表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/30

第16話 弟子達、師匠のために頑張る!

「勝ったよ! おじいちゃん!!」


シュエルが駆け寄ってきた。

顔には疲労の色が滲んでいるが、その表情は眩しく、笑顔だった。


「うむ。よくやったな。」


アレクは優しい眼差しでシュエルの頭を撫でる。


「おじいちゃん……見ててくれた?」


「見てたとも。最初から最後まで、ずっとな。」


その言葉に、シュエルの瞳が潤む。


ただの勝利じゃない。


──初めて、踏み出した。夢への一歩。


「う、うそ…私が…負けるなんて……!!」


アウラが唇を噛み締め、拳を震わせていた。

強気な少女の瞳に、悔しさの雫が光る。


サエルがため息をひとつ。


「お前もまだまだだな。

 明日から練習メニューを三割増しにしてやらないとな。」


「そ、そんなぁーー!!」


思わず叫ぶアウラ。


しかし、サエルの手がぽんと彼女の頭に乗せられる。口調とは裏腹にその表情は暖かかった。


アウラの肩が小さく震え、次の瞬間にはぐいっと涙を拭っていた。


パッと立ち上がり、彼女はシュエルに向き直った。


「シュエル!! 

 今度会った時は、絶対に負けないんだから!!」


「うん! 次も私が勝つよ!」


ふたりは熱い視線を交わす。

笑顔のまま、両者は小さな手をぎゅっと握り合った。


アレクは深くうなずきながら、長い髭をゆっくりと撫で下ろした。


目を細め、遠い日の記憶を思い出す。


「うむ……青春とは、良いものじゃな。」


そんな小さな呟きに応えるように、サエルはふっと笑った。


◇◇◇


「それでは第ニ試合、シモン対ラン、はじめっ!」


第二試合は、ユーリヤの弟子・シモン・タッシャドールと、ウルスの弟子・ラン・ロロトの戦い。


ディアの声が響くと同時に、シモンが杖を構える。


シュバッと音を立て、水が集まり渦を巻き、鋭い槍がいくつも出現する。


『ハスタエ・アクアエ・シムル・フェリテ・ホステム』


水属性中級魔法ー《ウォーター・ジャベリン》


十数本の水の槍が一斉にランへ向かって突き刺さる。


だが──そのすべてを、ランは最小限の動きでかわした。


「ふぅん、なかなか速いな。でも……。」


『テッラ・フィンディトゥル、フラムマエ・ルブラエ・エクススルギテ』


すぐさま炎の陣が足元に展開される。


炎属性中級魔法─《フレイム・バースト》


地面が爆ぜ、紅蓮の炎柱が立ち上る。


だか、それも軽い動きで躱されてしまう。


多種多様な属性の魔法を自在に操るシモンに対し、肉体を鍛え、身体強化の魔法一本で挑むラン。


まるで頭脳と肉体の激突だ。


「そこよ!シモン!」


「今だ!ラン!」


静かに技を技をぶつけ合う弟子たちとは裏腹に、外野はやたらとうるさい。


そんな外野を見てシモンはため息をついた。


「はあ、まったく……。

 なんで僕がこんな茶番を?子ども相手に僕が負けるはずないというのに。」


肩をすくめ、嘲るように笑った。


対するランは冷めた目で一言。


「あなたも子どもでしょ。」


「年齢はね。でも僕は違うんです、ここが。」


コツコツと自分の頭を指し、得意げに笑う。


「僕は生まれながらの天才。

 頭の出来が違うんですよ。

 その証拠に、僕は全属性を扱える。

 参考までに聞かせてください。

 あなたはいくつの属性を?」


ニヤリと意地悪い笑みを浮かべる。


「無と風の、二つ。」


「たったの二属性とは!」


大袈裟な身振りで驚いてみせるシモン。


ランの瞳がすっと細くなる。


表情は静かだが、内に宿る闘志が明らかに燃え上がった。


「ムカつくやつ。」


瞬間、彼女は速度を上げる。


「は、速い!」


慌てて防御陣を展開するシモン。


光の結界が瞬時に形を取り、さらにその周囲に土の壁が重なる。


『テッラ・コンスルゲ・エト・プロテガム・メ!』

『ルクス・サクラ・プロテゲ・ノス・アブ・テネブリス』


二つの詠唱が重なり合う。


土属性中級魔法ー《ストーン・ウォール》

光属性中級魔法ー《ホーリー・シールド》


「土と光の二重防御です!

 これならどこからきてもあなたを止められる!」


「ほお、二重詠唱か。」


アレクは息を呑む。

あの歳で二重詠唱を使いこなすとはな……。


だが──。

彼女は止まらなかった。


彼女の棍棒が二重の結界を粉砕する。


そして、砕け散る土壁と光の破片の中、ランの姿が消える。


「っ?!どこにっ!?」


焦るシモン。次の瞬間、背後から声がした。


「ここ。」


ドスン!


振り下ろされた棍棒がペンダントの結界を粉砕し、シモンの頭に直撃した。


「うそだ!?」


見事な一撃だった。


「ランの方が、強い。」


ランは冷たい瞳で見下ろす。


そのまま、とどめに“軽く”もう一発。


「いったぁぁ!?」


頭を押さえ、情けない声を上げるシモン。


「……間抜けな声。」


ふっと笑うラン。怒りはすっかり消えていた。

清々しい笑顔を浮かべながら、勝者は背を向ける。


「次こそは負けない!!」


「次もランが勝つ。

 中途半端より、一つの魔法を極めた方が強い。」


ぐぬぬ……と唸るシモン。


実際、ランは身体を強化する魔法だけで戦っていた。


本来なら少し身体能力が上がるだけの魔法。


だがそれを極限まで鍛え上げた結果、恐ろしく速く、重い攻撃を繰り出した。


「う、嘘…早すぎる……!?」


呆然と呟くユーリヤ。


「どーだよ、俺の弟子! 

身体強化に加えて風魔法で速度ブーストしてるんだ。

速度だけならイュースを超えてるんじゃねぇか?」


鼻高々に笑うウルス。


「ふん。仮にも俺は『九つの杖』の一人。

 その上、身体強化魔法で俺に勝てるものはいないよ。」


イュースは鼻で笑いながら腕を組む。


「まあ、確かに身体強化でイュースの右に出る者はいないけど、『神速の魔女』の名に恥じないスピードだったんじゃない?」


ケラケラと笑いながら、カルが軽口を叩く。


「……神速の魔女?」


怪訝そうに首を傾げるユーリヤ。


「あれ?知らないの?」


カルがきょとんとした顔をした。


「先日、あのランに『神速の魔女』って二つ名が与えられたんだ。」


静かに補足するルカ。


「なっ、言っただろ!俺の弟子は天才なんだ!」


ウルスが胸を張る。その顔があまりに得意げで、

ユーリヤは小さくため息をつく。


「あなたの弟子ってのが癪に障るけど……

 優秀なのは認めるわ。」


◇◇◇


「それでは第三試合、アイシャ対リクト、はじめっ!」


ディアの声とともに、戦いの幕が上がる。


第三試合は、カルとルカの弟子・アイシャ・ルート。対するは、へクレアの弟子・リクト・パールス。


リクトは柔らかな印象の少年だった。

見た目の年齢はシュエルと同じくらいの八、九歳ぐらい。

淡いオレンジ色の髪はゆるくカールし、陽の光を受けてキラキラ輝く。

大きな瞳に長いまつげ、どこか無邪気な笑顔の少年。


「はあ……まったく師匠には困ったものですよね。

 こんな小さな子たちと争えだなんて。

 私達の年齢、考えてほしいものですよ。」


アイシャは肩をすくめた。

彼女はいつも自由奔放な師匠達に振り回されていた。


リクトは軽く首を傾げ、にっこりと笑う。


「そっか、君は今年で十八歳なんだっけ?

 成人だよね。でも、それをなんでボクに言うの?」


「え?そんなの決まってるじゃないですか。

 大人って意味では同じじゃないですか。

 あ、でも私と違っておじ──」


言い終える前に、空気が裂けた。


バシュッ!!


次の瞬間、アイシャの身体は地面に叩きつけられていた。

ペンダントが砕け、きらりと光の粒が宙に散る。


「……何か言ったかな?」


先ほどと同じ笑顔。

だがそこには確かな圧があった。


「なにも……言ってないです。」


こうして、第三試合は始まってすぐに幕を閉じた。


◇◇◇


あっという間に準決勝が始まる。

シュエル対ランの戦い──。


「おじいちゃん、頑張るね!」


シュエルは自信満々にそう言う。


「うむ。応援しておるぞ。」


アレクも優しい笑顔で送り出す。


「ラン! 次も勝つんだぞ! 

 勝って勝って優勝するだ!」


まるで自分が戦うかのように、ウルスは熱意に燃えていた。


「うん、勝つ。」


ウルスとは対照的に冷静なラン。


だが、その心には静かな炎が燃えていた。


風vs神速──。

少女達の熱い戦いが、いま幕を開ける。


第16話ありがとうございました!


次回——次は準決勝!


風vs神速

決勝へ進むのはーー!?


第17話 次回もぜひお楽しみに!


もし少しでも気に入っていただけたら、

コメントやレビューで応援してもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ