表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

依頼

木原春子(きはらはるこ)は、平並学園高等部1年生である。


この少女、見た目はとても高校生に見えないほどの童顔の持ち主で、さらに体も小柄なためよく中学生に間違えられる。


だが、そんな容姿を見て(あなど)った者は、大抵痛い目を見ることとなる。


「春ちゃーん!ちょっとこのソファ持ち上げてくれる(・・・・・・・・)ー?」


「はーい」


そう言うなり春子は、言われた通りソファを軽々と(・・・)持ち上げた。


―――木原春子と言えば、学園でも知らない人間がいないほどの怪力の持ち主である。


その細い腕のどこにそんな力があるのか、それを知る者は1人もいない……。



「ありがとー。ソファの下にへそくり隠してるの忘れててさー」


「……部室のソファの下をへそくりの隠し場所にしないでくださいよ……」


春子が呆れた目で見ると、少年は朗らかに笑って見せた。


この少年こそ、我らが探偵クラブの部長、秋原大和(あきはらやまと)だ。


彼は、平並学園高等部2年生で、春子とは先輩後輩の仲である。


ただ、やはりこの男も変わっており、自分のしたいことは何でもするという自由な人間だ。


いつでもどこでもマイペースな部長に、春子はもう何度も呆れ、何度も和まされている。



「そう言えば、来ませんねー夏樹先輩」


「あぁ、そう言えば来てないねぇ……」


「ははっ!散々人に遅刻厳禁て言っといて自分が遅刻してやんの、


 ―――――痛い!!」


春子に馬鹿にされ、頭をはたいた少年こそ、篠原夏樹(しのはらなつき)、その人だった。


平並学園高等部2年で、探偵クラブ副部長である彼は、なかなか整った顔立ちをしていた。


ただ、春子を見下ろしながら浮かべるその表情は、口元しか笑っていなく、正直恐怖さえ覚える顔だ。


「はは!春ちゃんは随分とまぁデカい口が叩けるようになったねぇ?」


「すみませんごめんなさい反省してます―――ッ!!」


笑顔で言いながら、手は春子の頭をおもいっきり下へと押しつぶしている。


そんな彼は、やはり学園でも有名なほど唯我独尊な性格をしていた。


ただ、それが自惚れでなく、頭もいいし運動神経もいいので、春子としても何とも言えない。


「あ、あの……」


春子は、そこでやっと夏樹の後ろに立っていたる少女に気がついた。


見ると、それは中等部の制服で、わけがわからず夏樹の方へ振り向いた。


「俺は理由もなく遅れてこないよ。お前じゃあるまいし」


しっかり皮肉も言いながら、夏樹はストーカーだって、と言った。


それを聞いた春子は、目を丸くした。


「ストーカー!?」


そのあと、夏樹先輩が!?と言った春子は、再び夏樹に押しつぶされ、それを見た大和は吹き出していた……。



「―――さて。それじゃあ、話を聞こうかな?」


そう言って大和は、依頼人―――原田望美へとほほ笑んだ。


望美はその笑顔に安心したのか、落ち着いて話を始めた。


話を聞き終えた春子は、顔を真っ赤にして憤慨していた。


「何て奴だ!見つけ次第、鉄アレイでも投げつけてやる!!」


「シャレになってないから、ちょっと落ち着こうねー」


そうやって春子を落ち着かせた後、大和は再び望美の方を向いた。


「うーん……嫌じゃなければ、でいいんだけど、さっき言ってた封筒の中身、見せてもらってもいいかな?」


大和がそう言うと、望美はすまなそうに目を伏せ、


「すいません……。あまりに気持ち悪くって、破いて捨ててしまって……」


「そっか……。まぁ、それが普通の反応かもしれないね」


証拠品を捨てられ、少々残念な気もしたが、大和は仕方がないよ、と言って変わらず微笑んでいた。


「あ、でも、内容は覚えているんです。中は手紙だったんですけど、なんか……紙いっぱいに"好きだ"とか"愛してる"とかってあって……それと一緒に、私の、その……下着姿の写真が……」


それを思い出したのか、望美は顔を青くして震えていた。


そんな望美を見て、夏樹は眉を寄せた。


「気色悪い……。んなもん送ってなんになるんだっつーの」


「まぁ確かに、"いつでも君を見ているよ"っていう示しにはなるかもねぇ」


大和の言葉にさらに青ざめる望美に、春子は、


「さいってー!女の敵!!任せて、望美ちゃん!!絶対にソイツ、吊るしあげてあげるからね!!」


と肩に手を置いた。


「ついでに、ソイツ見つかったら顔面にお見舞いしとく?」


と尋ねる春子に、望美は吹き出した。


「―――ありがとうございます。どうか、お願いします!」


そう言った望美に、3人は力強く頷いて見せたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ