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ようこそ、GW限定の『図書館島』へ! ~若者の読書離れ対策~

作者: 永進
掲載日:2026/04/28

GW限定の島。

「大丈夫? 手をつなごうか?」

「いい。夫婦でもないのに」

僕の問いかけに、彼女の『さえ』さんは、そっけなく返してくる。

恋人なのに手をつなぐ関係ではないらしい。

夫婦になれるかな、と高校生の僕は考える。

黒いおかっぱ頭で、背が小さくて、顔も可愛い。


…ちょっと照れてきた。


「行くよ、青柳君」

「う、うん。待って」

「GWだけなんだからね、この島にいることができるのは」

ちょっと興奮している『さえ』さん。可愛い。いつもは無口だから余計可愛い。

「早く」

スタスタ、と1人で歩いていく。やはり、早歩き。


「本当に好きなんだなあ、本が」

僕は1人、感心する。


ここは、図書館の島。

本のために存在し、4月に30冊以上読んだ(むろん、マンガは除外)、そんな読書家にしか訪れることができない。

なお、中高生限定。


若者の読書離れ対策で日本の政府が考えた、『図書館島』。

本が好きな人にとっては楽園でしかない。




―1ヶ月前、つまり4月


「すやすや」

「寝るな」

「いたっ!」


図書館にいるのに僕は大きな声を出してしまう。


「叩かなくてもいいじゃないか」

ノートで叩かれた頭をさすりながら、僕は涙目で『さえ』さんに文句言う。

『さえ』さんは感情の少ない顔で淡々と、

「私と図書館島に行く気はないの?」

「本は苦手なんだよ。

ただでさえ本が苦手なのにマンガ禁止とか、酷くない?」

訴える僕。

「あんたが私と一緒に図書館島に行きたいって言うから」

はあ、と呆れられる。

「だって…」

「だって?」

「いや、何でもない」

「あっそ」


キミが好きだから、とは言えない。

この子とは、高校から。それまでは、この子の存在は知らなかった。


可愛い。

いっつも1人で読書してて、なんか神秘的で可愛い。他の人たちは会話か睡眠なのに、この少女だけ淡々と本を読んでいる。それが、ものすごくキュンとくる。


もっと早く存在を知っていたら、『図書館島』にもたくさん行けたのに、と後悔している。

あそこの存在は、前から知っていた。僕には関係ないって思ってたけど。


「…」

何も言わず、右手を差し出してくる。

手をつなげばいいのだろうか、まだ恋人じゃないになんて悩んでしまう。

「見せて」

ぶっきらぼうに。

「て、手相?」

運命の相手かどうかを?

手相はよく変わるらしいから、それで運命の相手かどうかを決めるのは、どうかと。

「読書記録」

「え?」

「早く」

「どくしょきろく。ああ、はいはい、ノートね。

だよねー」

あはは、と笑いながら、ノートを僕は渡す。


読書記録。

『図書館島』に入るには、30冊読んで、それらの感想を書かないといけない。

パスポート代わり。


「まだ10冊」

「凄いでしょ、今14日だから余裕あるよ。

一緒に図書館島に行きたいから」

「わたしは30冊埋まってるよ」

「はやっ」

「ふふん」

「ズルしてない?」

少し怒りのある顔、剣道みたいにパシン、とノートで頭を叩いてくる。

竹刀じゃないけど面はしていない、普通に痛い。

けど、好きな人に叩かれたから嬉しくもあり。


決めた、『図書館島』に行けるってなったら告白しよう。


「さっさと本読め、早く全部埋めろ」

椅子の脚をゲシゲシと蹴ってくる。やはり可愛い。


僕は本が苦手。

でも、この子と一緒にGW、『図書館島』に行けるよう、頑張ろう。


「1冊は1000ページ越えるやつね」

「マジかよ」

頑張らないとヤバいな、おい。あと16日しかないに。

「てか、そんな本あるの?」

「京極夏彦とか?」

「マジかよ」

ヤバいな、京極夏彦。




―そして、GW。


「いやー、よく頑張った、僕」

自分で自分を褒めたい。


「あっ、その栞いいね、名探偵ポアロが描かれてる」

今は、売店で買い物をしている。


本のために存在する島。

けど、本だけじゃなく、栞やブックカバーや、作品に出てくる料理を出すレストランとか、読書家にとっては嬉しいものもある。


値段も高すぎず。まあ、中高生しかいないからね、この島には。スタッフ以外は全員子供。


『さえ』さんは「フンスフンス」と興奮しながら、買い物をしている。

読書家にとっては楽園だしね、この島は。


僕は、『さえ』さんが幸せだったらそれでいいかな。うん、一緒に来れてよかった。


図書館に来る前に告白して、カップルにもなれたし。

実感はないけど。この島が僕たちの初デートだしな。


会計を済ませる。


「じゃあ、メイン行く? 全ての本がある巨大な図書館に」

コクコクとうなずかれる。


全ての本がある。

昔の本から今の本まで、本として出たものは全て。世界中の本で。


「待って」

「はやく」

可愛いなあ、と思いながら、僕は彼女の後を追った。


まだ初日。

『図書館島』の非日常は、はじまったばかり。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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