
ちゃんと聞こえてるぞ。そっちの調子はどうだ?
動力炉は? ケーブルの類に断線とかあったらシャレにならんぞ?』」
「『それが聞いてくれよ!! 保存状態もさることながら
この動力が前に見た『オータム城』に使われてた『エーテル炉』
なんかとは比較にならない…
「ア~…ハイハイ。ソノ話ハダーイブ聞イタカラ少シ黙ッテロ」
なんだ! 僕がまだ話しているの、うが!? 「…ようやく黙った」』
…あ~、ボコられたか。
アイツ、非力な割に杖の一撃は重いんだよなぁ…。
てか、やっぱり向こうで狂喜乱舞してたのか…。居なくて良かった。
「『おーい、黙らせるのは良いが、こっちは何をすればいいのかさっぱりだぞ?』
「…ちょ!?僕の扱ブベッ!?」
『…問題無い。ブリッジの正面に赤いレバーと水晶球があるはず。
…まず水晶球に触れて、出てくるコマンドの一番上を押してからレバーを引いて』」
了承し、球体に触れ、
説明通りに操作しレバーに手をかける。
何となく視線を感じるとソワソワした様子の鬼娘。
「…折角だし一緒に引こうぜ?
今を逃したら絶対にできない経験だ」
「…!! そ、そうだな。せっかくだしな…。っ…「「せ―、のっ!!」」
そう言って一緒にレバーを掴み一気に引く。
ゴウン! と大きな音を立て動力に火が灯り
ブリッジの各計器が正常に稼働し始め、…空飛ぶ船が息を吹き返す。
「『ブリッジ!!!大成功だ!!!くぅ~!!
この命が吹き込まれる瞬間!!この重低音!!たまら・・・ぐひょ!!
「…嬉しいのは分かるけど、煩い」「…多分聞コエテ無イゾ、完全ニ伸ビテル」』
そんな会話をしり目に事態は進行して行く。
これまで踏破してきた迷宮が割れ、数千年振りに太古の船が陽光を浴びる。
「『さて、故郷の言葉では「初フライト」って所なんだが…。
折角だし全員で言いたい事があるんだ』
『…言ってみて』『ヨッポド変ナ事ジャナケリャ付キ合ウゼ』『…僕もだ』「私も構わん」
『オッケー、じゃあ5秒カウントしたら『・・・』って言う。いいか?』
『『『「(…)オッケー!」』』』」
思い返してみよう。
『…じゃあカウント、5』
俺達の出会ったあの日を。
『アッ、ズリ―ゾ! 4!!』
これまでの冒険を。
『じゃあ僕が 3!』
そしてここから始まる。
「最後はお前だぞ? 2!!」
…俺達の物語を。
『オッケー!! 1 !!』
『『『「「発進!!」」』』』
…まぁ、続かないけどね!!
とりあえずキャラ説明をば…
『語り手』人間の男。日本出身のパーティーリーダー
「甲冑女」鬼族の女。パーティーの切り込み隊長
「機械男」人間の男。メカニック担当で知識人
「片言男」魔族の男。回復・支援担当でガラが悪い
「無口女」エルフの女。魔法攻撃担当。固定砲台
実は全員別々の世界出身で
ある存在に迷宮の踏破を依頼された勇者達。
しかし、問題の迷宮に入るには上空からの侵入しか無く
古い文献に記された“空飛ぶ船”があるとされる遺跡に向かい
2年の歳月の果て、ようやく目的の船を手に入れ
問題の迷宮へ…。
と言う夢でした。