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第9話 孫とドラゴンの大冒険!

「うう…暗いし、怖い……。」


小さな声が震え、手元のランタンの光がゆらゆらと揺れる。


壁の水滴が、ぽたり、と落ちるたびに心臓が跳ねた。


ちらりと隣を見る。


相棒のドラゴンは、ブスッとした顔で前を見たまま、パタパタと飛んでいる。


目も合わせてくれない。


こいつ…! 

ちょっとは協力してくれてもいいじゃん!


そんな時だった。


「きゃっ!!」


闇の中から、ぬるりと一匹の魔物が姿を現した。 


「ガゥッ!!」


シュエルは慌てて杖を構え、詠唱を口にしようとする。


「ピュイ!」


けれど、それより早く子ドラゴンが鳴き声を上げた。


そして──洞窟内に疾風が走る。


一直線に魔物へ突っ込んでいくドラゴン。


「ちょ、ちょっと! 待ってってば!!」


シュエルの静止の声も届かない。


次の瞬間────。


「ピュイーッ!!」


銀色の小さな爪が、光を帯びて鋭く閃いた。

魔物の大きな体を、まるで紙を切るかのように切り裂く。


「……えっ、うそ…強い。」


呆然とするシュエルの前で、子ドラゴンはプイッと顔をそむける。

しっぽをぱたん、と一度だけ振り、そのまま先へ進んでいった。


「ねぇ!ちょっとは協力してよ!!」


返事はない。


仕方なく、シュエルはほおをぷくっと膨らませ、ランタンを持ってその後を追う。


「もういいもん!私だって勝手にやるからね!」


◇◇◇


二人は奥へ、奥へと進んでいった。


途中、何度も魔物が現れたが──。

全部、子ドラゴンが片づけてしまう。


そのたびにシュエルは杖を握ったまま立ち尽くし、どんどん不満を募らせていった。


協力してって言ってるのに……!!


そんな時だった。


「ガルルゥ!!」


洞窟の奥から、唸り声が重なった。

複数の影。牙をむいた魔物の群れが、じりじりと二人を囲む。


「今度こそ協力して倒そう!」


叫んで視線を向けたが、子ドラゴンはすん、とした顔のまま。


──まるで『俺ひとりで十分だ』と言わんばかりだった。


「もぉー!!だからそういうとこがダメなの!!」


その瞬間だった。


「あ、危ない!!」


ひときわ鋭い爪が、子ドラゴンのすぐそばを掠めた。


考えるより先に、シュエルの体が動いた。


咄嗟に子ドラゴンを押しのけるように飛び出す。

代わりに受けた衝撃が、鈍く腕を打った。


「シュエル!!」──と言わんばかりに、子ドラゴンが鳴いた。


次の瞬間、炎が爆ぜる。


「ピュイィーーーッ!!」


洞窟が赤く染まり、魔物たちは一瞬で焼き尽くされた。


その瞬間、シュエルの脳裏に、あの日の光景がよみがえる。


────森で、魔女に追い詰められた時。

どこからともなく飛んできた、あの火球。


息を荒げたまま、子ドラゴンが振り返る。


倒れ込んだシュエルの元へ、恐る恐る近づいた。

そっと顔を寄せて、傷口をぺろりと舐める。


「……だから言ったじゃん。協力しよって。」


シュエルの声は少し怒っていて、でもどこか優しかった。


子ドラゴンはしゅんとしながら、しっぽを丸める。


「ありがと、大丈夫だよ。」


そう言って笑うシュエルに、子ドラゴンは小さく鳴いた。


その瞳には──不器用な光が宿っていた。


ずっと私を守ろうとしてくれてたんだよね。

森での時も────。


だからきっと、私を守ろうとして一人で頑張ろうとしてくれてたんでしょ?


でも……。


「今度からはちゃんと一緒に戦お? 

 私も強くなるから!」


「ピュイ!」


ドラゴンは力強く鳴いた。


その声は、先ほどまでの反抗的な響きではなく、

小さくても誇らしげな“相棒”の声だった。


シュエルはにっと笑い、杖を掲げる。


「よーし!

 おじいちゃんの試練、乗りこえるぞー!!!」


二人の声が洞窟に反響する。


◇◇◇


こうして二人は、洞窟を奥へ奥へと進んでいった。


途中、幾度となく魔物が姿を現した。

だが、今の二人に恐れはない。

炎と風。爪と魔法。息を合わせるようにして、次々と魔物を打ち倒していく。


「ピュイ!」


「ナイス! あとは任せて!」


かつてのギクシャクした二人の姿は、もうどこにもなかった。


────そして、ついに最深部へと辿り着く。


「わぁ……! 綺麗!」


「ピュィィ!」


そこは、まるで星空が地の底に降りたような空間だった。


壁一面に散りばめられた鉱石が、光を反射してきらめいている。


手を伸ばせば届きそうな無数の星。


それが、まるで二人の冒険を讃えているように輝いていた。


「これが……おじいちゃんの言ってた黒曜石。」


シュエルは息を呑む。

自分の力で、相棒と共に辿り着いた光景。

胸の奥から、じんわりと温かいものがこみ上げてくる。


「なんか……取るの、勿体ない。」


神聖な場所を傷つけてしまうようで、足がすくむ。


だが────。


「ピュイピュイ!!」


そんなシュエルの気持ちを知ってか知らずか、ドラゴンは元気いっぱいに飛んでくる。


その口には、しっかりと黒曜石のかけらを持って。


「ちょ、ちょっと! もう取ってきたの!?」

 

得意げに胸を張るドラゴンに、思わず笑みがこぼれる。


「ねぇ……綺麗だなぁ、とか思わないの?」


きょとん、とした顔。

情緒もなにもない、あまりにも“彼らしい”反応に、シュエルは肩をすくめた。


「ま、ドラゴンに綺麗とか分かんないか。」


不意にドラゴンの瞳が視線が吸い寄せされる。


夜空のように深く、星のように輝く、優しい色。


「そうだ!」


シュエルは微笑む。


「あなたの名前、ステラってどうかな? 星って意味だよ。」


ドラゴンの目がまん丸になる。

 

次の瞬間、嬉しそうに翼をぱたぱたさせた。


「ピュイ! ピュイピュイ!!」


「気に入った? じゃあ、これからよろしくね、ステラ!」


「ピューーーイ!!」


洞窟の光が、ふたりを包み込む。


星々の輝きが祝福するようにきらめき、こうして、ひとりの少女と一匹のドラゴンは──本当の絆を結んだ。


最強のコンビの誕生である。


◇◇◇


「うむ……成長したな。」


その様子を、誰かが静かに見守るものがいた。


アレク・レーグルである。


心配でついてきていたのだ。

二人には気づかれないよう、透明化の魔法を使って。


前回は愚策じゃった────。


以前のようにシュエルを一人で行かせて危険があってはいけない。何かあればすぐにでも助けられるようにと目を光らせていたのである。


シュエルが怪我をした時も、思わず飛び出したくなったものだが────。


わしの心配は杞憂であった。


わしの孫は、立派に育っておる。


その小さな背中を見送りながら、胸にじんわりとした温かさを覚える。

 

さて……わしはそろそろ帰って、二人の美味しいご飯でも作って待つとしようかの。


第9話ありがとうございました!


もし少しでも気に入っていただけたら、

コメントやレビューで応援してもらえると嬉しいです!


次回は——あの魔女が再び登場!!


「働け。」


第10話「わし、まだ火葬されたくないわい!」

次回もぜひお楽しみに!

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