始まりの刻
どうも、久しぶりに小説を投稿しましたSHINです。
今までは様々な理由で作品を消していたのですが、この作品は最後までやりきりたいと思っていますので、応援よろしくお願いします
雨が、降っていた。
人の体と心を凍らせる、残酷な雨。
曇天から降り続くその雨は、止む事を知らない、ただ地面に叩きつけられて雨音を轟かせる。
通常な思考の持ち主なら、家に入って雨を凌ぐだろう、だが・・・・
そんな冷たい雨が降り続ける中、川原に呆然と跪いて雨に打たれる少年が居た。
少年の年齢は幼く、未だ十歳にも満たないだろう。
その少年が纏う雰囲気には幼さとあどけなさが漂い、雨に打たれ、肌に密着する衣服は、見ているだけでも不快感を与えるほどだろう。
だが、少年にとってはそんな事柄など気にも留めない程度の事でしかない。
何故なら少年の瞳は一点を見つめたまま動かないからだ。
光を失い、虚ろな状態でその一点を見つめる少年の瞳は、十歳にも満たない子供にしては、余りにも感情味にかけるものだった。
そして、そんな少年の視線の先には---------------『血まみれの男』が倒れていた。
少年はその男を見下ろし、小さく口を開いた。
「お父・・・さん・・・・・・・」
小さな手、未だ何も成す事が出来ない程の小さな手。
そんな手を使って、少年は目の前の男を揺する。
「起き・・・て、よ・・・・・お父さん・・・・・・・どうし・・て、動いてくれない・・・の?」
少年は首を傾げる、だが、何も変わらない。
少年の目の前にうつ伏せに倒れているその男は身じろぎすらしない。
腹部は裂け、止め処なく大量の血液が流れ出して、雨と一緒に地面を紅く濡らしている。
薄っすらと開かれたその瞳には既に光はなく、呼吸すらしていない。
「お父さん・・・・・・・・起きてよ」
少年は何度も何度もその男を揺り起こす。
まるで、男が目覚めるのを待っているかのように・・・・・
そして暫く体を揺すってもビクともしない男を見た少年は、体を震わせた。
「お父さん・・・・・・・・どう・・・して・・・・・・・--------------------------」
少年の呟きは、突如、曇天の空から響いた雷鳴に掻き消され、聞こえなかった。
震える体、雨に濡れて体温が奪われた氷の如き体を、少年は両手で抱きしめる。
「寒いよ・・・・・・いたい・・よ、お父さん・・・・・・・」
そんな呟きが吐かれた時、少年を濡らす雨が止んだ。
頭上を見上げると、傘が掲げられていた。
「『翔也』」
少年に声が掛けられ、少年はその声と傘の主を見上げた。
背後に、栗色の髪を長く伸ばした女性が立っていた。
「お母さん・・・・・・・・」
「うん。 なあに」
少年の呟きに、その女性は首を傾げる。
すると少年は男を指差し、
「お父さん・・・・起きない」
「そうね・・・・・・。 翔也、お父さんはね・・・眠ったの、あなたを守って・・・・・眠ったのよ」
悲壮感が漂う声音で告げるが、その顔には薄っすらと笑みが浮かんでいる。
だが、その笑みはどこか無理やりに浮かべている表情にも思える。
そんな女性を見た少年は、再度、男を見つめる。
「いつ・・・・起きる・・の?」
「・・・・・分からないわ。 でも、安心して・・・あなたは私が守るから」
女性はしゃがみ込むと、少年を抱きしめた。
少年はその女性の柔らかな胸に抱かれ、ゆっくりと目を閉じた。
「だから、安心しなさい・・・・私が・・・・・・きっと・・・・・」
女性の目から一筋の涙が零れ、頬を伝って消えた。
それから、八年の歳月が経ち、少年は--------------------