第7話 孫は使い魔がほしい!
「おじーちゃん!
私のクッキーたべたでしょ!!」
ぷくっとほっぺを膨らませるシュエル。
その姿が愛らしく、思わず笑みが溢れる。
「食べておらんよ。」
いくら可愛い姿が見たいといっても、わしが孫のお菓子を勝手に食べるわけがなかろう。
……ほんとじゃよ?
じゃが、確かに最近食材がなくなることがある。
しかし、この家にはわしとシュエルしかおらん。
シュエルでもわしでもない……。
ならば一体だれが?
まあ、よいか。
「えー?」と文句を言うシュエルを席につかせる。
「さあ、今日の授業をはじめるぞ」
「はーい」
「本日の授業は使い魔についてじゃ」
「使い魔?」
「そうじゃ。使い魔とは魔法の補助をしてくれる精霊のことで、魔法使いたるもの、使い魔を従えてこそ一人前になれると言われておる。」
「ん〜なんか補助ばっかり……。
私、攻撃魔法のほうがいいな〜。」
「ば、馬鹿タレ!
魔法は危険じゃと何度言えばわかるんじゃ!」
元気に育っているのは良いことじゃが、少々好戦的すぎる。
……育て方、間違っておらんよな?
わしは間違っておらん…はずだ。
ふむ、こういうときは……。
「来い、ノクティ!」
わしが呼びかけると、影がぐにゃりと歪む。
そして、闇の中から茶色いもふもふの頭がぴょこっと現れた。
「はいっす!」
元気な声とともに、活発な少女が現れる。
全身ふわふわの羽毛に包まれ、夜空のような黒い瞳がきらきらと輝く。
頭にはちょこんと角のような羽毛が生えておる。
「こやつはノクティ。わしの使い魔じゃ」
「よろしくっす!」
ノクティはにこっと笑い、軽くお辞儀をした。
「えっ、この人が? 使い魔って人間なの?」
ちっちっち。違うのだよ。
「こいつは精霊でな。
本来は小さなフクロウだったんだが、わしと共に成長したことで人型になれるようになったのだ。」
精霊は基本的に、動物や虫の姿をしていることが多い。
だが、長い時を生きたり、人間の使い魔として共に成長することで力を得ると、人型の姿に変化できるようになる。
「へぇ〜! すごい!」
効果てきめんじゃ。目を輝かせておる。
「ねぇねぇ! 私も使い魔ほしい!」
「ふむ…それなら──これじゃな」
わしは分厚い古びた本を取り出した。
「その本には召喚魔法が込められておる。」
これに?と首を傾げながら本を見るシュエル。
ここでもう一押し。
どん、と空中から何冊もの本が現れる。
「わ、わ! なにこれ!」
「この本にはそれぞれ精霊召喚の術式が書かれておる。その中から、シュエルに合う使い魔を探すのじゃ」
「うん!」
────とはいかなかった。
不発。不発。また不発。
使い魔召喚には相性が重要……なのだが、ここまでとは。
シュエルもすっかりしょんぼりしておる。
「うーむ……。よし!
こうなったら『精霊の棲家』へ行ってみようか」
「精霊の棲家?」
◇◇◇
森に足を踏み入れた瞬間、空気がひんやりと変わる。
木漏れ日がきらきらと揺れ、どこか神聖な気配が漂っていた。
空気中の魔力が濃い。吸い込むだけで体が軽くなるようじゃ。
ここは精霊の棲家。
その名の通り、たくさんの精霊たちが暮らしておる。
フクロウ、猫、獣のようなもの、一つ目の魔族のような姿のものまで────。
ここは種も形もさまざまな精霊が共存する、不思議な森。
「あら、アレクじゃない! 久しぶりね!」
花びらでできたドレスをまとい、蝶の羽を持つ小さな精霊が現れた。
「久しいのう。今日は孫の使い魔を探しにきたんじゃ」
「へぇ〜。孫ができたんだ。いい子が見つかるといいわね!」
そう言い残すと、興味がなくなったのか、ぱたぱたと飛び去っていく。
まったく、あいかわらず自由なやつじゃ。
「ほれ、シュエル。気になる精霊はおるか?」
「うーん……あっ! あの子可愛い!!」
シュエルが指さしたのは──黒い雲。
……ではなく、もこもこの黒羊の精霊だった。
星のように光る二本の角を持ち、毛皮は夜の雲のように輝いている。
「ほう、黒羊か。良い選択じゃ。行ってみなさい」
「う、うん…。」
シュエルは黒羊を怖がらせないようにゆっくりと近づき、優しく声をかける。
「はじめまして。私シュエル。あなたとお友達になりたいの」
────が。
黒羊はプイッとそっぽを向き、森の奥へ逃げていった。
差し出した手が宙に取り残され、シュエルの背中からは切ない空気が漂う。
わしは慌てて駆け寄り、励ましの言葉をかける。
「大丈夫じゃ。次がある!そうだ、あの狐なんてどうじゃ?」
岩場に座る白い狐。九本の尻尾が光を受けキラキラ輝いている。
「わぁ……かわいい!」
よしよし、いい反応じゃ。
だが────。
◇◇◇
結論から言おう。惨敗である。
あのあともシュエルは何度も挑戦したが結果は変わらなかった。
どの精霊も契約には至らず、シュエルはすっかり落ち込んでしまった。
「わたしなんて…才能ないんだ……。」
声が震えていた。
今にも泣き出してしまいそうだ。
「そんなことはない。
ほら、お菓子でも買って帰ろう。
あのクッキー、好きだったじゃろ?」
「……いらない。」
大好物のお菓子でもダメとは、これは重症じゃな。
そうこうしていると家に着いてしまった。
二人の空気は未だ重い。
「シュ、シュエル、わしと魔法で遊ばんか?」
なんとか元気を取り戻して欲しくて声をかけたが────。
「いい。寝る。」
結果は惨敗。
シュエルはそう言い残して部屋へ入っていってしまった。
どうしたものか……。
◇◇◇
まぶしい光に目をこすりながら、もう一眠りしようとしたその時。
────重い。
まるで何かに押しつぶされているように息が詰まる。
目を開けると、そこにいたのは────。
全身を黒い鱗で覆い、小さな翼と角を持つ生き物。
あどけない表情だが、間違いない。
ドラゴンだ。
「ピュイ!」
「え、えぇ!? なに!?」
シュエルの悲鳴が部屋に響く。
こうして、少女と小さなドラゴンの出会った。
これは、二人の新たな冒険の
──始まりにすぎない。
「シュエル!!何があったのじゃ!!」
第7話ありがとうございました!
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次回、次回の物語は——ドラゴンとのドタバタ生活スタート!
第8話「孫はドラゴンに頭を抱える」
次回もぜひお楽しみに!




