第20話 わし、祭りへ行く!
「うわぁ!! 見て! きれい!!」
街中が光に包まれていた。
通りには色とりどりの提灯が吊るされ、音楽と笑い声が絶えない。
焼きたてのパンの匂い、甘い果実酒の香り、香ばしい肉の煙が入り混じり、夜風に乗ってふわりと流れてくる。
「これがお祭り……!
すごいね、おじいちゃん!」
「ふぉっふぉ。そうじゃのう。
こうして笑顔が戻るのを見られるのが、一番の報酬じゃ。」
アレクは腕を組み、満足げに頷いた。
魔物たちを一掃したことで、街は脅威から解放された。
その感謝を込めて、住民たちは急きょ祭りを開いたのだ。
──もっとも、他の《九つの杖》はさっさと帰ってしまったが。
「おじいちゃん!! 私ね!
お祭りに行くのがずっと夢だったの!!」
「ほう、そうじゃったのか?」
アレクが首をかしげると、シュエルは一瞬きょとんとした。
「あれ? 私……なんでそんな気がするんだろ。
お祭りなんて、知らなかったはずなのに……。」
小さく眉を寄せ、考え込むシュエル。
たが、すぐに目の前の眩しい光景に気を取られてしまう。
「おじいちゃん見て!! あれ何!?」
指差す先には、飴細工の屋台。
ウサギや猫、花や竜──繊細に作られた飴が、光を受けてきらめいている。
「おお、飴じゃな。ほれ、好きなのを選んでええぞ。」
「いいの!? ありがとう!」
嬉しそうに屋台を覗き込み、
「これもかわいい……いや、こっちも……」
とコロコロ表情を変えるシュエル。
その姿を、アレクは目を細めて静かに見守っていた。
「これにする!」
ようやく選ばれたのは、翼を大きく広げたドラゴンの飴。淡い光を帯び、まるで今にも飛び立ちそうだ。
「それでいいのか?
もっと可愛いのもあるぞ?」
猫やウサギ、花の形もあるというのに、あえてドラゴンとは。
「ううん! これがいいの!
ステラとおじいちゃんのドラゴンと同じだもん!」
「……そういうことか。」
アレクは嬉しそうに目を細めた。
その時だった──。
「ピュイ!!」
突然、シュエルの影から抗議の鳴き声が上がる。
ステラである。
「あっ、だめだよ!
出てきたら見つかっちゃう!」
影の中で、ステラは尻尾をぱたぱたと振りながら不満を訴えている。
どうやら相当ご立腹のようだ。
「すまんすまん。
お主まで祭りに出たら、大騒ぎになるでのう。」
アレクは苦笑しながら、別の屋台で買った焼き串を差し出した。
「ほれ、これでも食べて機嫌を直せ。」
「……ピュイ。」
ぷいっと顔をそむけながらも、しっかりと串をくわえてもぐもぐ食べるステラ。
「ごめんね、ステラ。
おみやげたくさん買って帰るからね!」
宥めるように笑いかけるシュエル。
その隣で、アレクは目を細めて二人を見つめていた。
◇◇◇
夜が更けるにつれ、街はますます活気を増していった。
そして、空に──花が咲く。
輝く光の花。
ピンク、青、黄色……色とりどりの花が次々と開き、花びらが光を纏いながら、雨のように降り注ぐ。
「おじいちゃん! 見て! 花が!」
シュエルの瞳に映る光は、星よりも眩しく煌めいていた。
アレクはその横顔を見つめながら、静かに呟く。
「うむ……平和が一番じゃな。」
少し冷たい風が頬を撫でた。
「おじいちゃん!
私、おじいちゃんの孫になれてよかった!」
その無垢な笑顔に、胸が熱くなる。
「……そうか。
わしもお主が孫で、本当に幸せじゃよ。」
──この時、わしは信じておった。
この穏やかな日々が、永遠に続くのだと。
このあと訪れる事件など、夢にも思わずに……。
星と魔法の光が溶け合う夜空の下、
わしはただ、孫の笑顔を見守り続けていた。
第19話ありがとうございました!
次回は第20話!
シュエルとアレクに事件発生!?
次回もぜひお楽しみに!
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